015話
諸事情によりUPが遅れました。
駿河の国、吉原宿
アスカ達は街の中心部から離れ孤児院へと戻って来ていた。
「アスカ君良かったのかい?」
心配したハルナがアスカに声を掛ける。アスカはその場で振り返り
「ええ、お婆様とも相談しましたが、気持ちの整理が付いていないのであれば、江戸方面へ行くのはやめた方が良いと言われましたからね・・・ですが、関東で暴れているマサカド公で有れば問題ありませんよ。お爺様が僕の代わりに対処してくれるそうですから」
「そうか、先生が動くのであれば問題ないな」
アスカの言葉に安心した表情のハルナに疑問を持ちシャルロットが口を開く。
「そんなに強いのかアスカの爺さんは?」
ハルナはシャルロットへ顔を向け
「ああ、先生は単独で【オリハルコン・ゴーレム】を倒せるだけではなく、その先に居るレベル100の【聖竜王】様と引き分ける程の実力者ですから」
自身の事の様にハルナが語りだす。
「そっそうか・・・【オリハルコン・ゴーレム】が何かわからないが、レベル100と引き分ける実力っていうのもピンとこないが・・・今のレベルキャップが50だと言うから・・・ん? それ本当に人間か?」
シャルロットの言葉にみんなが噴き出し笑い出す。
「僕がツバサ・・・あの黒くて気味悪い【時間旅行者】に使った【解放】と言ったらいいのかな? 人が普段使っている数%の力を数十%以上の力を引き出すリアルスキル・・・どういったらいいのかな? シャルは火事場のバカ力と言えば分かるかな?」
シャルロットは頷き
「危機的状況かで普段は使われていない力を使うって言うアレだろ?」
「そう、その火事場のバカ力を意識的に引き出す古武術の技法何だけど、僕も10%ぐらいまでは引け出せるんだけど・・・」
「あっそうか! それが影響で【身体能力低下】のデバフが付いてたのか」
事情を理解したカリナが声を上げる。
「そう言う事。でもお爺様は僕以上の力を人体に影響することなく引き出せるから・・・」
「確かにそれならば予測レベル80~85ぐらいのマサカドの相手は可能と言う事ですね」
声は背後かか聞こえ、振り返るとそこには真面目そうに制服を着こんだ女性が立っていた。
「突然声を掛けたことを謝罪するとともに、私は【天下不武】のヒデミと言います」
ヒデミは深々とアスカ達に向け頭を下げる。
「で、その【天下不武】所属の【時間旅行者】が私達に何か用か? 関東へ行けって事ならさっきそっちのトップに断り入れたぞ?」
睨み付けるようにアスカ達の前へとカリナが歩み出る。
「いえ、私は別件でアスカ様にご助力願いたく交渉に参りました」
「それでヒデミ殿、アスカ君に用と言うのだが・・・交渉か・・・長くなりそうなのか?」
カリナの肩をポンッと軽くたたき後は任せろと言った感じでハルナがヒデミの正面に出て訊ねる。
「そうですね。ここで良ければここで説明いたしますが・・・出来れば色々とお話をさせて頂ければ宜しいのですが・・・」
「でしたら教会の談話室をお使いになって構いませんよ?」
箒など掃除用具を持った子供たちと共にシスターセイランがアスカ達に告げる。何故かセイランの顔を見てヒデミの瞳が一瞬ではあるが見開かれたように感じる。
「シャルロット、案内して差し上げて? 私達は日課の清掃に行きますから」
「ん、分かった。こっちだ」
シャルロットに案内されて付いた場所は、食堂として使われていた場所であった。アスカを中心にそれぞれが座りその対面にヒデミが腰を降ろした。
「それで、参加以外の交渉と言うのは何ですか?」
先ほどのやり取りで少し過去を思い出しアスカの心は穏やかではなかった。
「それでは、トウショウサイ殿が御造りになる【破邪】系の武具に付いてと言えばお分かりになるでしょうか?」
「【神聖水】の事だね」
ヒデミは頷き
