003話
だが、近江の国へと向かった【亡霊武者】の軍の他にも【亡霊武者】の軍があった。その軍の首領をキヨモリと言いその進路を西へと向ける。
このキヨモリ軍に対し立ち上がったのが大阪に居を構えるトヨトミ軍とトウキチ率いる【千成瓢箪】であった。彼らの実力を脅威に感じたのか、足止めに1軍を残しキヨモリ軍は更に西へと進路を取る。
その部隊は2手に分かれ1つは海を越え阿波の国へと上陸し、もう一つは播磨の国へと進軍する。
阿波の国へと上陸したキヨモリ軍はその地から湧き出るように現れた【亡霊武者】を味方に引き入れ膨れ上がり瞬く間に阿波の国を占領して讃岐の国へと進軍する。
この状態に動いたのは土佐の国を治めるチョウソカベ軍であった。その軍を【海援隊】が支援して土佐への侵入を阻止したことでキヨモリ軍はその主力を讃岐の国へと向け占領する。
また播磨の国へと向かっていた別動隊はクロダ軍によりその行軍を止めていた。だがここで事態は急変する。四国の東部が【亡霊武者】に制圧されたとの報が入り野戦論より籠城論の方が勢力を強め都市部を守ることに移行するとそれまで抑えられていた【亡霊武者】達は一気に動き出し都市部以外の村々で被害が多発する。そんな播磨の国へ戦力を立て直したトヨトミ軍が駆けつけた時には【亡霊武者】の軍は西へと抜けた後であった。
キヨモリ軍は瀬戸内海周辺の国をその支配下に収めながら西へと向かい、北九州の豊前、豊後そして筑前の3カ国を占領し、そこで制圧した国々を支配下に置く。
これに対しモウリ軍、アマコ軍、オオウチ軍、オオトモ軍そしてシマヅ軍が連合を組み軍を向けるが、レベル差からか迎撃され、更に自国内の【瘴気だまり】から発生した魔物や【亡霊武者】によりキヨモリ軍への対応が出来ない状態となりこう着状態を迎えていた。
月面都市、某所
「日本サーバーだけ進みが早いぞ! 何やってんの?」
「アマテラスが流した情報により他国も闇の勢力と接触している。暫くすれば誤差の反意だろう?」
「早すぎるんですよ。【クウロン】に国が滅ぼされたとこが出てるじゃないですか?」
「自業自得だろう? 体制が整わないうちから高レベルクエストなど発生させるから・・・」
「そう言う意味では日本サーバーは特殊なのだろう」
「そうそう、僕が覚醒させた【紅の姫騎士】が居るからね」
「【姫騎士】はそれほど関わっと欄ではないか。寧ろこの【剣鬼】【名匠】とその関係者の存在だろう」
「ああ~自然発生型の【超越者】ね。古武術の・・・それもそんな技術を今のこの時代まで残していたことに驚きだけどね」
「いやだからさ、【姫騎士】からの情報で【術】に関する情報が流れたことが重要じゃない」
「それを言うのであれば【神子】の【神聖術】の方だろう」
「そうだな。【聖術】ではなく【神聖術】だと言う事で不死系への特攻がおかしなことになっているからな」
「ああ、そのせいでレベル20以上の差を覆しているのが大きいな」
「く~~~」
「悔しいのは分かるがこれ以上介入するなよ? 今我々の事が露見するわけにはいかんのだからな」
「・・・分かっているさ。僕だってそこまで愚かではないよ」
「それに【神子】と【姫騎士】を上手く接触できたのだ。今はそれを見守ろうでてゃないか」
下総の国、西部よりタケダ軍がマサカドが居を構えた古河城へと向かって進軍し、マサカド軍と戦闘に入っていた。マサカド軍を指揮するのは【白面】の者であるのだが、他の将とは違い前面へと出てこずに後方で軍を動かしていた。それに対しタケダ軍はハルトラの指揮の下対応し、ヤマガタ軍、コウサカ軍もそれに追従している中、現在タケダ軍最強となっている富士吉田のキラ軍がマサカド軍を縦横無尽に蹴散らしていた。
