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幽霊少女と俺の平和な同居生活  作者: 海 きいろ
第一章 幽霊少女と俺の平和な同居生活編
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第15話 朝ご飯

 




「おはようございます天羽さん。コーヒーにしますか?お茶にしますか?」



 起床後まだ重たい(まぶた)をこすりながらリビングへ行くと先に起きていた花千代(はなちよ)の爽やかな顔が飛び込んでくる。




 、、、ま、眩しい。




 低血圧な俺には朝の光だけで充分に眩しいのに、そこにうら若い少女の笑顔がプラスされるともう目も開けていられない( 精神的に )。こんな風に誰かに挨拶される朝は久しぶりだからそれも相まっているのかもしれないが。




「コーヒーで。、、、って、、何だこの匂い?」




 部屋に何かの匂いが漂っているのに気がつく。




「あの、朝ご飯作ってみました。多分その匂いです」



 花千代がもじもじと言う。




「自信ないんですけど、、」



「あ、、あぁ、、。朝飯の匂い、か、、、。じ、じゃあちょっと顔洗ってくる」




 花千代にそう言い俺は洗面台に向かう。途中にあるキッチンの方をちらりと見る。鍋とフライパンがコンロの上にあり、炊飯器から湯気が出ている。使う皿も用意されていた。何を作ったのかはここからは確認できない。分からない、が、、




 何だこの刺激臭は、、、。



 キッチンに近づくほどに匂いは強くなり生理的に涙も(にじ)んでくる。鼻の奥がツンとして息も詰まる。


 俺は足早にキッチンを通り過ぎ洗面台がある脱衣所に入る。いや、これは逃げ込むと言った方が正しいかもしれない。



 、、、ッ、一体何を作った!?



 勢い良く水を出しバシャバシャと顔を洗う。まるで毒だ。目と鼻がビリビリと痛む。鏡に映った自分の顔を見ると目が赤く充血していた。



「、、、まじか」



 近くを通り過ぎただけなのにこれは、、、。というか家にこんな体に異変をきたすびっくり食材はない。


 脱衣所を出ると花千代がせっせと朝食の支度をしていた。




「あ!天羽さん。ご飯の用意できました。今コーヒー入れてきますね、ちょっと待っていてください」



「、、ん。あぁ、ありがとう。で、一つ聞きたいんだけど、、、何を作った?」



「?、、、お味噌汁と野菜炒めとご飯です。何か食べられない物ありました?」




 言葉の意味を理解しかねて花千代は首をかしげる。




「あーー、、、そうだな、、ちょっと変わった匂いがするから何を作ったのかなと思って、、」




「そうですか、、?」




 花千代はくんと匂いを嗅ぐがピンとこない様子だ。




 俺の鼻がおかしいのか、、?

 いや、でも目にもきてるし、、。



 キッチンに目をやると調理に使用したのだろう材料や調味料が置いてあるのが見えた。俺は目を細めながらキッチンに近づき確認する。この異様な刺激物の本体があるはずだ。



 俺は目の前の光景に驚愕する。





「家にある調味料全部使ったのか!?」




 調理台には塩、砂糖が入っていたケースや胡椒(こしょう)、ラー油、唐辛子、わさび、にんにくのチューブ、タバスコ等ありとあらゆる調味料の空が転がっていた。




 目の痛みは唐辛子か、、、それとタバスコ、、、。




 恐る恐る鍋の蓋を開けるとぶわっと(こも)っていた湯気が飛び出す。



「〜ッ!!?、、ッゲホッ、ゲホッ」



 ガチャンッ

 


 急いで蓋を閉める。鍋の中身は味噌汁の色をしていなかった。ぼこぼこと沸騰している液体は赤く、表面には何かの油が浮いていた。



「あ、あの、、天羽さん大丈夫ですか?」




 花千代がおずおずと後ろから声をかけてくる。


 


「、、、すまんが、これは食えそうにない、、」




 一口でも食べたら病院行きになる。それだけは分かる。見た目と味は意外と違うとかいう次元の問題ではない。これは見た目以上にやばい。




 花千代の表情が一瞬にして曇る。



「ごめんなさい、、」




 あ、、しまった、、、。


 食えないなんて、何言ってんだ俺は。




 つい口をついて出てしまった言葉はもう取り返しがつかず二人の間には気まづい雰囲気が流れる。




「、、、片付けます」




 すっかり元気を無くした花千代が鍋を掴む。




 〜〜〜ッ、、、、。

 だめだ、どうも弱い、、、。





「食う、、、いや、食べます」




「、、、え?」




「食べたらダメか、、?」




「いえ、、でも、さっき食べられないって、、、」




「あ、いや、、、だから、、えー、、と、、、ちょっと今は、、朝だから、、そう!朝だから重い食べ物は厳しくて、だから今は食べられないかなぁと思ったんだけど見ていたら食べたくなってだな」



 しどろもどろになりながら言葉を並べる。




 厳しい、、、か?




 ちらりと様子を(うかが)った花千代の曇りは晴れていた。



「良かった!料理の仕方よく分からなくて色々使ってみたんです。栄養満点ですよ」



「あは、ははは、、」








 悪意の無い笑顔に俺も精一杯笑う。否、笑うしかなかった。





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