004話
【亡霊武者】に組することとなったロッカク軍はその兵力を全て筒井城へ向けたわけではなかった。当然近江のヨシナカ軍と康応してアスカ軍を待ち伏せしていたのである。観音寺城はヨシナカ軍に占領されていたのだが、その南東に位置する音羽城に戦力の一部が滞在していた。
「サダヨリ様、鎌刃城より2つ目の狼煙が上がりました」
「うむ、これも戦国乱世・・・強気者に組するは世の通り・・・新参者の領主などおそるるに足らん! ロッカク軍出陣! 目標【神楽舞の神子】の首! 進めぇぇぇぇ!!!」
「「「おお!!!」」」
総勢1620のロッカク軍が音羽城を出て北へと進む。
一方観音寺城を目指すアスカ軍本隊では南より立ち上る軍気をいち早く察知したアスカが声を上げる。
「シャル! 合図を!」
シャルロットは頷き上空へ向け【火矢】を連続で3発打ち上げた。
鎌刃城から観音寺城へと向かう街道で、南の音羽城からの街道と交わる場所で【亡霊武者】と交戦していたカエデ軍
「カエデ! 後方より【火矢】3つ!」
ハルナの言葉にカエデは頷き
「後は頼みます!」
「任せな! アスカ君が来るまでは十分持たせる!」
カエデはハルナの言葉を受け【ドール兵】騎馬隊に指示を出す。
「私らはこれより反転! 鎌刃城へ進軍中のアザイ軍を討つ! 私に続け!!!」
カエデの声の後にハルナの声が響き渡る。
「私達はここで一時敵を食い止める! すぐに本隊が駆けつける! 良いな! 死守するぞ!」
カエデの騎馬隊はカエデの後に続き駆け出し、ハルナの部隊は槍を掲げハルナの命に答えカエデ軍を追うヨシナカ軍の間に割って入る。
駆け抜けるカエデの上を何かが飛んで聞く影があった。その影はハルナ軍の後方へと着地すると抱えていた鎧姿の女性シャルロットを降ろすと
「お待たせしました。シャルは南部からのロッカク軍に備えてください! ハルナ軍は全速で戦線を離脱! 僕の軍が前に出ます!」
「何のこれしき!・・・と言いたいところだが助かった! 後は任せる!」
ハルナは目の前の【亡霊武者】を斬り捨て踵を返し駆けだすとハルナ軍の【ドール兵】もそれに続き後退を始める。そんなハルナ軍を追撃しようとしたヨシナカ軍の先頭に炎の刃が降りそそいだ。
【空歩】により上空で【朱雀の双刀】を召喚しヨシナカ軍目掛け振るっていたのである。
炎に焼かれ空間が開いたところにアスカは着地し、そのまま一振り、また一振りと【朱雀の双刀】を振るいヨシナカ軍の【亡霊武者】達を焼き払って行く。そして時間が来たのか【朱雀の双刀】がその姿を消すとアスカの後方に控えていた【ドール兵】武者隊が前へと進軍を開始した。
「それではお願いします」
アスカは【ドール兵】武者隊へ言葉を掛けるとその背にある2振りの小太刀を抜き放ちトンッ! トトンッ! とリズムを取りながら舞いだす。
音羽城を出たロッカク軍の目の前で上空が赤く炎に包まれたかと思うとその炎がヨシナカ軍へと降りそそぐのを目の辺りにして唖然としその歩みを止めていた。そして次の瞬間にその炎が無数にヨシナカ軍へと降りそそぐと
「天罰が下ったんだ! こんな軍に居たらおいらたちも焼かれて地獄へと落ちちまう!」
そんな叫び声が足軽兵から上がるとそれを合図にしたかのように足軽兵は愚か騎馬兵まで逃げ出した。
「これ! 逃げる出ない! 進め! 戦うのだ!」
その声に反応したのは従軍していたヨシナカ軍の【亡霊武者】達であったが、しばらく進むと一斉に膝を付きもがきだした。見れば夜の闇に青く光る波紋の様な物が先ほど炎が発せられた場所から広がっていた。更にそんな【亡霊武者】達へと青白い光を帯びた【火矢】が降りそそぎ、白銀に光る鎧を纏ったシャルロットを先頭に斬りかかった。
その刀身に青白い光を纏い苦しんでいるとはいえ【亡霊武者】達を1刀の下斬り捨てているシャルロットの姿はロッカク軍の当主サダヨリの心を折るのに十分であった。そこへ更にハルナ軍も加わり【亡霊武者】達を全て打倒したころにはサダヨリの周囲には1兵の姿も亡くなっていたのである。
「貴方がロッカク軍の大将ですね」
シャルロットの問いにサダヨリは思わず頷き、意識を取り戻し刀へと手を掛けようとしたところで横面に激痛が走り乗っていた馬から転げ落ち、【ドール兵】により縄を掛けられ捉えられるのであった。
「これでこっちは終わりね。アスカの方は大丈夫かしら?」
「大丈夫みたいだ。アレを見てみろ」
シャルロットの呟きにハルナがその後ろから答え、指さす方では完全に崩れ落ち残骸となっている【亡霊武者】の姿が映し出されていた。
「後はユキナたちがアザイ軍を討てば背後を気にせずに観音寺城を攻められると言う物だ」
「そうですね。それにそいつを【鑑定】してみたけどロッカクの当主みたいだから伊賀の国の方も片が付くかもしれないわね」
「へ~大物だな・・・だが伊賀の国まで我々では手を出せないぞ?」
「そこは【十勇士】か気は進まないが【天下不武】にでも任せればいいんじゃないかな?」
「まっそう言う細かいことはユキナ殿やハンベイ殿、それにドウサン殿がかんがえるだろうさ」
「それもそうですね・・・っと終わったみたいです」
アスカの方が終わった様子を確認し2人はアスカの下へと歩き出した。
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