011
遊覧船は、ぐるぐると回る。
甲板の空気は、少し冷たい。
長そでの冬服でも、風が冷たく感じていた。
甲板の上には、今は俺と再葉しかいない。
ほかの乗客は、下にある席で景色を見ているのだろうか。
「その運命ってなんだ?」
「運命は運命です」
「クラシックの曲じゃあるまいし」
「私は運命を信じていますから」
再葉の目には、淀みがない。全く疑っている素振りを見せていない。
運命とは何だろうか、再葉の言うその言葉がいまだに俺は理解できない。
まるで何かの宗教を信仰している信者のように、再葉が言っていた。
「再葉にとって、運命が俺と付き合うことなのか?」
「そうです」
「その運命は、一年だけ俺の彼女になることなのか?」
「はい」素直にそう答えた。
ダメだ、全然わからない。
再葉が何を考えているのか、これから何をしようというのか。
「なあ、再葉。それでいいのか?お前の意見は?」
「私は運命に従っていきます」
「それはダサい生き方だな」
「本郷君、どういう意味?」
「運命だか、なんだか知らないけど何も考えないと馬鹿になる。
運命に流されるだけでは、お前はたぶんダメに……」
「そうよね」
それは意外な反応だ。俺の言葉に、再葉がため息をしたまま聞いていた。
「再葉?」
「私は幸せではない。
運命に従って生きて、こうなった。
だけど、それは不幸の運命であり……今は幸せの運命」
「そのメモが、再葉の運命じゃないのか?」
俺は再葉のブレザーの胸元を、指さした。
そこには、再葉のメモが入っている。
それを指さされた瞬間、再葉が胸を押さえて抱え込んだ。
「これは……その」
「再葉、そのメモを見えてくれないか?」
素早く俺は、再葉の胸に手を伸ばしていた。




