016話
誰もが口にしなかったアシカガの裏切り、それを帝のすぐそばに座るちょび髭を生やした男右大臣ミチナガが告げる。
「我を裏切っていたと申すのか?」
「御意にございます。故に各地の領主の暴走が起き争いが絶えないのであります」
「ミチナガどうすれば良いのだ?」
「まずは帝に忠を誓う者とそうでない者をを分け、忠を誓う者の中より新たな将軍を任命した後に先ほどの土御門殿の策を実施するのが良いかと」
「うむ、あい分かった。ミチナガの言、我もそう思うておった。そのようにいたせ」
「はっ! このミチナガ身命を賭して成し遂げてごらんに入れましょう」
ミチナガがそう言って首を垂れる横ででっぷりと肥え太った男は苦虫を噛み潰したように顔をしかめミチナガを睨み付けているのであった。
この会議の後ミチナガは帝の名で全国に居る領主へ宛て帝の下へ集う様に手紙が送られる。
「このままではミチナガの思うつぼじゃ! 誰か! 誰かいないか!」
でっぷりとした男は自室で大きな声を上げる。すると何処からともなく忍び装束を着た男が現れ
「何かないか、何か! このままではミチナガの手柄となりあやつが左大臣になってしまうではないか!」
「でしたらその文を別の・・・そうですね他領への進攻許可証とすり替えると言うのはどうでしょう?」
でっぷりとした男の口端が吊り上がる。
「この儂と・・・」
「分からぬように手を討ちますればミチナガめが出した物と他の者たちは思いましょう」
「くっくくく、そうか、良いぞすぐに手配いたせ」
「はっ!」
現れた時と同じように忍び装束の男は姿を消す。
「これであやつは失脚。この儂の地位も安泰と言う物だ」
しばらくの間その部屋から不気味に笑う声が木霊していたと言う・・・
ツチミカド邸
「・・・と言う事でありましたがいかがいたしましょうか?」
「このままではミチナガ様の御身が危うい。何とかその計画を阻止いたせ!」
「御意」
ツチミカドの前から人の形を模った影が霧散して消える。
「何をしておられるのだミツナガ殿は・・・」
でっぷりとした男を思い浮かべながらツチミカドは呟く。
「このままでは争いが広がり黄泉の勢力の思うつぼではないか」
悔しそうに顔をゆがませ、不意に机に置かれた文が目に留まる。
「シキノが申しておった者と接触してみるか・・・協力してくれればよいが」
ツチミカドもまた動き出す。シキノからもたらされた有力な時間旅行者達へ向け文を送るのであった。
某所
山の火口口に無数のひびが広がりそこから赤いマグマが少しづつ顔をのぞかせる。それと共に周囲に瘴気が噴き上がる。するとそこから【死鬼】が数体姿を現し火口口を出て山のふもと目指し歩き出す。
月面都市
「いやぁ~困ったことになったな・・・」
にやけた顔で男はそう呟いた。
「にやけ顔で言われても説得力なんかありませんよ?」
男は慌てて口元を抑える。
「イベントとしたまでは良かったんですが、ヨシナカ軍の若狭の国の民虐殺、キヨモリ軍に対しての各領主の抵抗・・・その他にもいろいろありますが、ものすごくおかしな方向へと流れてますよこれ」
モニターを見ながら女性が呟く。
「ええ~そこが面白い・・・じゃなかった。うむ大変だ。大変だ」
女性に睨まれ男は言い直す。
「はぁ~もう良いです。でもコレ第四班だけじゃ対処しきれませんよ? 他の班も使わないと・・・」
「彼を呼べば良いんじゃないか?彼を」
女性の瞳が見開かれ驚きを見せそれはすぐに元へと戻り
「たっ確かにあの者であれば可能でありましょうが・・・場合によってはバランスが崩れますよ?」
「じゃあ君が行くかい? こう言っちゃ~何だけど誰も介入何かしないと思うけどね。勿論君もそうだろ?」
「・・・」
「無言って事は肯定ととるよ僕は・・・て訳だから彼への連絡よろしく~」
そう言って男はその場から退出した。
「え? え!? 私がするんですか! ってもういない! ああもう!」
女性はパネルを操作してどこかへと通信を繋げる。
光さえ刺さない暗闇の中、不意にパネルが浮かび上がる。
「ほ~ようやくか・・・この時を私は待っていた・・・」
男はパネルを操作するとメッセージが流れ周囲に光が灯る。
「クククック、この程度の事で私を解き放つと言うのかアハハハハハッ!」
男の笑い声が何もない揃い部屋全体にこだまする。そして一頻り笑い終わると
「良いだろう。適当に処理しといてやる。だがその後どうなっても知らないぞ? 私はもう二度と捕まるようなことはしないからな」
そう言うと男の姿がその部屋から消えた・・・掻き消えるかのように・・・
お読みいただきありがとうございます。
次回は暫く時間を置き新章突入となります。6月中旬を予定しておりますのでそれまでお待ちいただければ幸いです。




