002話
同時刻、下総の国を南から北へと進軍する一団がある。【新選組】を中核とした【八犬士】とホウジョウ、サトミ連合軍である。
街道を進んではいるがそこには風よけの為の木々が有ったり、林を抜ける場所が有る。そんな林へと近づくと【新選組】のソウシは瞳を細める。
「イサミさん!」
ソウシの言葉にイサミは警戒を強め指示を出す。すると林の方から突風が襲い掛かった。
「イサミさん! 僕が抑えます! 先に行ってください!」
言い捨てるようにその突風へとソウシは前かがみとなり一瞬でその距離を詰め
「はっ!」
ぶつかる寸前でソウシはその場で一回転して抜刀する。刀が振りぬかれるや否や突風を切り裂きながら真空の刃が突き進む。その刃が一本の木へと辺り切り倒す。
倒れ行く木の中から影が飛び出し木々の間の宙に浮かび静止した。
「なっ!? 【天狗面】は空を飛べるのか?」
声を上げるイサミをソウシは一瞥し
「そんな訳ないじゃないですか。良く見てください」
その言葉に従いイサミたちは目を凝らすと時折日の光を受けキラキラと輝く細いものが見える。
「見えたみたいですね。そう言う訳なんで師匠みたいに飛べるわけじゃないと思いますよっ!」
ソウシは駆け出し近くの木を足蹴に【天狗面】へと駆けあがる。ブンッ!【天狗面】は近づくソウシへ向け薙刀を振るい迎撃する。
「っと、そう言えば薙刀を使うんでしたね・・・でもっ!」
キンッ!と甲高い音を立てソウシは薙刀を弾く。
「シズネさんより劣るんですよっ!」
鋼線を利用しソウシもまた【天狗面】へと迫る。【天狗面】は左腕を振るい、そこから何かが木へと絡まり、それを引っ張るようにして【天狗面】はソウシの斬撃を躱す。
「それも予測済みっ!」
鋼線を弛ませソウシが【天狗面】へと飛び掛かる。すると【天狗面】は両の手を交差させるような仕草をすると、周囲の鋼線が一斉にソウシへと襲い掛かる。
「我これより修羅とならん!」
ソウシはキーとなる言葉を口ずさみ瞳が鋭さを増すと宙を飛んでいるにもかかわらずその場で静止するように止まり、目にも止まらぬ速さで刀を縦横無尽に振るう。
ソウシが使っているのは【空歩】のスキルであり、【解放】状態であればソウシも扱うことのできるスキルである。
更に鋼線を迎撃しているソウシへ向け鋼線が絡んでいた木々が次々とソウシへ向け倒れ込んできた。
「何のっ!」
更に上へと飛び上がり、その場で回るように上下さかさまとなり宙を蹴り、地面へと降りていた【天狗面】へと突撃する。
【天狗面】はそんなソウシの行動に一瞬たじろぎ両手で薙刀を構え迎撃を見せる。
「貴方の鋼線を利用した戦術は確かに凄い・・・ですが! 薙刀術はまだまだですよ!」
ソウシは一瞬で【天狗面】の背後へと駆け抜け振り向くと【天狗面】はその場で倒れ込み【天狗面】を残し粒子となって掻き消えた。
何故【天狗面】が倒されたかといえばソウシはすれ違うあの一瞬でまず薙刀を弾き上げその勢いを利用し回転する遠心力も載せた斬撃を繰り出し【天狗面】の胴を切り裂き駆け抜けていたのである。
「ふ~~~・・・」
ソウシは刀をひと振りし鞘へと納めると深く息を吐き出した。すると近くからパチパチと拍手が聞こえてくる。ソウシは顔を向けることなく気配で誰かを理解し
「イチカさんですか・・・イサミさんと行かなくて良かったんですか?」
「何、俺は君の護衛を任されたにすぎんよ。一戦終えたばかりで悪いが・・・」
「分かってますって、イサミさんを追うんでしょ?」
「フッ間違ってはいないが本体を追う」
イチカの言葉にソウシは頷きイチカを先頭に駆けだした。
一方先に抜けたイサミたちを【亡霊武者】が大量に襲い掛かる。その中には騎馬に乗った【亡霊武者】も居て苦戦を強いられていた。
「やはり単独での足止めではなかったか」
騎馬が居たことで奇襲されたイサミたちは陣形ままならないままそれぞれの勢力がそれぞれで立て直しを図っていた。そんな彼らへと追い打ちを掛けるように東から【死鬼】が襲い来る。
「くっ! フセ! 【死鬼】の方は任せた!」
「分かりました! サトミ軍と共に迎撃に当たります! 【八犬士】! 【封印殿】の借りを今こそ返すときです!」
綺麗な長い黒髪をなびかせた巫女装束の女性が声を上げ【八犬士】とサトミ軍は東から来る【死鬼】へ向け行動を開始する。
「トシ! 敵騎馬は任せた!」
細身のオールバックの髪形のハチガネを額にまいた男が右手を突き上げそれに答える。
「【新選組】突撃!」
「「「うぉぉぉ!!」」」
トシと呼ばれた【新選組】副長トシヒコの号令の下、騎乗したダンダラ模様の羽織を着た一団が敵騎馬へ向け突撃を始める。それに伴い余裕が生まれた残りの【新選組】とホウジョウ軍は目の前の【亡霊武者】達へと集中することが出来反撃を開始した。
すいません。明日はUP難しそうです。
 




