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8話

お気に入り登録、ブックマーク登録、ありがとうございます!

実は今日気づきました…ゴメンなさい。

これからもよろしくです!

「う……ん、はぁ、サーラ、苦しいわ」

「あいにく俺はサーラという名前じゃないんだが」


 ハッと気づいて体を動かそうとしたが、両手首を縛られ、更にはベッドに括りつけられたまま寝かされていた。しかも、サーラ渾身のミイラボディが全解除されている。


「きゃあーーーーっ!」


 腕で胸を隠そうとしても、拘束されているので隠すこともできない。人前で、しかも男性の前で胸を晒すなんて信じられない。パニック状態で泣きながら懇願する。


「お願い、解いてよぅ、嫌だこんな格好……」

「お前が全部吐けばすぐに解放してやるよ、しっかし隠すようなモンか?」


 そう言いながら、私の胸を鷲掴みにして揉んでくる。ちょっ、な、何すんのよ! 失礼でしょ! 自分でだってそんなことしたことないのにっ!


「ふざけんなっ! ドスケベの変態めっ。人の胸、気安く揉むんじゃないわよっ!」

「へぇ、抵抗するんだ。お前生意気だな、こんな格好で俺に命令とかするんだ。ほぉ、面白い」


 へ? プライド刺激した? だってこんな事するのって変態だけじゃないの? 団長の目が半分座ってるし、黒い笑顔になってるんですけど……


「ご……めん、ごめんなさい。命令しませんから解放してください。ホントにこんな格好は嫌ですって!」

「ふん、ならこれでどうだ? 俺がその貧相なもの、見なきゃいいんだろ」


 貧相なものって……ホンっト失礼なヤツ。

 まあ、紐を解いてくれたのには感謝だけど。

 ようやく両手首の拘束が外れたと思ったら、それが団長の両手に代わっただけで、基本拘束されてるままだ。しかーもー、覆い被さってのご対面ですよ。顔が近いっ、近過ぎるってばっ! 確かに胸は隠れたけど貞操の危機はほぼ一緒。

 もー、いい加減許してってば。私悪くないもん。

 ……やっぱりちょっと悪かったかもしれない、いや、上司騙した段階でかなり悪いのか?


 とりあえずダメ元で自己紹介だけしておこう。信用されるかされないかは二の次にして。


「私はニコル・テイラード、二十歳。ニコラスの二つ上の姉です。スパイでも暗殺者でもありません、お願いですから離して」

「姉、ねぇ。潜り込んだ目的を言え」

「潜り込むなんて……身がわりですよ、身がわり」

「身がわりだと?」


 こうなったら処罰覚悟で正直に話すしかない。軽くため息をつきながら、喋り始めた。


 近衛での勤務中、第二王女から気に入られてしまいプロポーズされたが断ったこと。プロポーズを断ってる最中に婚約者から浮気と勘違いされて逃げられたこと。婚約者を連れ戻すに必要なギリギリの期間、任務放棄を誤魔化すために身がわりになったこと。


 一気に喋ったら、声がかすれて少し咳き込んだ。団長か水差しから水を汲んでくれたので、ありがたく頂戴する。

 体にシーツを巻きつけて胸ガードするのは忘れずにやった。


「バレると思わなかったのか?」

「一週間ですし、近衛や地方と違って、お守り騎士団ですからね、団員との接触を極力減らせば乗り切れると思ったんです。だって仕事は巡回だけで夜勤なし。目立たず騒がずでいけると踏んだんです。まさか最後にバレるとは思いませんでしたよ」


 団長は呆れて軽く首を振りながら、私が飲みかけていたグラスをひょいっと取り、残り全部を飲み干してからこう言った。


「馬鹿者、俺は最初っからニセモノだと気づいてた。だいたい今まで近衛で勤務していたヤツが俺の顔知らないってあり得ないだろが。それに、お前が誰か判らなかったから名前なんぞ一度も呼んでないしな」


 え、そうだった? あら、確かに『お前』とは呼ばれ続けたけれど、テイラードとは呼ばれてないな。でも何で今まで放置されてたのかしら?

