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オールド・タイム・ワールド・リンク(仮)  作者: あおい聖
【富士の山道】
28/87

012話

 東京某所、大きく立ち並ぶビル群から離れ、所々ひび割れたり、窓ガラスが幾つも割れている。昼間でも不気味なそんな場所・・・ここは新都市開発から取り残されたそんな場所・・・


 だがそこに人が居ないわけではなかった。そこに住む多くの人々は現実世界で弾かれた者が大半であった。そんな場所で古びだ教会があった。


 日本人である黒髪とは程多い色をした少年少女が肩を寄せ合い済む場所。そこへこことは似つかわしくない黒塗りの高級車が横付けし止まっていた。



「本当にその【OWL】ってゲームに参加すれば、食い物やお金をくれんだな」



 建物の前でボロボロのジーンズをはき、深く帽子をかぶった者が声を上げる。



「勿論だとも。だがそれには・・・」



「世界戦の代表選手になれってんだろ?」



 黒塗りのサングラスをかけ顔を隠した黒いスーツに身を包んだ大柄な男の言葉に帽子の者は言葉をかぶせ分かっていると言わんばかりに訊ねる。



「そうだ。だが、それまでの間に実力を示す必要があるがな」



「フンッ! 文明になれた表の人間にあたし等が後れを取るとでも?」



「それならば良いがな・・・まぁ丁度良く突発的な高レベルイベントが現在発生している」



「そこで実力を示せってんだろ? だがあたし等は【VRカプセル】何か持っちゃいね~ぜ」



「1時間後車を寄こす。それで貴様らの仮住まいへと運んでやる。食事などもこちらが用意しよう」



 帽子をかぶった者の後ろに居る子供たちが互いの顔を見合わせ笑みを浮かべる。



「しかし、結果が残せなければ・・・その身体で払ってもらうこととなる」



 男の言う身体と言うのは臓器の事であり、この話からも男が所属する組織がまともではないことを意味していた。



「分かってる。その場合はあたし等上の者からだぜ」



「契約成立と言う事だな。では私は色々と手配をせねばならない」



「早めに頼むぜ」



「分かっている」



 黒いスーツ姿の男は高級車へと乗り込む。



「出せ」



 古びた教会から高級車が離れて行く。その背後では飛び跳ね喜ぶ子供たちの姿があった。



「あんなに喜んで・・・自分達がモルモットとして集められるとも知らずに・・・」



 運転席の男が呟く。



「フッ食事ができ、安全に寝る場所さえあればガキどもは幸せなんだろ~さ」



 黒いスーツ姿の男はミラー越しに子供たちを見て吐き捨てる。






「ね~ちゃん! やったな」



 子供たちの中では帽子をかぶった者の次に歳が上の少年が帽子をかぶった者に向かって声を掛ける。帽子をかぶった者は帽子を手に取り頭から外す。するとそこから綺麗な金色の長い髪が風に靡きながらあらわとなる。



「シン、あいつらは多分非合法な組織だ」



 少女の言葉にシンと呼ばれた先ほどの少年が頷く。



「あたし等がこいつ等を守るんだ良いな?」



 少女はそう言いシンの頭に手を置き撫でる。



「分かってるってシャルねぇ!」



 この男のような恰好をした少女は名をシャルロットと言い、元々はこの教会に居た神父の娘であった、それまでも何とか食つなぐ程度であったのだが、その神父が1年前に亡くなることによって事態は急変した。その日その日食べることにも困るくらい困窮し始めたのである。しかしそんな中でも1年間食つなぐことが出来たのはシャルロットを初めとした年長者達の身体能力が高く、パンなどを盗むことにより食いつないでいたのである。


 そんな彼女たちに目を付けたのが先ほどの者たちと言う訳である。ここ日本では【OWL】の世界で都道府県ランキング上位者に報奨金が出る制度が有るのである。【OWL】の世界が国の威信がかかっている以上仕方がないことと言えたのだが、そこに付け込む闇の住人(資金繰りに困るヤクザやマフィア)たちも居るのが現実であったのだ。






 都内の某所、元は宿泊施設であったであろう建物へと彼女たちは連れてこられ、食事やお風呂を与えられ、小さな者たちが寝静まった頃・・・年長者達はその施設にある地下室へと連れてこられていた。そこには幾つもの【VRカプセル】が並べられており、その横に何やら別の機器が取り付けられ異様な光景を見せていた。



「さあ、仕事の時間だ。くれぐれも彼方で犯罪何かするんじゃないぞ」



 この施設の事がばれるといけないと目の前の男は念を押す。言われた彼女たちも自分達の状況を理解している為にゴクリと息をのむ。



「この者たちの指示に従いそれぞれ決められたカプセルに入れ」



 男の後ろには白衣を着た怪しい集団が居て彼女たちを見て口端を釣り上げにやける。彼女たちは男たちの指示に従い【VRカプセル】へと入って行く。



「・・・男かと思ったら女性だったか・・・」



 【VRカプセル】に横たわりスキャニングを受けているシャルロットを見て男は呟く。



「全6名準備完了しました」



 1人の白衣の男から声が上がる。



「良し、【VRブースター】を起動させろ!」



 【VRブースター】特殊波を脳に浴びせ身体的リミッターを解除する特殊装置。それにより人体への影響が大きいために禁止となっている違法機器である。

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