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中本の強さは際立っていた。
手が大きくなって、足が針のように鋭くなる。
人の体さえも、簡単に貫く針のように。
そんな人間に対し、俺は驚愕な顔でこういうしかなかった。
「化け物だ」
「そうね、でも再葉もできるのよ」
「再葉はできぬよ」ボスと言われた丁が銃を持ったまま、俺に近づいてくる。
「そうね、できないのよね」
「ああ、お前はこの雲吞に残った。
不死者の体として、さらなる進化を遂げたのだ。
だから、今のお前の方が戦闘能力は高い」
「あら、それはうれしいわ」
そんな中本は、倒れている美来の頭をわしづかみした。
呼吸が乱れる幼女は、それでもまだ生きていた。
「あら、失敗作でも生きているのね」
「美来も、我ら雲吞の財産だからな」
「殺しちゃダメ?」
「芙蓉に任せよう」
「あら、じゃあ殺さないとね」
丁と中本は、俺の前で物騒な会話をしている。
俺の目の前で、俺を守った美来が口から血を流して倒れている。
呼吸はしているが、意識がないようだ。
「やめろっ!」
「お前は?」
「美来を傷つけるな!」俺は叫んだ。
だけどそんな俺は、連中の眼中にはない。
全く相手にされないまま、芙蓉が美来を投げ飛ばした。
「やめろっ、やめろっ!」
俺は半泣きで、美来が投げ飛ばされるのを見ているしかない。
情けない、情けない、情けない。
こんな小さな女の子に、俺は守ってもらうなんて。
しかも、こんな小さな女の子を助けることができないなんて。
「なんで、そんなことをする。中本、お前は……」
「黙れ!」
ボロボロの美来を投げ飛ばした中本は、ようやく俺を見た。
その目は赤く光り、はっきりと睨んでいた。
その目は、再葉の発作の時と同じだ。
「中本?」
「そんなに死にたいのなら、殺してあげる。
あなたも美来と一緒に、殺してあげるわ」
怪しく笑う中本は、俺の方にゆっくりと向かってきた。
その姿は、とても大きく感じられた。
中本の存在感は、とてつもない存在だ。
それは化け物のように体を自在に変える。
彼女の強さは、美来さえも圧倒していた。
中本は、大きな右手をグルグル回して俺の前に立っていた。
「一発で楽に……」
「楽にはさせない」
そんな中本の体が、突然浮かび上がった。
いや、浮かび上がったのではない。
それは、中本が何かにつかまれていた。
「やっぱり来たか」奥にいる丁は喜びの声を上げた。
そして、俺は驚いた顔を見せた。
そこには再葉がいたのだから。




