014話
伊豆の国、旧韮山城【瘴気満ちる城】最上階
タダトラであった者は和鎧に身を包み仮面をつけた男がどっしりと玉座でふんぞり返っていた。最早現実世界でのタダトラ本人はリンクが切れ、再びログインすれば監獄島の個室へと送られることであろう。しかしタダトラであった者は蠱毒によりその身を支配され別の存在となっていたのである。
「さてここが最上階なんだが・・・」
ノブタカは階段を上がり周囲を見渡す。
「アレがBossですか・・・」
マサナリが奥で座る鎧姿の男を確認する。
「あのプレッシャーで1パーティーでしか相手にできないって・・・」
ヒデミが顔をしかめるとタダトラであった者はゆっくりと立ち上がる。
「来るぞ!」
ノブタカが叫ぶとそれを合図にしたかのようにタダトラであった者はものすごい勢いでノブタカ達へと突っ込んでくる。
「まずはこれでもくらえ!」
マサナリが何か丸い物体を投げる。その物体には火が付いた導火線が有る・・・【爆裂玉】、以前カズミも使っていたものである。だがそれとは違いさらに連なっている。連続した爆発でタダトラであった者は吹き飛び後方へと転がる。
「凄い威力だな・・・」
「ノブタカ殿! 奴は我らと同じレベル50だと思われる!」
爆発によるダメージからマサナリはタダトラであった者のレベルを推測する。
「なら勝ち目はあるな!」
一瞬で火縄銃を構えたノブタカはタダトラであった者の瞳目掛け射ち放つ
僅かに顔を反らしたタダトラであった者であったが兜を掠めよろめく
「もう一発くらっとけ!」
再びノブタカは引き金を引くと再度轟音と共に弾が放たれた。ノブタカの持っている火縄銃はただの火縄銃ではなく【種子島・改】の完成品ともいえる物で、連続で4発撃つことが出来る物であった。
弾丸が赤く光るタダトラであった者の目を打ち抜くといつの間にか接近していたマサナリが先ほどの【爆裂玉・連】をタダトラであった者の身体へと巻き付け離れると同時に爆発する。
「やったのか!?」
「ノブタカ様、それはフラグです」
ヒデミの声に康応スるかのように煙の中からムカデの様な物が飛び出しノブタカを襲う。
ノブタカは咄嗟に【種子島・改】でその攻撃を受けるとムカデの様な物は【種子島・改】に巻き付きノブタカは危険を察知して手を放し後方へと逃れると【種子島・改】が砕かれ小さな爆発を起こし、その爆発に怯んだのかムカデの様な物は後方へと引っ込む。そこには煙が張れボロボロになったタダトラであった者の腕からムカデが生えているようで仮面も外れ不気味に微笑む顔があらわになっていた。
「全く薄気味悪い笑みだな」
ノブタカは腰の刀を抜き放ち構え
「俺は接近戦はそんなにうまくないんだが・・・」
その声を理解したのかはわからないがタダトラであった者はノブタカ目掛け腕を振るいムカデを伸ばし飛ばす。
「はっ!」
そのムカデを横からカズミが薙刀で切り上げ弾き、弾かれた衝撃でバランスを崩したタダトラであった者に2人の忍び装束の者が小太刀で切りつける。
「くっ! 思ったより硬い! マスター!!」
黒装束の者の1人が間合いから逃れながらマサナリを呼ぶ。
「分かっている! こいつは特別性だ!」
マサナリは【炸裂玉】を1つ当てるではなくタダトラであった者の頭上へと投げそこで炸裂する。するとそこから液体がこぼれ落ち、タダトラであった者に掛かりジュッ!ととかすように焼き始めた。
「【神聖水】入りの奥の手だ!」
タダトラであった者はもがき苦しみながらのたうち回り所々甲羅が剥がれ落ちる。そこへと正確に苦無が幾つも飛来し刺さる。
「これで終わりだ!」
水を滴らせた刀でノブタカが止めとばかりに振り下ろす。【神聖水】の効果かすんなりとタダトラであった者を真っ二つに切り裂き傷口を焼き
「これで終わりか?」
「またフラグ立ててます!」
「いやもう大丈夫だろ?」
ノブタカの言葉に視線を落とすとタダトラであった者は粒子となり砕け散った。
ポ~ン!
【天下不武】【伊賀忍軍】により【瘴気満ちる城】がクリアされました。5分以内で元の状態へと戻ります。それまでに脱出していただけるようにお願いします。
「はぁ!? 脱出?・・・まさか!」
周囲が揺れ始め壁が崩れ出す。
「嘘だろ! っと驚いている場合じゃない! 脱出するぞ!」
ノブタカが周囲を見渡すと他の者たちは既に階段付近まで走っていた。
「ノブタカ様! 早くこちらへ!」
「くっ! 駆けだす前に声を掛けろ!」
ノブタカも慌てて駆けだす。他の階でも同じように攻略中のパーティーが逃げ出し、何とか残り1分と言うところで全員が脱出を果たすと旧韮山城【瘴気満ちる城】は怪しく光り輝き、次の瞬間一気に崩れ土ぼこりを周囲へと撒き散らした。
「けほっけほっ・・・みんな無事か?」
ほこりを払いながらノブタカが声を掛ける。
「何とかみんな無事です」
「【伊賀忍軍】も無事だ・・・」
皆の視線が瓦礫へと注がれる。
「これどうするんだ? 俺たちが立て直すとか言わないよな?」
ノブタカの言葉に皆乾いた笑みを浮かべるだけであった。




