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中本の大きな手は、よく目立つ。
無論、握力の面でも中本が上回っていた。
「ううっ、芙蓉……」
「美来、命乞いをするのかしら?」
「あんたの趣味は最低ね」
「それはどうも」
中本は意に返していない。
それでも、小さな美来の手を化け物のように大きな手で握りつぶそうとする。
「でも、あんたは劣勢よ。失敗作に通用するものではないわ」
「そう、そんなもの……」
美来が、右足を蹴りだした。
そのまま、右手をつかまれたまま遠心力で持ち上がった。
バク転をしながら、蹴り上げた美来の蹴りを中本が頭をよけてかわしていた。
それでも、大きな手から美来の手が離れた。
「失敗作なのに、しぶといのね」
「劣等生には負けない」
「そう、でも私は失敗していないもの」
中本は、まだ余裕があるようだ。
美来は捕まれた右手を見ていた。強く握られていて、赤く腫れている。
「それは嫌な言い方ね」
「劣等生は、いつかは優等生になれる。
でも、あなたにはその美来にすらないもの」
「美来は、不死者になることが望みじゃない。普通の人間になるのが夢なの」
「無理よ」冷たく言い返す中本。
そのまま、中本が今度は攻勢に出てくる。
いきなり大きくなる手に、美来は慌てて後ろに下がる。
どうやら中本は、手や足を大きくできるらしい。
マジで、中本は人知を超えた存在だ。
「あらあら、女の子の秘密を見て引いている?健斗?」
不意に、俺の方を見ていた中本。まだまだ余裕のある笑みを浮かべる。
「すごいな、お前」
「そう?あたしは気に入っているんだけど」俺に対して、べらべらしゃべる中本。
「よそ見をしているんじゃないわよ」
そんな中本に、小さな体の美来が飛び上がった。
中本の後ろに回った小さな美来が、飛び蹴りを放つ。
だけど、それを中本の頭めがけて放たれることはなかった。
「どうしたの」
「お前……」それは中本の左足だ。
後ろに振り上げたその足は、針のように伸びて美来を突き刺した。
「ぐはっ」美来の足に、針のような中本の左足が刺さる。
赤い血が流れて、そのまま美来はぐったりと倒れた。
それを見た瞬間、中本は薄ら笑みを浮かべていた。
「所詮失敗作は、失敗作なのよ」
血を流して倒れる美来に、余裕の笑みを浮かべる中本が俺の目の前にいた。




