008話
アスカ達や【六文】、それにタケダ軍が運んだ食糧にも限りはある。そんな食糧不足を補うためにアスカ達は富士のすそ野に広がる森や山に食糧調達に来ていたのである。場所は吉原宿の北・・・そんな中1人落ち込んでいる人物が居たシャルロットである。初めは生き生きと街道近くで狩をしていたのだが・・・手に入れた食材と言えば【焦げた兎肉】【焦げた猪の肉】【炭となった何か】であった。そして極めつけはシャルロットが放つ【火術】が1本の木に燃え移ったことで大慌てである。何とかみんなの協力のもと消化が終わるとシャルロットはハルナに正座させられかなりの時間説教をされるに至る。
シャルロットはそれほど運動神経が悪いわけではない。寧ろ一般の男性より身体能力は高いのだが・・・技術が圧倒的にないのであった。それ故に狩ではいいところが無く落ち込んでいると言う訳なのである。
「あ~お馬さんが居る!」
手綱や鞍などが付けられた人が乗ってない馬へとアイが駆け寄る。
「なっ! バカ!」
その後をシンが慌てて追いすがると木の上から黒い影が下へと落ちる。
「食い物寄こしやがれ! さっさと出さね~と殺しちまうぞ?」
アイは恐怖のあまりその場で崩れ座り込む。一歩一歩アイへと迫る黒い影・・・シンはそんなアイを抱きしめるように庇う。
「ああ゛~もう! 死ね! ドロップアイテム中に食い物があるだろ」
キンッ! 振り下ろされた黒い影の刀が上へと弾かれる。
「ああ゛~ん? ぐふっ!!」
弾かれたことに声を上げた黒い影にアスカの蹴りが炸裂しその場から吹き飛ばす。
「シンッ! 皆の所へ早く!」
「でっでもっ!」
シンは震え動けないアイを抱きしめ背中をさすりながら声を上げる。その間に影がのそりと起き上がる。
「って~な。俺を【葵】のツバサと知って刃向かってんのか?」
アスカはそう告げるツバサを観察すると雰囲気は悪くなっているが良く知る人物であると確認できた。
「はぁ~そこまで落ちぶれているんですか・・・」
「ああ゛~ん? 誰だ? 俺を知って・・・貴様綺羅か! こいつは丁度良い! あの時の礼をたっぷり返してやんぜ!」
駆けだそうとしたツバサの足先に矢が飛来し突き刺さる。
「【ブラックネーム】! アスカから離れなさい!」
更にツバサへ向け【符矢】が飛来しツバサはバックステップで後方へと逃れる。
「外野は邪魔をするな!」
「そうはいかないよ【葵】のツバサ」
アスカの前にハルナが割って入り刀を抜き放ちツバサへと向ける。
「ちっ! 相変わらず女どもの陰に隠れやがって! 男なら正々堂々と勝負しやがれ!」
ツバサはアスカを睨み付け叫ぶ。
「彼はアスカとどういう関係何だ?」
良く分からないといった具合でアイたちに駆け寄ったシャルロットが声を掛ける。
「理不尽ないじめを行っていた主犯格です」
普段からは想像できないような大きな声でシズカが叫ぶ。大まかではあるがシャルロットもカリナたちから事情を聴いている為、それだけでシャルロットは事情を把握する。
シャルロットはアイを抱きかかえ後方へと回るとアスカを見て
問題なさそうね・・・それなら
「アスカ! 彼は【ブラックネーム】! 遠慮することは無い! 魔物と一緒の類だ!」
するとアスカの口元が僅かに笑みを浮かべ
「ふ~・・・ハルナさん、そこ退いてもらえますか?」
「大丈夫なのか?」
ハルナはツバサを見据えたままアスカに聞き返す。
「ええ、現実世界ではないんでやりすぎても問題ありませんから」
「ああ゛~ん? 聞き違いか? やり過ぎるだと! 上等じゃね~か! レベル50の俺にいい度胸だ! 【風林火山】の女退きやがれ!」
ツバサはハルナに体全体を使い退く様に怒鳴りつける。
「はぁ~分かった。存分に叩きのめしてやるがいい」
ハルナは刀を鞘へと納め振り返ったその瞬間ツバサはハルナへと斬りかかる。
「なっ!?」
「ハルナさん危ない!」
「邪魔だってさっきから言ってんだろ! 死んどけや!」
「どこまで愚かなんですか貴方は・・・大切な誰かの為、大切な何かの為に僕はっ!」
アスカの声が聞こえたかと思うとアスカの身体がぶれた様に見えその場から消えると、振り下ろされるツバサの刀の前に一瞬で現れ再びツバサの刀を弾き上げる。だが次に放たれたのは蹴りではなく小太刀で横に切り裂く
「なっ!? いつの間に! うをぉぉぉぉぉ!!」
ツバサの全身から黒いオーラが浮かび上がり、鎧を切り裂いたところでツバサの動きが速くなりその場を脱する。
「はぁ・・・はぁ・・・どこ行きやがった!」
後方へと逃れたはいいが、あまりの速さに視界が付いて来ずアスカの姿を見失う。実際には速さに付いて来れたとしてもアスカの姿を捉えることなどできないのだが・・・
「どこを見ているのですか?」
すぐそばから聞こえたアスカの声に反応するかの如くツバサは刀を振るう。バシュッ! 刀を握った手が手首より切り離され宙を舞う。
「んぎゃぁぁぁ!!! 手が! 俺の手が!!!」
「これで終わりです」
ツバサがアスカの声に振り返ると十字の斬撃の閃光が走りそこでツバサは意識を失うのであった。




