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ユズリハの美来と、雲吞の中本。
この二人が、向き合う構図。俺の目の前で、二人の女が激しくにらみ合っていた。
足を縛られたままの俺は、二人の戦いを見守るしかない。
「あなたは失敗作なのよ」
「そう、美来は失敗作」
「そんなあんたが、私の前に出てくるとはね。ユズリハも人がいないのかしら?」
「ユズリハは、戦争屋じゃない。侵された子供たちの心の依代よ」
美来は、はっきりと言い放つ。
それでも、中本は不敵な笑みを浮かべた。
「ユズリハは、そんな組織じゃない。
若葉は、不死者を根絶やしにしようと考えているだけ。
あの若葉についていけば、あなたはいずれ滅ぼされるわ」
「若葉のことを、悪く言うな!」
美来は叫ぶ。倉庫の中で、美来の声が響く。
「あなたも知っているでしょ、若葉の過去を」
「知っているけど、あの時の若葉とはもう違うから」
「何が違うの?過去は変えられない」
美来の言葉に、冷静に中本が否定した。
それでも、美来は全く食い下がらない。
「過去は変わらないけど、若葉は変わっていく。
美来は、若葉のやることを支持する」
美来は、そのまま中本に殴りに行く。
しかし中本は、美来の飛び掛かる拳を受け止めた。
また、中本の手が大きく見えた。いや、大きい。
「あの手、でかくない」
それは、相撲取りよりももっと大きな中本の掌だ。
野球のグローブ並みに大きくなった中本の掌に、小さな美来の拳が納まっていた。
「そんな若葉は、私を殺そうとしたのだから」
中本は、美来の右こぶしを握りつぶそうとしていた。




