014話
都内某所、5つからなるマンションが立ち並ぶ場所・・・
ここは某政党が集めたプロゲーマーが生活する場所、1つにつき40部屋あり一階に食堂など共用スペースが備えられている。そんなマンションの一つで今1人の少年は無視されていた。
「くそっ! なぜ俺が・・・」
耳を澄ませ聞こえてくる声は
「裏切者が・・・」
「あいつ例の学校のいじめの主犯だった奴だってさ」
「そこまでして自分が一番になりたいのかよ」
少年ツバサは声のする方を睨み付ける。すると全員ツバサから目をそらす。
俺が悪いんじゃない! ドウマの奴が勝手にやったことだ。それにいじめだって彼奴が勝手にやったことだ
確かに食事を取らせない様に仕組んだのは寮長であったのかもしれないが、それを止めずに一緒になって笑っていれば同罪と言えた。
そしてここまで雰囲気が悪くなった原因はタダトラのグループにあるとツバサは考えている。事実彼らが起こしたイベントにより日本サーバーが危機的な状況となったためにスポンサーからの支援が下がり目に見えて食事の質が落ちていたのである。
くそっ! 何で俺だけ
食堂の注文を取るためのパネルを触ったツバサは再び顔を歪める。【うどん】【コロッケ定食】【卵丼】この3つしか表示がされなかった。ツバサは背後からクスリと笑う声がして振り返り睨み付ける。
「さっさと注文してくれよ。後が閊えてんだからさ」
笑いをこらえた顔で告げられたツバサは悔しさに顔を歪めながらも堪え【コロッケ定食】に振れる。
「飯が食えるだけましだよな」
「ああ、気に食わなかったからって食事を取らせないわけじゃないからな」
「あっしってるか? それそいつは直接関係ないらしいんだぜ」
ツバサの背後からひそひそと声が聞こえてくる。ツバサは顔を歪め開いている席へと歩き出す。なぜ反論しなかったかといえばツバサもそれは分かっていたのである。自身が好意を抱く女性がいじめの対象であったアスカに熱を上げていたからに他ならない。だがその女性に言わせればただ可愛らしいアスカを構っていただけなのだが・・・
始めはアスカに対し嫌がらせをするも庇う者たちは居た。そんな彼らを黙らせるためにまず担任と副担任を金の力で味方に引き入れアスカに雑用を押し付けさせた。だがアスカはそれを苦とする出なくやり遂げる。次にとったのがツバサの父親の会社で働く人物の息子を引き入れる。これが寮長である。そしてそれらを使いながら金の力でアスカを庇う者たちへと圧力をかけ始める。こういった経緯をたどり発覚するまでの2年間いじめ続けた。
くそっ! 全部俺が悪いんじゃない! 周りが勝手に・・・
「おいっ呼ばれてるぜ」
ツバサは顔を上げるとそこにはマサキの顔があった。
「【コロッケ定食】頼んだのツバサだろ?」
「・・・ああ」
ツバサはそこから逃げるようにカウンターへと食事を取りに行く。
「マサキ良くあいつに話しかけられるな」
「ん? そうか? まっ過去がどうであれ今は同じグループなわけだしな」
「俺には無理だよマサキ・・・」
「今後次第だな。このグループに必要ないとなれば・・・」
マサキは先を言わなかったが皆理解していた。今後の行動次第でここから追い出されると・・・
こう見るとタダトラ達のグループはまだましなのかもしれない。グループでまとまって行動していることから今後の展開次第でスポンサーも見捨てると言うところまではいかないだろう。だがツバサはグループに内緒でドウマと関わり、更に対応していたプレイヤー達の邪魔をし、一緒に付いて来た仲間を裏切った形なのだから・・・
ツバサは食事を受け取りマサキたちとは離れた隅へと移り食べ始める。
どこで間違えた、いやそもそも俺は間違えたのか?
食事をかき込むように大急ぎで取り、トレイを洗い場へと投げ込むと足早に自室へと戻る。
やってやる! 俺はどんな手を使ってもトップに立ってやる
【VRカプセル】を起動させ中へと入ると静かに目を閉じた。
「リンクスタート」
再び目を覚ましたツバサは周囲を確認する。そこは薄暗い場所であり【タイラ】の本拠地である【黄泉の国】
「機嫌が悪そうだなツバサ」
急に声を掛けられ咄嗟に睨み付ける。
「お~怖っ」
そこに居たのは【葵】のギルドマスタータダトラであった。
「タダトラか・・・何でもない」
「クククック、大方他のグループの連中にハブにされてんだろ?」
タダトラの何気ない言葉にツバサは更に睨み付ける。
「・・・当たらずともってとこか。まあ良い。これから動くぜ! まずはレベル上げだ」
先ごろのアップデートでレベルの上限が45から50に上がっている為の言葉である。そしてここ【黄泉の国】では自分達よりレベルが上の【亡者】たちを相手にしている為に他と違い上がりやすいのである。具体的に言えば【亡者】はレベルが50と高いのだが、その実力はレベル30後半程度の力しかないのである。それも倒した傍から同じような個体がすぐにリポップするため効率の良い狩場となっていた。




