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オールド・タイム・ワールド・リンク(仮)  作者: あおい聖
【躑躅ヶ崎編】
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008話

 躑躅ヶ崎の館・・・歴史においても守るに難しく攻めるに安い城


 1,800の足軽兵、300の弓兵、900の騎兵からなる3,000名の戦力を有していた。だがこの戦力がそのまま躑躅ヶ崎の館に在中しているわけではない。良くて2,000名だろう。


 そして都市を囲む城壁とてそれほど高いものではない。平屋建ての家、その屋根の上くらいまでしかないのである。東西南北の城門の上に弓兵50名づつ、足軽兵は200名、騎馬600と足軽兵400は都市中央の館内に居る。



「御屋形様、ここは打って出て平地での戦闘が宜しいかと存じます」



「それしかあるまいか・・・」



 赤い陣羽織に身を包んだ30代半ばの男ハルトラ。タケダ・ハルトラである。そんな彼に意見を述べた眼帯を固めに付けた男カンベイ。ヤマモト・カンベイ・・・甲斐の国の軍師を務める細身の男である。



「何を言う。ここは強制徴兵で市民の中からも足軽を募り殲滅作戦だ」



 大柄な筋肉質の男トラオ。ヤマガタ・トラオ・・・軍部を統括する軍団長である。



「民を犠牲として何とする。ここは軍師殿の策を用い、時間旅行者たちにも声を掛けるのが良いのではないですか?」



 仮面をつけ分かりにくいが細身のすらっとした体型であり、一見優男にも見えなくはないが声から女性だと言う事が分かる。この女性ミカゲと言い、コウサカ・ミカゲ行政府を統括する行政長官である。



「ふんっ! その時間旅行者の主力【風林火山】は【富士の樹海】への遠征であと5日は戻ってこないと聞くではないか」



「なっ確かに【風林火山】の主力は居ないがそれでも時間旅行者の力は現地人たる我らより優れている者が多いではありませんか」



「ふっここに残っておる者どもなら某1人でも倒すことが出来よう」



「ほぅ・・・言いましたね。ではかのトウショウサイ先生にも貴方は勝てると?」



 トラオは顔を歪め苦虫を噛み潰したように悔しさが顔に出る。レベルはトラオの方が上にも拘らずトラオが負けると思うのには訳が有る。彼の造る武器は一級品どころではなく超一級品と呼べるもので、その技術が使われた彼専用の武器により敗れる算段が高いのであった。



「少し黙らぬか」



 黙って聞いていたハルトラが声を上げるとトラオもミカゲも頭を垂れ誤りの言葉を口にした。



「俺はカンベイの策を採用した。確かにトラオの策を陥れば殲滅できよう。しかしそれではミカゲが申した通り犠牲が出すぎる。これでは国として他国の介入を許すこととなる」



「はっ! 出過ぎたことを申し上げお許しを」



 トラオが再び頭を下げる。



「良い。急ぎ戦支度をせいトラオ。ヌシが総大将だ。ミカゲは冒険者ギルドへと赴き協力を仰ぎまとめ上げよ」



「御意」



「仰せのままに」



「場合によっては俺も出る」



 3人はハルトラの言葉の前に息を飲み込んだ・・・






 躑躅ヶ崎東門前


 既に冒険者ギルドは動きを見せていた。集まった冒険者たち(主に時間旅行者)の前にマサツグが現れ



「緊急招集によくぞこれだけ集まってくれました。新人が多数いる中こんなことを言うのは心苦しいのですが・・・そうもいっていられない状態です。主力は【風林火山】の残留組」