「先生は敵大将を討つのに休んでいてほしいのだがな・・・」
「あら? あの人にとってはあのくらい準備運動のつもりじゃないかしら?」
ハルトラの言葉に横に座っていたシズネが答える。
「でありましょうな・・・」
ハルトラもそれが理解できるだけに苦笑いを浮かべ答える。
「それにそろそろ・・・動き出したようですよ」
シズネの言葉通りマサカド軍本体がハルトラの本陣目掛け動き出したのが見て取れていた。
「その様ですね・・・」
ハルトラもそれを見て自身も役目を果たそうと立ち上がろうとした時、手で遮られる。
「シズネ殿?」
「ウフフ、確かに貴方が役目でしょうけど・・・私もあの子の為に何かしたいのよ。譲ってくれるかしら?」
シズネはそう言うと横に立てかけられた薙刀を握り取り立ち上がる。
「まぁ~俺より貴女の方が確実でしょうが・・・良いのですか?」
「じゃあそう言う事で【白面】さんまでの道開けてくれるかしら?」
ハルトラは立ち上がり
「了解しました。馬を持て! 敵本陣が動いた! 突撃し! 【白面】を討つ!」
ハルトラの号令の下すぐに動きを見せ突撃陣形にて敵本隊へタケダ軍は突撃する。マサカド軍もこれに対処するべく同じように突撃陣形にて迎え撃った。互いの騎馬が駆け豚狩り合うそんな中【白面】の者は騎馬でハルトラの下まで近づき騎馬の上から飛び上がりハルトラへと襲い掛かった。
キンッ!と甲高い音と共に【白面】の者が繰り出した槍は弾かれ地面へと降り立つ。
「貴方の相手はこの私ですよ」
薙刀を振り回し構えたかと思うと一瞬で【白面】の者の前へとシズネが駆け寄り薙刀で突きを繰り出す。【白面】の者は咄嗟に槍でその突きを防ぐキンッ!キンッ!一つに見えたシズネの突きは2段突きであり、常人には1つの突きにしか見えなかった。だがそれだけで攻撃は終わらない。更に近づいたシズネが薙刀を回し石突の部分で切り上げる。ピシリ・・・咄嗟に後方へと避けた【白面】の者の白い面の顎のあたりにひびが入る。
一瞬ではあるが【白面】の者の瞳が殺気を帯び光を放った。
「あら? 感情が有るのね。でも貴方はここで終わりよ」
上下より薙刀の刃が【白面】の者へと襲いかかる。それに対し【白面】の者は槍の先で円を描き薙刀を弾こうと動き、槍と薙刀が当たるかと思われたその時、槍は薙刀を通り抜け【白面】の者は予想した手ごたえが無かったことでバランスを崩し、その隙に再び薙刀の石突の部分が【白面】の者を襲う。先ほどと違うのはその石突が高速で回転していたことであろう。そのまま石突は面を砕き頭を粉砕した・・・
「ふ~リアルすぎるのも問題ね・・・」
警戒しながらも粒子となり消える【白面】の者を見つめ呟いた。
暫くその場で戦いを見守っていたシズネは一瞬で真剣な表情へと変え薙刀を構えるといつの間にか現れたマサカドの周囲に3つの面が浮かんでいた。勿論先ほど砕いたはずの【白面】もである。
「見事・・・我三臣を倒せる者たちが居るとはな・・・」
「そうですか?」
「だがそれもここまでだ。我はあやつらとは格が違う」
目にも映らぬ速さでシズネの前へとマサカドは現れシズネへ向け刀を振り下ろす。
「あら? 遅かったわね」
一瞬何を言っているんだと思ったのだがマサカドは真横から物凄い殺気を感じ視線をそちらへと向ける。
「死者の分際で何しとるんじゃ!」
マサカドへと無数の突きが襲う。その突きを見た者はあれ?遅くない?と思うかもしれない。だがそれは早すぎるために目が錯覚を起こしているだけだと言う事をマサカドは理解し斬撃の向きをタケルへと変えた。
 




