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オールド・タイム・ワールド・リンク(仮)  作者: あおい聖
【富士の山道】
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008話

 富士の山道、五合目宿場、六合目側門前


 1人の少年が転げて襲ってくる【アイアン・ゴーレム】の群れを相手に孤軍奮闘とした形で迎撃を行っていた。



「あら? あなたは参加しないのですか?」



 門を背に寄りかかり少年アスカの戦いぶりを見ていたタケルにシズネが声を掛ける。



「あやつ1人で十分なのじゃが・・・」



 金属のぶつかり合う音にタケルは耳を澄ます。



「アスカの腕に得物が付いていっとらんわ」



「そいつは俺に対する嫌味か?」



 2本の小太刀を手にするトウショウサイが声を上げた。



「ヌシにしては遅かったようだのうゲンジロウ」



 トウショウサイは小太刀を掲げ



「魔銀が置いてあったのでな。こいつを仕上げるのにここの炉で苦労したんだよ」



「フンッ初めから用意し解けばその苦労も戦で済んだ物を・・・」



 トウショウサイはタケルの言葉を流し前へと出ると



「坊主!! こいつを使え!」



 2本の小太刀がアスカへ向け投げられる。



「え!? わっ!」



 ガギィ~~ンと鈍い音と共にアスカの手に持つ小太刀が砕け散る。



「急に声など掛け追って馬鹿もんが」



 タケルは一瞬にしてアスカの前へと姿を現し



「暫し儂が抑える。その間にしたくせい」



 タケルへと襲い掛かる【アイアン・ゴーレム】が突然細切れに飛び散る。



「あっはい」



 アスカは放り投げられた2振りの小太刀へと飛び上がり掴むとくるりと回り着地する。ドシャ・・・いつの間にかアスカの背に付いていた小太刀が鞘ごと地面へと落ちる。アスカの方へと視線を戻せば新しい小太刀がアスカの背に備え付けられていた。



「そいつは魔銀で出来てる! 存分に扱え!」



 背後から聞こえてくるトウショウサイの声にアスカは頷き前を向く



「じゃ残りは任せたぞ」



 すれ違いざまにタケルは軽くアスカの肩を叩き元の門前へと移動した。



「まずは・・・はっ!」



 抜刀の構えから一閃・・・豆腐を斬るかのように手ごたえ無く滑らかな切り口と共に【アイアン・ゴーレム】が上下に切り裂かれる。



「凄い・・・これなら」



 更にもう一本の小太刀へと手を添えると襲い来る【アイアン・ゴーレム】をヒラリとかわすと同時に小太刀を抜き放ち切り捨てる。


 アスカは【アイアン・ゴーレム】達を障害物でも躱すかの如くヒラリ、ヒラリと躱す。勿論躱す傍から小太刀が振るわれ【アイアン・ゴーレム】は切り裂かれ崩れ落ちる。アスカの技量に耐えうるその小太刀を得たことで最早【アイアン・ゴーレム】などはアスカにとって雑魚にも等しい存在になり果てていた。山道であり足場が悪いにもかかわらずアスカは優雅に舞でも踊るかのように舞う・・・それは日が暮れるまで続き最早山道に【アイアン・ゴーレム】が居なくなってしまったのではないかと言うような大量の鉄の塊が門前に小山となり積み上げられていた。






 江戸から南東にある上総の国へと続く街道


 そこを必死に逃げる一団があった。



「ツバサ! 本当にこれで良かったのか?」



「いいに決まってるだろ! それともマサキに付き合って捕まった方が良かったのか?」



 ツバサを初めとした【葵】の一団である。



「そうは言わね~けど・・・」



「もう、俺たち【葵】は引き返せないとこまで来てるんだよ!」



 怒鳴りつけるツバサに1人の少年が声を上げる。



「でもツバサ君。僕たちスポンサーから怒られないかな?」



「その辺はタダトラが交渉しているだろ? 要は他国の奴らより強くなればいいとか言ってさ」



 ツバサの言葉に少年は笑みをつくる。



「そっそうだよね。タダトラさんならそれくらいやってるよね」



 他に追従するメンバーもツバサの言葉にほっと一息つく。



「!? 皆止まれ!」



 突然ツバサが声を上げる。



「どっどうしたのツバサ君?」



 ツバサは答えることなく街道にある木の影を睨み付ける



「出てきやがれ! 出てこないなら・・・」



「フォフォフォフォ、どうも【葵】はせっかちでいかぬのう」



 影がゆらりとぶれ、木も下にドウマが姿を現した。



「相変わらず気味の悪い爺さんだな」



「だっ誰なのツバサ君」



「知らぬ顔も居るのう・・・どれ名乗るとするか・・・【アシヤ】のドウマじゃ」



 ツバサの背後に居る者たちを見渡しニヤリと口端を釣り上げ名乗りを上げる。不気味な黒いオーラを放ちながら威圧する。



「「「ひっ!」」」



 数人が悲鳴を上げその場に座り込む



「やめてくれないか爺さん。こいつらはまだあんたの威圧に耐えられないんだから・・・」



「フォフォフォフォ、これは異なことを言う。主たちに選択権などなかろうに・・・」



 それまで余裕であったツバサの頬を一滴の汗が流れる。



「冗談・・・冗談だよな爺さん?」



「冗談? 儂はその手の話は嫌いでな・・・役立たん者を助けるいわれなどないわ」



 いつの間にか取り出した符が辺りを舞っている。



「心弱き者よ、死に戻るが良い」



 符が黒色に燃え上がり【葵】のメンバーを襲う。



「おいっ! 話が違うじゃないか! コレを持って来れば匿ってくれるっていうから・・・」



「ヌシはな・・・その他に関しては約束などしてはおらぬよ」



 ツバサ以外のメンバーが黒い炎に飲み込まれ更に燃え上がる。



「ツ・・・バ・・・サ君・・・あ・・・づい・・・あづいよぉぉぉぉ!!!」



 ツバサへと助けを求める少年の手を・・・ツバサは顔をしかめその光景から目を背ける。

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