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俺は若葉の言葉を、信じていないわけではない。
信じているのだけど、若葉はまだ俺に何かを隠している。
俺をユズリハに勧誘しておきながら、まだ裏がある。
再葉に対して、その疑問はぬぐえないでいた。
そんな俺の前に、中本がいる。
(四十万 若葉は、不死者を殺す人間よ)
それは俺にとってショックなことだ。
再葉がそもそも爆弾を使ったのは、若葉の意見だ。
それでも、若葉は再葉がああなることを知っていたのではないか。
(再葉が望んだこと……ではないのだろうか)
爆弾を使い、一年彼女で俺と付き合う。
最後の日に、タワーから飛び降りて爆弾を爆発させる。
それは、再葉の願いだったのだろうか。
そもそも、不死者であることの唯一の苦しみが時間逆流ならばそれを収める彤弓だけあればいいのではないか。
俺のことを、スーツ姿の男が見ている。
静かに沈黙の間が、ずっと続く。
次の俺の言葉を、男は待っているようだ。
もし、ここで拒否の言葉を吐けばその瞬間に引き金を引く。
拳銃の銃口は、俺の額に向けていた。
(どうする?)
俺はまだ迷っていた。
だけど、スーツの男はもう待てそうにない。
「あと十数える、若葉に連絡を取れ」
俺の足は、固定された丸椅子に縛られている。
ロープで巻かれていて、十秒のうちに逃げることは困難だ。
俺の手元には、スマホがある。
「十……九……八……」
すぐに読み上げるスーツの男。
全く持って容赦がない、俺はスマホを見ていた。
パスワードのロックを解除して、すぐに連絡しないといけない。
だけど、俺はまだ迷っていた。
(それでも俺は再葉を、雲吞に渡してはいけない。だけど……)
そんな気持ちが、残っていた。
雲吞が再葉を利用する理由は、明確だ。
だからこそ、彼らに再葉を渡してはいけない。
それでも、俺には命の危険が確実に迫っていた。
今の俺は、殺されようとしているのだ。
「五……四……三……」
悪魔のカウントダウンは続く。
向こうに見えないように俺は、パスワードのロックを解除した。
あとは、電話帳の中にある若葉の連絡先に連絡するかどうかだ。
「解除したわね」
中本がそういった瞬間、彼女の姿が目の前になかった。
僅か一瞬で、俺の背後に立っていた。
「殺していいんじゃない、ボス」
「ああ」中本の言葉に会わせて、ボスと言われたスーツの男は拳銃の引き金を引いていた。
全くの迷いがなく、俺に銃弾が飛んできていた。




