013話
稲葉山城の裏手にひっそりとたたずむ祠・・・その中にはいくつかの枷を外すことでまつられた石像が滑るように動き地下へと続く階段が姿を現す。アスカ達と共にここへと案内したのはハンベイ、そして美濃の三人衆と呼ばれるヨシミチ、モリナリ、ナオモトも共に地下道へと足を踏み入れた。
地下道は暗く、このまま進むには不便化と思われたが、
「アスカ様方、こちらをお持ちください」
ハンベイはアスカへ向けランタンの様な薄く発光する道具を差し出す。
「ありがとうございます」
アスカは受け取ると顔の前まで持って行きまじまじと観察する。
「気になりますか?」
自分様にもう一つ取り出したハンベイはランタンの様な物を何回か上下を入れ替え薄く発行したところで笑みを浮かべる。
「これはヒカリゴケを特殊な技法でその成分を抽出して水と混ぜたもので、このような暗い場所で明かりがわりとする【発光提灯】と言う物です」
「これで有れば火を使わぬから空気を汚さぬし、ガスなどで爆発する恐れもない」
「それに魔道具と言う訳ではないので【魔力察知】で確認することも出来ぬ」
「そして一番は、油と違い頻繁に継ぎ足さなくて良いと言う事ですよ」
それぞれ屈強な武者たちから声が上がる。
「恐らくタマヅサは天守閣に居ると思われます・・・あっそこは右へ行ってください」
ハンベイが道を記憶していると言う事で先頭近くを歩く。
「ただ城を奪うのであれば1階でアスカ様に待っていただければよいのですが・・・」
「今後のことも考えるとここで仕留めておきたいですね」
「はいその通りにございます。ですので1階を制圧した後に外からの増援を防ぐ者たちを残し最上階のタマヅサ討伐に向かいます」
作戦を聞きながら進むアスカ達の前に十字路が顔をのぞかせる。
「そこは真っすぐに言ってください」
「それにしても良く山が崩れないですね?」
アスカがこのような地下道を掘って山が崩れないことに不思議に思う。
「それは、陰陽師たちが壁に使う石材に印を刻印しているからですね。代表的なのが【硬】の印ですね。これらの印を組み合わせ相乗効果で見た目以上にしっかりとした通路となっていますのでここが崩れることはまずありませんよ」
アスカはなるほどと頷く。
時間にして1時間から2時間は過ぎたであろうか少し広い場所へと出てその先に会談が姿を現す。
「あの先に地下牢にある隠し扉へと通じています。ヨシミチ様」
ハンベイの言葉に坊主頭の大男が頷き階段まで駆け寄り気配を探る。
するとヨシミチは手でこちに来いと招く。アスカ達が階段の傍まで来ると
「多分今は日の出の頃かと思います。これよりは時間との勝負となりますので・・・」
ハンベイはハルナを見て
「ハルナ殿とモリナリ様に一階制圧を、シャルロット殿とナオモト様はそのまま2階へと駆けあがり制圧を、アスカ様は我々と共にタマヅサ討伐となります」
アスカ達も含め全員が頷き、ハンベイが扉を開くからくりに手を添え下へと引っ張るとゴゴゴと言う音と共に天井が開き明かりが差し込む。
「さぁ行ってください!」
「先陣はこのモリナリが務めさせていただく」
そう言って駆けあがるとモリナリは懐から巻物を取り出し
「出でよ我配下よ」
その言葉と共に巻物に記された魔法陣よりは仮が溢れ武者装備の【ドール兵】が姿を現す。その光景にハルナが驚いているとモリナリは口端を釣り上げ
「これでも儂は【大隊長】だからな? お主たち【時間旅行者】の専売特許と言う訳ではないと言う事だ」
瞬く間に地下牢を見張っていた【死鬼】を【ドール兵】が駆逐する。
「そんなとこで呆けていると1階は儂だけで終わってしまうぞ?」
