015話
会談まで飛ばされたタマヅサを守るように【死鬼】がシャルロットとの間に入る。
「邪魔よ!」
青白く光り輝く【ショートソード】が【死鬼】を切り裂く。
「くっ!」
タマヅサは顔をしかめ焦りながら周囲を見渡し右横の部屋へと駆け込む。
「あっ! 待ちなさい! 本当にあんた達邪魔っ!」
逃げるタマヅサを追おうとしたシャルロットへ【死鬼】が次々と襲い掛かりその行く手を阻んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・やっと追いついた・・・娘よ・・・はぁ・・・援護する」
ナオモトが息も絶え絶えにそう言うと懐から巻物を取り出し広げ、巻物が光だすと武者装備の【ドール兵】が姿を現す。
「はぁ・・・ふぅ~娘よ追い駆けられよ! ここは某が相手をする・・・」
「おちゃんここ任せた!」
ナオモトがここを任せろと声をかけている傍から既にシャルロットはナオモトに任せるつもりで【死鬼】達の一角を切り抜けタマヅサが逃げた部屋の前までたどり着き振り返りもせずにそう言い捨てると部屋の中へと消えた。
「はぁ~まあそれで間違ってはいないのだが・・・仕方がないこの苛立ちは貴様らにぶつけるとしよう」
ナオモトは刀を抜き【死鬼】を見据え
「者ども掛かれ!」
武者装備の【ドール兵】が【死鬼】へ向け一斉に斬りかかった。
「ここまで敵が来ていると言う事は最早1階に降りている余裕はないと見て良いですわね・・・」
部屋の窓から下を窺っていたタマヅサがそう呟くと後ろの戸が開き
「見つけた! あんたはここで討ちとらせてもらうよ!」
「ちぃっ! もうここまで来たのかい!」
タマヅサは袖口から竹筒を取り出しその栓を抜き
「や~てお終い!」
竹筒から2体の赤い毛並みをした【管狐】が飛び出し火を噴く。
「わっ! あっぶないな~もう!」
『シャルロット殿! 不味い! 火が城へと燃え移る!』
躱していたシャルロットへミカエルが声を掛ける。
「だからってどうすればいいのよ!」
『その火を利用して私の盾を召喚してください!』
「ああもう! 分かったわ!」
シャルロットは炎の中へと飛び込み魔力を練る。
「はっ!」
そして一気に魔力を解き放つとシャルロットの左手に炎が集まり円状の小さな盾が現れる。
「いつもより小さいわね?」
『それは仕方が有りません。火の階位が低かったのでしょう』
「なっ!? なんてことしてくれるのよ! くっ! あんた達ここは任せたわよ!」
周囲の炎が消えたことでタマヅサは部屋の窓から外へと飛び出した。
「あっ! 逃げるな!」
シャルロットの前を2体の【管狐】が遮り再び火を噴く。
「ああもう!」
シャルロットはその火を盾で防ぐと盾が赤く光その火を吸収した。
屋根の上へと逃れたタマヅサは逃げる場所を探し走り回っていた。すると庭木が有る場所で戦いが起きていないのを確認する。
「ここからならあの木伝いに降りられそうね」
タマヅサは屋根から一番太い庭木の枝へと飛び移り、更にそこから砂利が敷かれた庭へと着地する。
「これで何とか脱出出来そうね?」
「そうでもありませんよ?」
着地の時にしゃがみ込んでいたタマヅサは不意に背後から声が聞こえてきたため驚き、ゆっくりと振り返る。
「今まで散々悪事を働いた貴女を逃がすとでも思ったんですか?」
そこには既に2振りの小太刀を抜いたアスカの姿があり、庭を囲むように【ドール兵】が辺りに展開していた。
「なっ!? 誘い込まれたと言うのかい?」
「そうではありませんよ。危ないところでありましたがアスカ様が貴女の気配を感知しなければ取り逃がすところでした」
ハンベイが説明するとタマヅサは目の前に居るアスカを睨み付ける。
「坊やの癖に生意気だね! 私が戦えないとでも思っているのかい!」
丸腰のタマヅサがアスカへと襲い掛かり腕を振り上げるとその手の先にある爪が勢いよく伸びる。