 尋ねてみたら、私の目的がはっきりと判かるまでは騎士団を動かすことが出来なかったんだそうだ。


「外国と繋がってるなら、どの国か確定してからじゃないと次の手が打てなかったし、国内の問題だったら繋がってる貴族を炙りださないと、トカゲの尻尾切りになっちまうだろ? だからスレイと話し合って、お前を泳がせることにした」


 何と! スレイ君まで知ってたんかい。もしかしてラングダウン公爵からお父様への問い合わせって、国内不穏分子の調査だったのか! はあ……とガックリ肩を落としてため息をついていたら「どうした?」と問われた。


「せっかく、初めて見合いの申し込みが来たと思ってたんですよ、ラングダウン公爵家から。私、生まれてから今まで、個人的にどなたかとお付き合いする、とかいうこともありませんでしたもの」

「なるほど、箱入りか。だからあれほどお前に関する情報が少なかったのか。ずいぶん念入りに隠されてたんだな。お前の家、ウチの騎士団向きだわ」


 感心した顔を向けてしみじみと言われる。

 とりあえず、今の中途半端な入れ替わりだと、詳しく話しを聞くにも都合が悪いので、今日の夕方に団の執務室に、ニコルとして来るように、だそうだ。


 ん? という顔をしたら、女だとわかっているのに男の格好をされると、違和感しか感じられない、と説明された。


 ちなみに、気を失ったのが深夜だったので、あっという間に日付けが変わってしまい、結局お泊まりになってしまったらしい。


 あーあ、人生初のお泊まりが婚約者でもない、このクズ男と一緒ってとこがまた悲しい。

 何か私の人生がどんどん変な方向に流されてる気がする。ホントこの人と出会ってからというもの、ロクなこと起きてないよ。

 こうなったら、団長に不満をぶつけてやるわっ!


 テイラード家はお母様が私の結婚相手を見極めることになってるってことやら、いつまでたっても恋一つ出来ないこととか、男だったら弟より騎士としての技術も上なんだとか、女だからって騎士団のような仕事をさせてもらえないだとか、何で女なんかに産まれてきちゃったんだとか……最後は涙目になりながら愚痴をこぼした。


 ずっと話しを聞いてくれていた団長が、だんだん同情的になってきて、私の髪の毛をゆっくりと梳いてくれる。その手が温かくて優しくて、余計に涙が止まらない。


 肩を震わせながら涙を流していると、髪を撫でてくれているのとは反対側の手を背中に回し、ためらいがちにギュッと抱きしめてくれた。


 何とか宥めようと頑張ってくれてるのがわかり、ちょっとだけ嬉しくなった。戸惑い混じりの声と仕草を見ていると、今までとは違う優しさと安心感に変わっていくのを心のどこかで感じた。


「なあ、泣き止めよ。どうすれば泣き止むんだ? お前、女なんかって思ってるかも知れねぇけど、女の方が強えんだぞ。ウチの母上だって父上をアゴで使ってんだし。仕事のことだって騎士団に拘る必要もないと思うがな。自分が気づいてないだけで、お前が必要とされる仕事もちゃんとあるんだから。男、ってか俺なんか、妙なしがらみとかでガチガチだぞ? 絶対女の方がいいって」


 それに、と私の頬を両手で支え「女は何処もかしこも柔らかい」と呟きながら瞼にキスして涙を舐めとった。


 びっくりして目を見開いているうちに、今度は唇にキスされた。最初は軽く、徐々に深くなるキスに、何が起きているのか理解不能。まるで全身に電気が走ったかのような衝撃を受けた。


 今日何度目かのパニック状態をまたまた経験し、更には人生で二度目となる失神を味わう。


 団長、アンタ私に何するんだいっ……

一応11話で完結予定〜

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