外の景色
私は、静かにコーヒーに口をつける。
もう、5個目の大瓶のインスタントコーヒーの瓶にお湯を入れて出した一杯。
なに、心配はないまだ3ダースはあるのだから。
ただ、もう二度と手に入れなくなることを考えれば、
瓶に張り付いた粉末でもこそぎ落とすのには意味があるだろう。
冷静に考えれば…電力だけは十分なこの部屋の冷凍庫で賞味期間は凍結するし、
( 風味は凄く落ちるが、この際贅沢は言えないだろう。)
徳用の大瓶だ…3か月は持つから、単純に9年は後持つことになる。
その前には、確実にこの世にはいなくなるはず…だと思いたい。
そのコーヒーの温かさがゆっくりと食道を通り、胃袋に落ちる。
いやあ、いいもんだ。
この部屋に閉じこもる前には、苦手だった苦みや酸味も
さすがに一年近くもいれば慣れるし、
とりあえず変化の少ない私の生活に彩を添えてくれる。
大体、食に関してはレパートリーの限られた冷凍の食事を解凍加熱するだけだから、
これでも贅沢な方だと思う。
完全密閉の私の部屋から見える景色は絶望しかない。
直径800キロの超絶な隕石が落ちた世界は地獄だからだ…
まあ、それでもいい。
私の他の人間は既に熱風によって蒸発したのだから、長生きしてもしょうがないだろう。