006話
大和の国、筒井城
坊主頭の顔立ちの良い優男、当主であるジュンケイは領地の現状に頭を悩ませていた。
「領内ではヨシナカ軍の残党による被害が続いているか・・・それにロッカク軍の残党も・・・トヨトミに助力を願えばよいのであろうが・・・」
ジュンケイは、農民から成り上がったトヨトミを快く思ってはいなかった。
「トヨトミ以外だと【神子】と呼ばれる時間旅行者の納める国しかあるまい」
大和の国の周囲に他にも勢力はあるのだが国力的にも格的にもトヨトミとアスカの性欲以外になかったのである。
「国主としての実績で有ればトヨトミなのだが、亡霊どもとの戦いで、ヨシナカ軍を打ち破った【神子】の方が一歩も二歩も上であるか・・・」
ジュンケイは瞳を閉じしばらくの間考え抜き瞳を開く
「良し、【神子】へ使者を送る! これより我らツツイは【神子】に従う!」
ジュンケイの言葉に家臣団から反対の意見は出ず使者を送ることになり、アスカの属領となるのであった。
属領となったと言っても統治に関してはこれまで通りであり家臣や領民からは不満は出ず、救援に駆けつけたアスカ軍により残党軍を討伐が出来、寧ろ大いに喜ぶのであった。
尾張の国
顎髭を生やし鋭い眼光を持つ渋い男【尾張の虎】と呼ばれるノブヒデは地図を見据え
「今美濃を攻めるは愚策、攻めるであれば西の伊勢の国長島城、更にその先のキタバタ! 偽物であろうがこの【勅旨】使わせてもらおう」
その手に持つ【勅旨】をもう一つの手で弾き
「今であれば時間旅行者の邪魔も入らん! 出陣だ!」
ノブヒデの号令の下オダ軍は手始めにホンガンジが納める長島城へと兵力を進める。
伊勢の国、長島城
法主であるレンニョの息子であるレンゴはすぐにオダ軍の動きを察知していた。
「虎が動くか・・・時間旅行者と言う枷から解き放たれたトラが・・・しかし仏に仕える我らがトラごときに屈するわけにはいかぬ。キタバタケへ救援依頼の使者を送れ! 信者にも伝え総力戦とする!」
尾張の国を掌握したオダ軍にたった一つの城で抗うなど普通に考えれば不可能なのだが・・・ホンガンジと言う勢力は宗教を背景にした勢力であり、その信者の数はかなりの物で、公家や武家にも信者は多くいる。もっと言えばオダ軍の中にもいるのだから普通の勢力であれば攻める者はいないと言われていた・・・
そう、本来のノブヒデで有ればその他の者と同じように攻めることなどしなかったのであるが、ここでドウマがまいた種が影響を与えていたのである。その種の影響は配下の武将にも影響が有り、いや寧ろ配下の者の方が影響を強く受けていたと言えた。
こうして始まったオダ軍とホンガンジ軍の戦いではあるが当初ケンゴが描いた通りとならずオダ軍は武器を手に持った者は女子供であろうと躊躇なく打ち取って行く光景はケンゴの瞳にはまるで地獄さながらの光景であった。
平地での戦いに敗れ城に籠り耐え凌ぐホンガンジ軍、戦いが始まって10日ほどが過ぎたであろうか、オダ軍に対し救援要請を受けたキタバタケ軍が襲い掛かる。
オダ軍本陣
「予想通りキタバタケ軍に助力を願ったか」
ノブヒデは美濃で起きた内乱に間接的ではあったがホンガンジが絡んでいたという情報を掴み、城主であるケンゴが美濃の国へ助力を願わぬであろうと予測をつけていた。
まずは1つ目の賭けに勝ったと言う事だな
ノブヒデは心の中で呟く。キタバタケ軍だけで有れば容易に打倒せるだけの自信はあったのだが、【神子】の軍勢まで加わればほぼ確実にオダ家は滅びるであろうと予測していたのである。
「カツイエの部隊は予定通りに動いているな?」
ノブヒデの言葉に物見の兵士が望遠鏡をのぞき、海の上に浮かぶ船団を覗く
「はっ! 予定通りに安濃津の港方面へ向かっております!」
ノブヒデはそれなりの犠牲を出せばはるか以前に長島城を落とすことが出来ていたのである。何を舞っていたかといえばキタバタケ軍である。そしてオダ軍を相手にするとなればほぼ全軍を持って軍を寄こすであろうと予測し、その予測が正しかったことを知る。
これで2つ目の賭けに勝った。後はここで奴らをしばらく足止めすれば・・・
数日後ノブヒデが思い描いた通りカツイエ軍が伊勢の国にある松ヶ島城を落としたことが伝わり、遅れてその情報が伝わったキタバタケ軍の三分の一に相当する軍勢が離れると
「妥当なところではあるが・・・あの数ではカツイエには勝てぬわ。そして手を抜いていた我らに苦戦する本軍と手同じこと! 今が好機だ! この戦い本日で終わらせるぞ!」
ノブヒデはこれを好機と本気の攻勢に出るとキタバタケ軍は始め抵抗を見せるも今までにない圧力により恐怖にかられた足軽兵が逃走を開始すると瞬く間に敗れ去るのであった。
長島城
「城主! 我らが血路を開きます! どうかお逃げください!」
ケンゴの顔が悔しさに歪み
「済まぬ。いずれその報たちの無念はこの手で晴らす」
側近の僧兵や信者の多大な犠牲の下ケンゴは辛くも逃れることに成功した。




