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翌日の朝、俺はビルにいた。
それは掛川から離れた町、静岡のビルの中。
深緑のパーカーに長ズボンの俺は、若葉と一緒に歩いていた。
こうしてみると、若葉は本当に会社員にしか見えない。
「あなたは、どうやら了解してくれたのね」
「ああ」
それは俺が、若葉にした決意だ。
「俺は、ユズリハに入る」
「その話は、感謝するわ」
「だけど、俺は再葉を救うまでだ」
「もちろん、そうよ。再葉を救うために、あなたに協力してもらう」
「その前に、どうしても聞きたいことがある」
「なにかしら?」
ビルの中、通路を俺と若葉は歩く。
ここは一階で、受付に話をつけた若葉はカードをもらっていた。
「若葉さんは、再葉たちを殺す不死者殺しなのか?」
俺の言葉に、眉をひそめたのが若葉。
「ええ、そうね。昔はそうだったわ」
「一族はやめたのか?」
「私には才能がなかった。
情に流されてあの男を取り逃がし、家を追い出された。
それを保護したのは、皮肉にもあの男が当時いた組織雲吞だったわけ」
「あの男?」
「これから、あなたに会わせる男」
若葉は、俺の前に受付から受け取ったカードを見せてきた。
それは、何かの電子カードだろうか。
「俺に会わせる人?」
「そ、再葉にとっても、美来にとっても大事な人よ」
「わかった、そんなに大事な人って?」
「あなたは多くのことを知りすぎた。本来なら、こちらの話を先にすべきだったのだけど。
それに、あなたの役目である再葉の記憶の再現に協力してもらいたいから」
「それは任せてくれ」
「じゃあ、エレベーターに乗りましょ」
そんな若葉は、俺をエレベーターに誘導していた。
そのエレベーターには、すでに再葉が待っていた。その顔はいつも通りすました顔を見せていた。




