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一年彼女  作者: 葉月 優奈
八話:一年彼女の人ならざる姿
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中本の大きな手は、よく目立つ。

無論、握力の面でも中本が上回っていた。


「ううっ、芙蓉……」

「美来、命乞いをするのかしら?」

「あんたの趣味は最低ね」

「それはどうも」

中本は意に返していない。

それでも、小さな美来の手を化け物のように大きな手で握りつぶそうとする。


「でも、あんたは劣勢よ。失敗作に通用するものではないわ」

「そう、そんなもの……」

美来が、右足を蹴りだした。

そのまま、右手をつかまれたまま遠心力で持ち上がった。

バク転をしながら、蹴り上げた美来の蹴りを中本が頭をよけてかわしていた。

それでも、大きな手から美来の手が離れた。


「失敗作なのに、しぶといのね」

「劣等生には負けない」

「そう、でも私は失敗していないもの」

中本は、まだ余裕があるようだ。

美来は捕まれた右手を見ていた。強く握られていて、赤く腫れている。


「それは嫌な言い方ね」

「劣等生は、いつかは優等生になれる。

でも、あなたにはその美来にすらないもの」

「美来は、不死者になることが望みじゃない。普通の人間になるのが夢なの」

「無理よ」冷たく言い返す中本。

そのまま、中本が今度は攻勢に出てくる。


いきなり大きくなる手に、美来は慌てて後ろに下がる。

どうやら中本は、手や足を大きくできるらしい。

マジで、中本は人知を超えた存在だ。


「あらあら、女の子の秘密を見て引いている?健斗?」

不意に、俺の方を見ていた中本。まだまだ余裕のある笑みを浮かべる。


「すごいな、お前」

「そう?あたしは気に入っているんだけど」俺に対して、べらべらしゃべる中本。

「よそ見をしているんじゃないわよ」

そんな中本に、小さな体の美来が飛び上がった。

中本の後ろに回った小さな美来が、飛び蹴りを放つ。

だけど、それを中本の頭めがけて放たれることはなかった。


「どうしたの」

「お前……」それは中本の左足だ。

後ろに振り上げたその足は、針のように伸びて美来を突き刺した。


「ぐはっ」美来の足に、針のような中本の左足が刺さる。

赤い血が流れて、そのまま美来はぐったりと倒れた。

それを見た瞬間、中本は薄ら笑みを浮かべていた。


「所詮失敗作は、失敗作なのよ」

血を流して倒れる美来に、余裕の笑みを浮かべる中本が俺の目の前にいた。



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