「いえ、歳の差も有りますし弱ければ封印なんてしないと思いますからね」
アスカはその腕をひらりと躱し、躱しざまにタマヅサの腕を切りつける。
「いたっ! よくも私の球の肌に傷なんてつけてくれたね!」
腕から血を流しながらタマヅサが叫ぶ。そしてタマヅサの身体が狐人間と言うかのように顔は狐、身体から毛が生え二本足で立ち尽くした姿へと変わった。
「それが本性ですか? ならこちらも本気で行かせていただきます」
アスカはそう言ってタマヅサの攻撃を再度躱しながらキーとなる言葉を紡ぐ
「大切な何かの為に、大切な誰かのために僕は!」
アスカの身体が青白く輝き、その速さからタマヅサはアスカを見失う。
「なっ!? 消えた? いや砂利を蹴る音がするから・・・私の目でも追えない速度だとでもいうのかい!」
タマヅサは何かを感じ咄嗟に目の前で爪をクロスさせる。その瞬間爪が切り裂かれ宙を舞う
「私の爪をよくも! よくも!!」
タマヅサの身体を黒い炎が覆う。
「これで攻撃でき・・・んぎゃぁぁぁ!!!」
アスカは黒い炎にかまわず横に一閃、更に反対の手に握る小太刀で一閃、回るようにして再び一閃・・・止まることなく駒の様に回りタマヅサの身体に斬り傷が次から次へと増えて行く
「私の顔が! 身体が! よくも! よくもぉぉぉぉぉ!!」
苦し紛れに黒い炎を周囲へと撒き散らすがアスカの一振りでその炎が凍り付く。【聖竜王】の側近であったヒョウの核が取り付けられた小太刀に【聖氷術】が付与されている為である。
更にアスカが反対の小太刀を一振りするとタマヅサへ天より雷が落ちる。これもまた【聖竜王】の側近であったライの核が付く小太刀にある【聖雷術】の効果である。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
「これでとどめです!」
アスカの小太刀がタマヅサを十字に切り裂き、タマヅサは青白い光に飲み込まれ、その核を残し粒子となって消え失せた。
ポ~ン!
とある【時間旅行者】により【妖狐タマヅサ】が倒されました
これによりタマヅサに操られていた者たちが【魅了】より解放されます
引き続き皆様が【WOL】を節度を持ち生活することを心より願っております
アスカはそんなワールドアナウンスを無視するかのようにその場で座り込む。
「お見事ですアスカ様」
「本当に見事なもんだ。あの【解放】とか言ったか儂でも目で追うことが出来何だわ」
それぞれから称賛の声が掛けられる。
「アスカ様・・・その御様子では浄化作業はまだ無理なようですね」
「はい。あと30秒ほどお待ちいただければ立ち上がることは出来るようになりますので・・・」
「ゆっくりでいいんじゃないか? 【死鬼】達が逃げ出しているみたいだし」
アスカ達は声のした方へと顔を向けると屋根の上から周囲を窺うシャルロットの姿がそこにあった。
「ふむ、残敵は我ら【美濃三人衆】が引き受けるとするかのうハンベイ」
ヨシミチの言葉にハンベイは頷き
「お願いいたしますヨシミチ様。私達はアスカ様が回復次第【浄化】にかからせていただきます」
「うむ心得た。城内はナオモトの奴に任せ儂はモリナリと共に城下へ出て【死鬼】より人々を守ると致そう」
そう言うとヨシミチは2体の【ドール兵】にそれぞれ手紙を渡し、受け取った【ドール兵】が別方向へ駆けて行く
「さて我らが力アスカ様にとくとご覧に入れる! 者どもぬかるでないぞ!」
【ドール兵】であるため口がきけないのだがヨシミチの言葉に答えるように【ドール兵】は鞘に入ったままの刀を掲げ答える。
ヨシミチが出ていってから数分後アスカは1階の中心にある大広間へと来ていて服装を舞を踊るための物へと変えていた。そして【浄化の舞】がアスカの足踏みを合図に始まり、その光により稲葉山城周辺に隠れていた【死鬼】達は次々とその姿を消していくのであった。




