008話
音羽城を出発した【十勇士】のメンバーはアスカ軍の戦いに伊賀の残党軍が加わらない様に2手に分かれ進軍していた。
「何!? アシカガ軍がヨシナカ軍と共に出陣しただと!」
ノブシゲは忍び装束に身を包んだ男? から報告を受け声を荒げた。
「ああ、ノブシゲさんに言われ調べたところによると、観音寺城へ進軍するヨシナカ軍の総大将がヨシテル・・・アシカガ家当主だとのことです」
ノブシゲは考え込む・・・そして再び忍び装束の男を見て
「サスケはサイと共にアシカガ軍をかく乱! 他の者たちは行軍を速め一気に伊賀の城を攻め落とす!」
「「「はっ!」」」
ノブシゲの指示で【十勇士】は動きを速め進軍する。
一方伊賀の城に立てこもる残党軍にもアシカガ軍からの書状が来ていた。
「共に新参者を討とう・・・か。こちらの内情を分かっていない要請だな・・・」
「はっ! 【人形兵】を失い大半の足軽兵もツツイ軍との戦で討たれている・・・」
「だが、要請を拒否すれば次に狙われるのは我らとなるか・・・」
家臣たちが対応に苦慮しているとそこへ伝令の兵が駆け込み
「申し上げます! 音羽城より4,000からなる軍がここ伊賀の城へと進軍中とのことであります!」
「こちらの戦力は!」
「はっ! 500と言ったとこであります。またその大半が怪我でろくに戦えません!」
その言葉を聞いた家臣たちは慌てふためく
「降伏するしか手はないか・・・」
そう口にした武将の胸から金属の刃が生える
「ごふっ! こ・・・これは!?・・・」
「主らに退くことなど許されるとお思うておるんか?」
怪しげな老人ドウマの姿と共に刀を突き刺した【亡霊武者】がそこにいつの間にか現れていた。
「なっ!? 貴様! 【アシヤ】のドウマ! 退けぬとはいったいどういうことだ!」
1人の武将の言葉にその場に居る者たちは刀の柄へと手を掛ける。
「そのままの意味じゃて・・・このようにな」
ドウマが1踏み足を踏むと武将たちはお腹を押さえ悶えだす。
「ぎざま゛~なにをじだ!」
何とか声を振り絞った武将をドウマは見据え
「な~に蠱毒を食事に毎日混ぜただけよ・・・」
ドウマの言葉を最後まで聞くことなく武将は倒れ込みピクリとも動かなくなると
「これで完成じゃな・・・【孤独兵】死してもなお瘴気を振りまく厄災じゃ」
武将たちの目は赤く怪しく光、ゆらりと立ち上がり武器を手に外へと歩き出す。
「・・・タマヅサが討たれたのはちと痛かったかのう・・・」
そう呟くとドウマはその場から消えた。
伊賀の城を目指す【十勇士】の前に瘴気を振りまく残党軍が現れる。
「これはいったい・・・あれは瘴気!? くそっ! 【神聖水】の準備をしろ! 止めを刺しても浄化させるまで気を抜くな!」
こうして不気味な残党軍と【十勇士】の戦いが始まる。
そして近江へと迫るアサクラ軍に対しドウサン率いる部隊との戦いも始まった。
細い山道を抜けてくるアサクラ軍に崖の上から岩が転がり落ちる。それも1つではなく幾つも・・・そうこれはハンベイにより仕掛けられた落石の罠である。
更に後方にあった輜重隊が運ぶ荷車へと火矢が降りそそぐ。更には樽が投げ落とされ中から液体がブチまかれると炎は勢いを増し燃え広がる。
「これでこちらは十分に時間が稼げますね」
ハンベイは背後から立ち昇る煙りを見据えそう呟き
「後は三人衆・・・それに清水山城のナガマサ殿次第です」
清水山城へと迫るヨシナカ軍の【亡霊武者】は統率が取れているとは言いずらい動きを見せていた。
「指揮官が居ないと言う事か? であればここは打って出るが得策かと存じます」
「ヤヘイもそう思うか・・・良し! 皆の者出陣だ!」
城を追われたとはいえアザイ家に仕えた精兵たちはそのままこの清水山城に居た。そんな精兵の先頭をヤヘイが駆け【亡霊武者】を切り捨てて行く。更に兵がその後を追従して塔檄をする。
いくら個々では強い【亡霊武者】と言えど指揮された軍を相手にするにはその力を十全と発揮できないでいた。1体に対し3人から5人が襲い殲滅して行く。またその後を駆ける足軽兵が桶を持ち倒れた【亡霊武者】に桶の中の水をかけ浄化を行う。
だが数の上では上回る【亡霊武者】達の一部がアザイ軍を抜け清水山城へと迫る。
そんな【亡霊武者】たちの前に1騎の女武者が駆け込み巻物を広げ大量の【ドール兵】を解き放った。
「さあ殲滅戦を開始するよ」
ハルナの言葉に【ドール兵】の瞳が光り【亡霊武者】へ向け進軍を開始した。
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次回は5月7日を予定しております。




