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オールド・タイム・ワールド・リンク(仮)  作者: あおい聖
【亡霊武者】
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001話

 伊豆の国で始まった【瘴気だまり】に関する影響は各地で被害をもたらしていた。被害のおおっかった場所は主に関東のマサカドに対応した勢力の領地で多く見られた。


 その一つタケダ領である信濃南部の木曽で大きな動きを見せる。【瘴気だまり】から【亡霊武者】が現れたのである。その【亡霊武者】は自身をヨシナカと名乗り、共に現れた和鎧に包まれたスケルトンと共に北上する。


 これに対し上田城のサナダ軍が動き出し激突することとなる。数で勝るサナダ軍の活躍により何とか都市部への被害を逃れてはいたのだが・・・ヨシナカ軍はさらに北上し、道すがらに現れるスケルトンを吸収することでその数を次第に増やして行く。


 ヨシナカ軍はウエスギ軍の居ない越後へとその進路を取り、留守を預かるナヲエ軍は多大な被害を出しながら西へと追いやることに成功する。


 だが、西へと追いやられたヨシナカ軍は突如としてその戦力を膨れ上がらせた。まるで初めからここへと来ることを目的としていたように・・・






 さらにヨシナカ軍とは別の【亡霊武者】が山城の国・・・現在の京都で現れる。それはまるで【源平合戦】を思わせるかの如く・・・京で起こった亡霊武者軍はその陣容が整うとその進路を東へと向け、近江の国の北部へと進んで行く。それに対するかのようにアサクラ軍を大群で打ち破り進軍してきたヨシナカ軍と睨み合うのであった。



「フォフォフォフォ、意思を持って蘇らせたが仇となったか・・・まあ良い西方へ向かったヘイケの軍は順調に進んでおるわ。シキノの嬢ちゃんが居ないのはちとつまらんが・・・もうじき面白い者たちが近江へと来る様だしのう・・・」



 【アシヤ】の首領ドウマは既に関東を離れ京に訪れていたのである。



「セイメイでも蘇らせれば面白かったんじゃろうが・・・嬢ちゃんの式になっておるからのう」






 常陸の国、太田城



「よもやドウマめ京で事を起こすとはな、しばらく姿を見ないと思えば・・・」



「殺しに向かいますか?」



 キヨタツの影から【早鬼】が顔をのぞかせる。



「主1人では無理だ。ドウマを簡単に殺せるようであれば我が既にそうしておる」



「出過ぎたことを・・・」



「良い。ヌシは早く傷を癒し【豪鬼】の援軍に向かえ」



「御意」



 影の中から【早鬼】の気配が消える。



「【知鬼】よ」



「はっここに」



 いつの間にか現れた【知鬼】は膝を付き首を垂れた状態でキヨタツの傍に現れる。



「マサカドがよもや負けることは無いと思うが・・・念には念を入れヌシが後攻めとして向かえ」



「はっ仰せのままに」



 現れた時と同様にいつの間にか【知鬼】の姿が消える。



「・・・気にしすぎかもしれんが・・・ドウマが関東に見切りをつけ西へと向かったのには理由があろう。三面の者を倒せる者が居るのか? しかしマサカドが居れば問題なかろう・・・まさか!? マサカドに勝てる者が現世に生きる者たちの中に居ると言うのか? であれば我も阿蘇へ行かねばならぬか・・・」