「はい。その【神聖水】をご用意していただけないでしょうか?」
アスカは考え込む
【神聖水】の対価って色々な装備だよね? え~めんどくさいな~
そんなアスカを見かねたシズカが声を上げる。
「それはどれくらいの量でどんな対価をお求めですか?」
「うむ、それは当然ですね。因みにトウショウサイ殿はどのような対価を?」
「私・・・アスカを含め私とシズカの適性より高い装備だね」
ヒデミの問いかけにカリナが答え、
「武器に関しては【ミスリル】や【オリハルコン】と言った物は自分達で調達しましたし、その材料集めにも付き合っていただきましたね」
「ふむ、そうなると・・・」
「でもそれってさ、私達に必要だったから向うの提示した対価を払ったってだけだろ? だから時間をかけ【神聖水】をアスカが造った訳だから」
「なるほど、それ以上の対価又は時間を取られるために数量が問題となるだろうな」
ハルナは普段から交渉などになれているのだろう。これまでの会話からある程度の指針となる物を提示する。その言葉に一瞬、本当に一瞬ヒデミが悔しそうな顔を見せる。
「確か、【破邪】系の武具に必要な【聖属性石】って貴重だったな」
ヒデミはハルナを睨み付ける。そんなヒデミを見てハルナは少し口端を釣り上げる。
「舐めないで貰おうかヒデミ殿。私がこの話を【風林火山】のサブマスターとして受けたとすれば・・・交渉決裂だな。我々を何も知らないと思い舐めすぎだ」
ヒデミは下唇を噛みしめる。事ここに至ってノブタカから言われていたことを思い出し。自分自身に怒りさえ覚えるのであった。
「まっアスカ君はお人よしみたいだからな。協力はしてくれるだろう」
不安そうな顔をしていたアスカではあったがハルナの言葉にほっと胸をなで下ろした。
「今後の予定も有るから・・・そうだなアスカ君1日、VRの1日でどれくらいの量が出来る?」
「1日であれば・・・酒樽1つと言ったところですかね?」
「なら決まりだね。こちらが用意できるのは1樽。そしてこっちが要求するのはちゃんとアスカ君達は今回のイベントに協力していると【天下不武】の責任を持って認知させると言う事だ」
「どういうことですか?」
アスカは対価の意味が良く分からずにハルナに訊ねる。
「ああ~アスカ君達は掲示板を見ないのか? 今掲示板でアスカ君とシャルロットさんが参加拒否したことにより中傷するコメントが多く乗っているんだ」
「何ですかそれ!」
シズカは声を荒げメニュー画面を操作し掲示板の内容を確認していく。
「・・・アスカ君! こんな人たちに協力する必要あ有りません! 見捨てましょう!」
シズカの言葉にヨシミが慌てだす。自身でも掲示板を確認し顔を青く曇らせるのであった。
このコメントの多くは江戸所属の者が多い。自分達が何をやっているのか分かっているのか!
ヒデミはメニュー画面を操作してノブタカへとすぐに連絡を取る。
「何をやらせているんですか! せっかく交渉が纏りかけているのに!」
『まっまてヒデミ取りあえず落ち着け! いったい何のことだ!』
「貴方の交渉決裂のメッセージに対し掲示板で彼らを中傷するコメントが多く載せられています! それも関東、江戸方面からです!」
『なっ!? それは本当か? ちょっと待て・・・ああ゛~くそっ! そっちはこちらで対処する! ああ~トウキチにも手伝ってもらう! だからどうにか交渉をしてくれ!』
「・・・了解しました・・・」
ヒデミが通信を切ったのを確認し
「どうやら纏ったようだな?」
ハルナの言葉にヒデミは頷き
「納品は結果が出てからで構いません。1樽お願いします」
その言葉を聞きハルナはアスカへと顔を向けアスカが頷いたのを確認して
「OKそれで良いぞ」
ハルナの言葉を聞きヒデミはほっと一息つき、まだ終わってないとばかりに挨拶もそこそこ孤児院を後にした。




