第17話 初めてのお見舞い ( 前編 )
「天羽さん、、具合どうですか?やっぱり病院に行った方が、、」
花千代が寝室のドアを少し開けベッドに横になっている俺を心配そうに見ている。
俺は時折訪れる言い様のない腹痛に体を丸めて耐えていた。悶絶なんて言葉を身をもって体験する日が来ようとは思ってもみなかった。今までもそれなりに腹を壊したことはあったがそれが如何に生温いものであったのかよく分かる。
、、食あたりって出せば治るはずなんだけど。
しかも出しても出しても一向に良くならない。
「大丈夫、、ただの食あたりだし、、ッうぐ、、」
花千代に応えようと体勢を変えたところを強烈な一撃が襲う。
「ゔぅ、、」
天羽のうめき声に花千代は涙を滲ませる。原因がはっきりしすぎているだけに罪の意識は大きい。
「、、うぅっ、天羽さん、、私のせいでごめんなさい」
朝食現場は地獄だった。天羽は味噌汁を口にした瞬間卒倒した。
自分はなんてものを作ったのだ。しかもそれを天羽に食べさせてしまった。
花千代の頭の中には後悔の念が渦巻いていた。
、、、天羽さん、食べられないって言ったのに。私があんな態度とったから、、。
今なら分かる。本当に食べられないものだった。否、食べてはいけないものだった。それを分かっていたが無理をして口にした。
、、、気を使ったんだ。
味噌汁もまともに作れない。しかも不味いどころじゃない。最悪だ。
ずーんと暗くなる花千代。天羽は一日腹を壊していたが、花千代もまたどうしようもなく落ち込んでいた。
ピンポーン、、、
玄関のベルが鳴る。時刻は既に日を跨ごうとしていた。
こんな時間に誰だろう。郵便屋さんじゃない、、よね。天羽さんのお客さんかな、、?
天羽は気づいていないのかそれどころではないのか動く様子は無い。
花千代はどうしたものかと悩んだ末とりあえず誰が来たのか確認することにした。
「、、、!?」
覗き穴から見えたのはいかにも怪しげな格好をした男だった。白い着物を着て首や腕に数珠を巻きつけている。
あれは、お札、、?
この人お札を体中に貼り付けてる、、!?
まさかの客人に花千代はどうすれば良いのか分からない。すると目の前の男がずいっと覗き穴を覗きこんだ。花千代は小さく悲鳴をあげその場から飛び退いた。あちらからは見えないはずだが一瞬目と目があったような気がした。
「出てきませんねぇ。、、、仕様がないですね、この手は使いたくなかったのですが前田課長に顔を見て来いと言われたからには会わないといけませんからね。さてさて今会いに行きますよ〜幽霊さん。ぬふふ、間違いました天羽氏〜」
男は鞄の中から細い工具をいくつか取り出すと鍵穴に差し込んだ。カチャカチャと金属同士が音を立てる。
、、、っ嘘!この人入ってくる、、!?
花千代は青ざめた。男はどうやら天羽の知り合いのようだがそれにしても怪しすぎる。このまま入れていいものか、迷っているうちにガチャンと鍵の開く音がした。