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幽霊少女と俺の平和な同居生活  作者: 海 きいろ
第一章 幽霊少女と俺の平和な同居生活編
8/26

第8話 包帯

 


 少女の体はとても軽かった。

 実体が無いのだから当たり前といえばそこまでなのだが。だから目と鼻の先にある自宅まで抱えて歩くのに数分もかからなかった。


 アパートの二階の再奥が天羽の部屋だ。

 一人暮らしで物も多くないので間取りは1DK。部屋の特徴はこれといってない。リビングにはテレビと机。座布団が1枚。読みかけの雑誌に適当に散らばる衣服。綺麗とは言えないが汚いというわけでもない。男の一人暮らしにはよくある部屋だ。



 天羽は肩に担いだ少女をちらりと見るが目を覚ます気配は全く無い。勢いで連れてきてしまったためこの後どうするか全く考えていなかった。


 とりあえず少女をリビングに寝かせる。



 少女は高校生くらいだろうか。黒髪に制服のような服を着ている。服は破れて汚れて酷い有り様だ。これではどこの学校かも分からない。靴は履いていない。足は黒のハイソックスだ。よく見るとうさぎ柄のワンポイントが控え目に刺繍(ししゅう)されている。


 そこであることに気づく。



 体が透き通って、、輝いているみたいだ、、。



 明るい部屋で見る少女は暗闇で見るのとは違い体が更に透き通って見えた。それに微かに輝いているようにも見える。


 それにしても、、



「酷いな、、、」



 数えきれないほどの切り傷、刺し傷、打撲の跡ーーー。

 何があったかは分からないが、この傷は自分では出来ない傷だ。つまりは誰かに襲われた傷。


 この状態で現れたということは亡くなったのはこの傷が原因なんだろう。



「ん?、、なんだこれ?」



 少女の体を伝った血液は床に落ちてきらきらと空気中に散っていた。流れた先から赤い光が小さく舞う。


 きらきら、きらきらとまるで光が空に吸い込まれるように少し上昇しては溶けるように消える。


 天羽はその様子にしばらく目を奪われ、はたと我にかえる。


「とりあえず、、、手当てか?」


 幽霊に手当てが必要だとは思えないが、これだけ血が蒸発していて良いとは思えない。



 だけど、既にこいつは死んでるわけだし、、、。

 意味無いっちゃ、意味無いんだけど、、。



 天羽は少女をそこに寝かせたまましばし自宅を引っ掻きまわす。探し回ること数分。



「あった!あった!」



 探していたのは昔使った包帯の残りだ。まだ一回分くらいは残っていた。


 天羽はリビングに戻り気を失っている少女の腕をとる。




「お、成功」



 包帯は巻けた。もしかしたらすり抜けるのではないかと考えていたが、その心配は無用だといわんばかりに包帯はしっかりと少女の腕を包んでいる。血の蒸発もぴたりと無くなった。



「なんとかなりそうだな」



 天羽は少女の体に包帯を巻きつけていった。











 空はすっかり明るくなり、窓からは太陽の明かりが射し込んでいた。

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