 1人静かに呟き西の空を見据えた。






 下総の国を北から進軍するウエスギ軍の前に【鬼面】の【亡霊武者】の軍が立ちはだかる。



「毘沙門天の化身たる俺に再び立ちふさがるとは・・・良かろう。俺自ら引導を渡してくれる」



 長刀・・・刀にしては長いそれは騎馬に乗った状態では丁度良い長さの得物である。それを抜き放ちカゲトラは【鬼面】へと突撃する。


 【鬼面】お方も前回の戦いで人馬一体のカゲトラに苦戦を強いられたことを覚えているとばかりに長柄の斧を大きく振りかぶりカゲトラの乗る馬へと力一杯振り下ろす。



「ふんっ! 見え透いた攻撃を!・・・なにっ!?」



 振り下ろされた長柄の斧を巧みに騎馬を操り躱したカゲトラであったが、その長柄の斧が止まることなく地面へと振り下ろされ地面を粉砕し周囲に土砂を吹き飛ばす。そしてその土砂が躱した直後の騎馬へと辺りカゲトラは騎馬と共に倒れる寸前で何とか飛び降り難を逃れるが・・・背後から血しぶきが上がる。【鬼面】はその隙を見逃すことなくカゲトラではなく彼が乗っていた騎馬へとその攻撃を向け、見事その機動力を奪うことに成功する。



「中々やる! だがっ!」



 カゲトラの長刀が勢いよく跳ね上がりその切っ先が【鬼面】へと襲い掛かる。グシャッ! 【鬼面】は長柄の斧を刺さった馬ごと引き寄せ馬を盾に難を逃れる。だが既にカゲトラは次の一撃を放とうと両手で長刀を握りしめ上段に構え



「はっ!」



 振り下ろした。そんな渾身の斬撃を【鬼面】は長柄の斧を斜めに構え更にカゲトラとの間合いを詰めるように前へと踏み出し・・・金属のぶつかり合う音と共にその斬撃を受け流し、その反動を利用し長柄の斧の柄の部分が下から跳ね上がる。



「くっ!」



 何とかその一撃をカゲトラは躱すが、長刀は宙を舞っていた。後方へと逃れたカゲトラは腰の刀を抜き構えると背後に宙を舞っていた長刀が突き刺さり、その音を合図として再びカゲトラと【鬼面】が前へと駆けだす。


 そこからは激しい技の応酬と打ち合いにより、ついて行けない周囲の者たちが距離を取りだし一騎打ちの様相へと移り変わって行く。






 どれくらい打ち合いが続いたであろうか、だが次第に力の差がはっきりとしだす。カゲトラの顔が苦悶の表情へと変わっていったのだ。



 くっ! このままでは刀が持たぬか・・・



 そう、激しい打ち合いで互いの武器の刃が飛び散り駆けて行ってはいるのだが、相手の得物は斧であるだけあって質量的に勝っている。刀にヒビが入った段階でカゲトラが押され始めたのである。


 それを絶好の好機とみた【鬼面】は渾身の力で長柄の斧で横に薙ぐ。するとカゲトラは咄嗟に刀で防ぎ、吹き飛ばされると共にカゲトラの持つ刀はとうとう砕け散ってしまった。


 その光景に【鬼面】の者の口元が吊り上がったように感じ止めとばかりにカゲトラへと振りかぶり襲い掛かる。


 【鬼面】の者は勝ったと思い口を三日月に開くと、何故か目の前のカゲトラも口端を釣り上げ笑ったように感じた。



「あのままなら俺は貴様に負けていただろう・・・だがっ! 俺は毘沙門天の化身! 勝利は必ず俺と共にある!」



 カゲトラは【鬼面】の者に背を向けるとそこに突き刺さっていた長刀を抜き放ち、回転力も加わった強烈な一撃が【鬼面】の者が振り下ろした長柄の斧ぶつかると何かが宙を舞い【鬼面】の背後へと落ちる・・・それは斧であり、【鬼面】の者の手には柄の部分しか残ってはいなかった。



「俺の勝ちだ!」



 再び振るわれた長刀の斬撃が【鬼面】の者の首と胴を切り離し、【鬼面】の者は背中から大きな音を立て倒れ込んだ。



「このカゲトラが! 【鬼面】を討ち取った!!! この戦俺たちの勝ちだ!」



「「「うをぉぉぉぉぉ!!」」」



 その言葉に答えるかの如く【鬼面】を残し身体は崩れるように砂へと変わり、宙へと溶け込むように消え失せて行った・・・


 【鬼面】を討ったことにより勢いを増したウエスギ軍は【亡霊武者】達を蹴散らし下総の国の中心部へと兵を進める。

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