ハルナはモリナリの言葉に我に返り駆けだす。ハルナは地下牢から駆けあがると1階に出た直後自身も【ドール兵】を呼び出す。数こそ先の関ヶ原の戦いにおいて減らしているとはいえ、その戦いにより【ドール兵】のレベルも著しく上がっている。
「我らも2階を目指す。娘よついて来れるか?」
挑発的な笑みを見せるナオモトにシャルロットは
「誰にものを言ってんだ! そっちこそ遅れるんじゃないよ!」
シャルロットは一瞬で周囲を確認して2階へと続く階段があると言う廊下へと駆けだす。
「まっまて! 1人では危険だ!」
慌てるようにその後をナオモトが追い駆けだす。
「それでは、我々はゆっくりと進むといたしましょう」
ハンベイの言葉にアスカは頷きシャルロットが消えた通路へと歩き出した。
天守閣の最上階で親指の爪を噛みながら悔しさを滲ませていたタマヅサの下へ【死鬼】が現れる。
「何だって!? この城に侵入者だと? 何やってんだい全く・・・正面はちゃんと見張ってたって?アンタ・・・ここは元々奴らの城さね。抜け道の1つや2つあるだろうさまったく・・・」
タマヅサは立ち上がり張にかかっていた薙刀を手に取り
「迎撃だよ! ドウマ様が明日来るっていうんだ! どうせ人数は少ないはずさね!・・・はぁ?ちぃっ!【人形兵】を使える者が乗り込んできているのかい。厄介な・・・城下に展開中の死鬼を集め制圧するよ!」
【死鬼】はタマヅサの言葉に頷き歩いて行く。
「これ以上の失敗はこのタマヅサ様と言えどお仕置きは免れないさね・・・」
再び親指の爪を噛み床を睨み付けた。
1階門前
「1小隊は右! 2小隊は左の門の影から攻撃! 3小隊は私と共に正面で奴らを抑えるよ!」
ハルナは18体の【ドール兵】へと指示を出し自らも腰の刀へと手を添える。丁度そこへ門から【死鬼】が入って来る。そんな【死鬼】へと左右からやるが突きだし串刺しにする。実はハルナの【ドール兵】が持つ槍は【六文】の実働部隊が持つ予備の【破邪】系の武具であり、先の関ヶ原の戦いの前に貸し与えられた者に他ならなかったのである。
更にハルナと共に3小隊が正面から襲い掛かり【死鬼】達は成すすべなく討たれて行く。
2階へと上がる階段前
立ちふさがる2体の【死鬼】へとシャルロットが駆ける。
「邪魔なのよ」
普段使っている大剣とは違う、【ショートソード】が青白い光を纏い2体の【死鬼】を横一線に切り裂いた。
「じゃお先に!」
「だから! はぁ・・・待つんだ! はぁ・・・待てと言っておろう!」
息を切らせながらナオモトはシャルロットの後を追う。
天守閣、最上階
「1階が制圧された!? 門前で場外からの【死鬼】が討たれてるってのかい? 今度は何さね?」
報告を聞いて怒鳴り声を上げるタマヅサの下へ更に【死鬼】が駆け込む。
「はぁ!? 2階への侵入を許したってのかい? あそこにはここに配属された【死鬼】でも最強クラスの【死鬼】を配置してたどろう? 以前火を操り仲間を討っていた小娘だってのかい? って事は奴もいるって事じゃないさね! 討って出て突破するよ! あんた等も付いてきな!」
このままここに居てはいずれ討たれる。だが逃げるにも抜け道などを聞きだす前であったためにタマヅサは正面から逃れる以外に手はなかったのである。
「私の策にことごとく邪魔に来る坊やたちだよ!」
2階へと降りたタマヅサは不意に前を歩く【死鬼】が粒子に変わったのを目のあたりにし、一瞬動きを止める。
「アンタがタマヅサっていう化け物だね」
すぐ目の前から声が聞こえたと思うや否やタマヅサの前に【ショートソード】の刃が迫る。
「ちぃっ!」
咄嗟に薙刀を引き上げシャルロットの一撃をタマヅサは防ぎ後方の階段まで飛ばされた。




