002話
【富士吉田】ここは甲斐の国から南東に行けば駿河の国を抜け相模の国へと入る。相模の国へと入る前に【富士山】のすそ野に沿って進めば相模の国の中心地へと続く街道に出る。ここはそんな中継地の用に立てられた城下町である。
それ故に【富士の山道】【富士の樹海】を目指すプレイヤーの多くはここに宿をとり休んだのちにそれぞれの地へと出発する。
アスカ達は城門を超え城下町へと入る。
「まずは宿をとらないと・・・」
アスカはそう呟き周辺の店を覗く
「あら? 私達の屋敷が有るのですからそちらに止ると良いわ」
シズネが自分達の持つ屋敷へと止まればいいと提案しその提案にカリナたちが賛同する。
「はぁ、分かりました。それではお婆様案内をよろしくお願いします」
「ウフフ、案内なんか必要ありませんよ。私達の屋敷は・・・ほらあそこに見えるお城ですから」
「「「・・・」」」
シズネ指さす方向には確かに城が見える。
「あの人が指南役に付いた時にハルトラさんから頂いたのよ」
シズネの言葉を確かめるようにアスカはタケルへと顔を向けるとタケルはニヤリと口端を上げ
「なに、代官に任せっきりじゃがここ周辺は儂の領地じゃ」
「「「・・・」」」
再びアスカ達は言葉を失った。
「こんなんで驚いてちゃあ心臓が幾つあったって足りね~ぞ? この剣術馬鹿に鍛えられたタケダ兵は今じゃタケダ最強にまでなってんだから・・・」
「当たり前じゃ。国境を守る兵士が弱くてどうする。それにまだまだじゃよ」
城へと向かう道中でやけに人々が頭を下げると思ったら・・・これはかなりの事をやらかしている恐れがありますね・・・
アスカは心の中で覚悟を決め馬車を走らせる。
下総の国手前にある相模の国【江戸】
何も知らないプレイヤーが今日も衛兵に追いかけられている。
「なっなんで俺が追い駆けられなきゃならないんだ!」
少年から青年の丁度中間、年齢的に言えばアスカと同じ歳くらいであろう少年が後ろを振り向き叫ぶ。
「貴様が所属する【葵】が国に反旗を翻したのだ! そのメンバーである貴様が知らぬわけあるまい!」
「知らね~!! そんな事知るか!!」
叫びながらも少年には思い当たる節があった。
タダトラさんが言っていた領主戦争にかこつけ【白虎隊】を叩くと言うのが多分関係してんだろ~が・・・反逆者として追われるなんて聞いてね~よ!!!
それでも逃げる少年はいつの間にか袋小路に追い詰められる。
「もはや逃げられん! 観念して縛に付け!!」
棒が一斉に少年へと向けられる。
「だから俺は知らないと言っているだろうが!!!」
少年は周囲へと怒鳴りつける。
「貴様とて幹部の1人であろう! 知らぬではすまされぬわ!! 掛かれ!」
一斉に衛兵たちが間合いを詰めてくる。ジリ・・・ジリ・・・と・・・
そんな衛兵と少年の間に何かが投げ込まれモクモクと煙を放つ
「くっ! 煙玉だと!? 他にもメンバーが潜んでいたのか!」
「ツバサ! 今のうちにこっちへ!」
「にっ逃がすな!」
パタンッどこかで何かが閉じる音が聞こえる。
しばらくして煙が有れるが追い詰めた少年の姿は底にも見当たらない
「探せ! 近くに隠し扉があるはずだ! 反逆者共を逃がしてはならぬぞ!!」
「「「はっはい!!」」」
衛兵たちは体勢を立て直し周囲を棒で叩いたり突っついたりを繰り返す。
「くそっ! こちらからは開かない仕掛けだとでもいうのか! 町全体に警戒態勢を取るように伝えろ! 決して外に逃がしてはならぬ!!」
その命を聞いた1人の衛兵が路地を出て駆けだす。残った衛兵たちは周囲にある家へと調査に入るが消えた少年の足取りを掴むには至っていなかった。
江戸城下町地下
下水道であろうかその配管の通った場所を3人の人影が駆ける。その後ろについて行くように先ほどの少年が駆ける。
「どうなってんだ」
「ツバサ、説明は後でする。今は黙って付いて来い」
梯子を昇るとそこは古井戸のようであり隠された様に設置されていた。
「良し、ここに居ればしばらくは大丈夫だろう」
「それでここは何処なんだマサキ」
黒ずくめの男は顔にまかれた布を取る。それなりの顔立ちの良い鋭い目つきの顔が出てくる。
「ここはマサカド神社。【葵】残存プレイヤーの借りの拠点だ」
「だからどうしてお尋ね者になっている!」
顔を赤らめ怒鳴りつけるツバサ
「簡単に言うと例の【白虎隊】襲撃作戦が原因だ」
「だから! それでどうして追われる!」
「現実世界での犯罪者にはなっていない」
「そんなのは計画の段階でGMから了承をっとっているだろうが!」
するとマサキは顔をしかめ
「我々が組んだ相手が悪かったとしか言えん」
「どこと組んだんだよ!」
マサキは言おうか言うまいか躊躇を見せ、言う事を決め口を開く
「【アシヤ】・・・その【アシヤ】が今回の件の黒幕じゃなかった・・・」
「はぁ? まるっきり黒じゃないか!」
「まぁまて、その【アシヤ】が組んでいたのがもっと悪いって言っているだろ?」
ツバサはゴクリと息をのむ。
「・・・その相手ってのが【タイラ】だったんだよ」
ツバサの口は顎が外れんばかりに開かれた。




