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服装検査で、次々と生徒が篩にかけられていく。
恵理那の指摘は厳しくて、女子生徒の泣き言も聞こえてくる。
飛鳥もまた、恵理那を見ながら身構えていた。
校門前の列が進み、俺はやがて恵理那の前に来ていた。
「次……あっ」
「よお、恵理那」
「なんで来たの?」
「学校なんだから、当然だろ」
「それは、そうだけど……」
恵理那は、困った顔を見せていた。
俺を意識しているクラス委員の恵理那は、周りも認める優秀な生徒だ。
「なあ、恵理那」
「何?」
「恵理那はデートしたことあるのか?」
「え?あ、あ」
明らかに慌てている様子だ。
そのまま、顔を赤らめて俺から視線を逸らす。
「俺は究極のデートを、考えているんだ」
「それは……誰と?」
「ああ、そうだよな」
再葉のことを、さすがに口にはできない。
再葉のことは、雲吞に狙われているからだ。
「誰か好きになった人がいるの?」
「まあ、例えば……だよ」
「下手なウソね、好きな人がいるんでしょ」
それでも、執拗に聞いてくる恵理那。
恵理那は、真剣な目で俺を見ていた。
「まあ、そうだ。残念だけど、お前ではない」
「ひどいことを言うのね、本郷君は」
「ああ、そうだよ。恵理那」
「それでも、あたしに聞きたいの?」
「恵理那なら……そういうの考えるのわかると思ったから……」
俺は、恵理那に頼っていたのかもしれない。
いつも頼れるクラス委員長。
クラスでも、優秀な委員長の恵理那。
だからこそ、俺は彼女を頼りたかった。
究極のデートのためには、男の価値観だけではだめだ。
「わかったわ、今日の放課後付き合いなさい」
そんな恵理那は、どこか吹っ切れた顔で俺に言っていた。




