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再葉が戦っているのを見るのは初めてだ。
いや、俺の記憶では……の話だが。
それでも再葉の強さは圧倒的だ、中でも動きが素早い。
一撃を食らった中本は、そのまま段ボールの方に倒れていく。
そのまま、しばらく動かない。
「いやあ、お見事。さすがは優等生」
「あなたは?」
「丁だよ、雲吞の代表をしている」
「そう」反応は、相変わらず薄い。
記憶が失う前は感情豊かな再葉も、落ち着いている。
「やはり、全て忘れているのか?」
「ええ」
「そうか、手が早い」
「彼は助けた」
俺はいつの間にか、再葉に助けられた。
足を縛られたロープが、いつの間にかほどけていた。
「俺は、ここから下がった方がいいよな」
「ええ、逃げて」
「情けないよな、男なのに」
「何がですか?」背中を向けて、すでに前を向く再葉。
再葉の前には、拳銃を持ったマフィア風の男『丁』。
雲吞のボスが目の前にいる。
後ろには、手下らしき部下が集まっていた。
「逃げられる?」
「え?」
「あなたは、逃げないといけない」
そういいながら、再葉は丁の方に飛び込んでいった。
それと同時に、後ろの部下たちは銃を構えていた。
俺はそれを見て、嫌な予感しかなかった。
「これって、やっぱり……」
そして、俺の予感は現実になる。
丁の部下たちは一斉に銃を撃ち始めたのだから。




