004話
【封印殿】境内
タケダの旗、風林火山の旗が靡く中、2m50はあろうかと言う大男が暴れまわっていた。
「ちぃっ! 足軽兵距離を取れ! 弓兵はそれを援護しろ! 奴は俺が抑える!」
トラオは大きな槍を握る閉め大男・・・【死鬼】【豪鬼】へと突撃する。【豪鬼】は手を突きだしトラオの繰り出す槍を受け止める。
「くっ! 嘘だろ?・・・!?」
いつの間にか【豪鬼】の手にはゴツイ突起の付いたかの棒を握っていた。
「くそっ!」
咄嗟に槍を引き後ろへと飛ぶ ブヲォン!! 鈍い風切り音と共に振るわれた金棒はトラオの槍をへし折りながらなおもトラオを襲い吹き飛ばす。
「ヤマガタ様!!!」
「くっ来るなっ!!」
ブヲォン!! 再び金棒を振るいトラオを守ろうと立ちはだかった足軽兵を粉々に吹き飛ばし辺りに肉編を散らす。
更にゆっくりとではあるがトラオへと迫る。すると境内の入り口付近にダンダラ模様の羽織を着こんだ青年が顔を出し
「我ソウシはこれより一刃の刃とならん」
【新選組】所属の青年ソウシは宣言すると同時に倒れ込むように前のめりになったかと思うと目にも止まらぬ速さで【豪鬼】へと迫っていた。
「奥義【天昇烈破】」
無数の突きが【豪鬼】へと繰り出され、初めて【豪鬼】の顔が苦痛に歪み身体に突きで出来た傷が無数に現れる。
「これでもダメですか・・・」
ソウシは刀を鞘へと仕舞い
「【天昇十字閃】」
抜刀の構えから横薙ぎの一閃、その勢いそのままに回転し上段から縦に刀を振り下ろし十字を描く・・・これが瞬きをする以上の刹那の時間で繰り出される【天昇流刀法術】最速の連撃である。
確かな手ごたえと共に【豪鬼】の左腕が宙を舞う・・・咄嗟に【豪鬼】は左腕を盾にしていたのである。そして大きな叫び声ともいえる声を上げ金棒がソウシへと振り下ろされる。
「だからまだ君は甘いと言うのだよソウシ君」
刀を水平にして右手を添えるようにダンダラ模様の細目の鋭い眼光をした男が金棒を弾く
「イチカ先輩!」
ソウシから声が上がる。
「分かっているさ」
金棒を弾いたイチカに向け黒い影が物凄い速さで迫る。イチカは突きの体制のままそれが横薙ぎへと変化を見せた。金属が激しくぶつかる音が鳴り響き、黒い影は後方へ大きく飛びのく。
「【タイラ】の者ですね?」
イチカは鋭く影を見据え問いかける。
「如何にも、我は【早鬼】。【タイラ】三巨頭が1人【早鬼】。次は必ずその首もらい受ける」
そう告げるとまるで霧の様にその場から消える。イチカとソウシは警戒し周囲を確認すると【豪鬼】の姿まで消えていた。
【封印殿】封印の祭壇
2つの影が霧の用に現れ人型を取る。
「フォフォフォフォ、手痛くやられおったようじゃな」
「良いから貴様は作業を続けろ!」
烏帽子をかぶる【死鬼】・・・三巨頭の1人【知鬼】と呼ばれる男である。するとパリ~ンと何かが割れる音が聞こえる。
「ふんっもう封印は解けたわい」
ドウマは不気味に微笑みそう告げる。
「何も起こらんではないか」
「フォフォフォフォ、未熟じゃのう? ここは封印の1つにすぎぬよ。丘の封印はヌシたちの首領が向かっておるわ」
「ふんっ! それくらい知っているさ!」
「なら長居は無用じゃな」
ドウマは【豪鬼】の斬られた腕を見て呟く。
「確かに。最強の強度を誇る【豪鬼】の腕を切り飛ばす者が居るとなると足手まといを連れては分が悪いか・・・」
「フォフォフォフォ、自身で理解しておるとは殊勝じゃのう?」
【知鬼】は怒気を帯び
「貴様の事だろうが!!」
「フォフォフォフォ、そうかのう? 儂はここらで帰らせてもらうわい」
そう言うとドウマの身体が一瞬でその場から掻き消える。
「ちっ! 【転移術】か! 【豪鬼】【早鬼】退いてキヨタツ様と合流する」
2人は頷き次の瞬間には黒い霧となりその場から消える。
この夜から下総の国には首なしの武者が目撃され始める。己の首を求めるかのように・・・
三河を進む神輿の中
「・・・ズズズ・・・!?・・・ズズズ・・・」
今の感じは・・・どうやら封印が解かれてしもうた用じゃな・・・
瞳をつぶったままの少女シキノは魔力による揺らぎを感じ結論を導き出す。
肉体が首を求め彷徨うか・・・後手の回っておるのう。しかし首塚は守り切らねば・・・
シキノは小窓を手探りで開ける。
「これイッキュウ」
「何ですか~シキノ様~」
仔馬に乗り巧みに操りながら少年イッキュウが神輿の横へと着ける。
「急がせい。肉体の封印が解かれてしもうた」
イッキュウの瞳が見開き
「至急伝えてまいります」
イッキュウは手綱を振るい仔馬を先頭へと走らせる。
「間に合えばよいのだがのう・・・」
シキノ一行が何故このように地道に進んでいるかといえば、それには訳があった。書類を通し、いざ【転移門】を使おうとすると関東一帯が選択できなかったのである。そのために護衛などの手配や道中にある各領地での宿の手配と時間を取られ【封印殿】の封印解除を許してしまっているのであったのだ。