 風林火山と書かれたのぼりが上がる。



「正面へと陣取っていただきます」



 ドンと大きな音が鳴る。【風林火山】のメンバーが各々の持つ武器やのぼりの柄で地面を一斉に叩いた音である。



「北部をトウショウサイ殿を中心とした生産組の実力者」



「まぁ出来るだけの事はしてやる」



 代表してトウショウサイが返事をする。



「南部は多くの新人を含む冒険者たち。良いですか貴方方はまだ連携などできはしないでしょうが1匹に対して3名以上で当たり確実に仕留めるようにしてください」



 疎らではあるが返事があちこちから上がる。マサツグは周囲を見渡し



「良いですか。貴方方がどれほど魔物の数を減らせたかによってこの街の被害が変わってきます。ですが無理だけはしないでください」



 再びドンと音を鳴らし一糸乱れぬ動きで【風林火山】が後ろへと振り返り



「【風林火山】出陣!」



「「「おおぉぉぉ!!!」」」



 段々と前進する速度が上がる。



「儂らも持ち場へと行くぞ!」



「「「おおぉぉぉ!!!」」」



 トウショウサイを先頭に歩き出しトウショウサイはアスカとすれ違いざまに



「まっ坊主なら生き残れるだろうが、割り切ることを心にとどめておけ」






 新人を基本とした部隊が集まる中、ギルド職員であるミコトの声が聞こえてくる。



「最低でも3人以上でパーティーを組んでください! 組み終わり次第担当エリアを指示します!」



 普段からパーティーを組んでいる者たちは問題なく職員の指示に従い割り振られていく。残った者たちも比較的社交的なものは近くに居る物へと声をかけパーティーが組まれていく中アスカは1人取り残されたいた。



「ほら、貴方も何処かに混ぜてもらう」



 ポンと肩を叩かれ振り向くとミコトが居た。



「別に必要ないなんて思ってても【氾濫】は何が起こるか分からないのよ? ああ~もういいわ。え~とそこの君と・・・そこでおろおろしている君! この子とパーティーを組みなさい。良いわね」



 1人は弓を肩から下げたすらっとした女性。もう1人は陰陽服?と言えばいいのかそんな感じの服を着た気弱そうな女性だった。



「ほらまずは自己紹介でしょう? アスカ君からやりなさい」



 アスカを含め集められた3人が動こうとしないのでしびれを切らせたミコトが自己紹介をするように勧める。



「はぁ~分かりました。僕はアスカ。こんな見た目ですがれっきとした男性です。前衛?になると思います」



 アスカが自分が男であることを継げると2人は驚きの表情を見せる。



「本当に男なのかい? っと私はカリナ。現実でも弓道をやってるわ。もちろん後衛ね」



 弓を持つすらっとした女性カリナが口を開く。



「あっあの! シッシズカと言います。陰陽師にあこがれ【陰陽術】を持ってます・・・」



 気弱そうな女性シズカが自己紹介を口にし段々と声を小さくする。彼女が声を小さくするのには訳があった。



 【陰陽術】札や数珠と言った術具を用い魔術を行使するスキル。これがまた地雷スキルとして有名で、店で売っている札は【符矢】【回復符】の2つしかなく、【符矢】その字のごとく札へと魔力を込め矢のように飛ばす術で、【回復符】は対象に張り付けると徐々にHPが回復していく術であるのだが、その符だが1枚2,000エンもする他、他の術と比べ自由度が無く、その2つ以外の術が見つからなかったためにスキルレベルを上げても役に立たないスキルとして今では有名である。



「ふ~ん【陰陽術】ね・・・サブウエポンは何? 私はこのナイフだけど」



 カリナが腰に付けたナイフをポンと叩き見せる。



「あっはい。こっこちらの短刀になります」



 シズカは袖口から短刀を取り出し見せる。



「なら問題ない。色々あったかもしれないが私は気にしない。よろしくな」



「あっありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」



 カリナの差し出された手をシズカは両手で握りうっすらと涙を浮かべ微笑んだ。



「でアンタは気にするの?」



「別に気にしないね。それよりカリナさんとシズカさんはレベル幾つ? あっ言いたくなければ言わなくていいからね」



「カリナ。呼び捨てで構わないさ。それとレベルが何に関係するんだ?」



 カリナの言葉に同意するかのようにシズカが頷く。



「ん~僕はレベル5だから低いようならパワーレベリング?っていうのかな? 相手の動きを止める形で敵を弱らせるから止めを刺してもらおうかと思ってさ」



「へ~どうやって動きを止めるか知らないが、面白そうだな。私は3だ」



「あっあの1です・・・」



「了解。って訳でミコトさん。僕たちの担当エリアって何処ですか?」



 アスカの言葉に半ばあきれた様にミコトはため息をつくのであった。

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