気づいた思い
結局あの人は何だったんだろう?そんなことばかり考えていた。
毎日毎日彼女のことばかり考えていたのに、あの女の人はそれらを忘れさせるほどの衝撃だった。
俺はそれからというもの彼女に会うために毎日のようにあの公園を訪ねた。
亜夜さんと話しているのはとても気持ちが楽だ。
学校の人じゃないからこそ悪口をこぼしても大丈夫だし、
彼女の愚痴も亜夜さんになら何の気兼ねもなく話すことができる。
年上のくせに少し意地悪。俺の驚いた顔を見て笑う無邪気な顔は年上だなんて感じさせない。
それなのに俺の話をしっかりと聞いてくれた時や
ふとした瞬間に見せる表情には大人っぽさがあり、はっとさせられる。
亜夜さんには彼女とはまた違った魅力がある。
って、俺は何を言ってんだ。俺には茅野という彼女がいるにもかかわらず
他の人に魅力を感じるなんて。
だがそんな気持ちとは裏腹に、学校で茅野と話す機会は減っていく一方だった。
「俺どうしたらいいですかね?」
こんなこと亜夜さんに聞いてどうすんだろう。
そんなことを思いながらも俺は質問を投げかけた。
「どうしたらって、彼女さんのこと?」
「はい。あいつ全く俺と話してくんないし手もつないでくんないし、正直俺我慢の限界で。」
「じゃあ少年はどうなの?」
いつもは聞くことにだけ徹してくれて、思ったことなんて言わなかった亜夜さんが
初めて俺に聞き返してきた。
「どうって……。」
「その茅野さんって子のこと好きなんでしょ?それとももう嫌いなの?」
「そ、そんなことない。俺は今でも茅野のことが……。」
「ならそれを言い訳にしないで、正面から伝えるしかないんじゃない?
男の子が女の子を言い訳にして逃げるなんて恰好悪いぞ。ちゃんと真っ向から向き合え少年!!」
その通りだ。俺はなんだかんだ言って彼女と向き合うことを避けていた。
話しても返してくれないからとか、亜夜さんと話すほうが楽だからとか。
でも、亜夜さんに言われて気づかされた。
「俺今から茅野に会ってきます。いますぐ俺の思いをちゃんと伝えなきゃ。」
「さすが、それでこそ私の見込んだ少年だ。」
いつから亜夜さんに見込まれてたんだよと心の中で突っ込みを入れた。
「でも少年、今日もまたこれから雨降るよ?」
「そんなに遅くなりませんよ。いってきます。」
そう俺は言い残し公園をあとにした。
彼女の家までは30分程度
走るにはそこそこの距離だったが走らずにはいられなかった。
やっと気づいたんだ、大切なことに。
走りながら俺は彼女に告白したあの日のことを思い出していた。
あの日もこんな風に走っていた。彼女を探して
なんだか懐かしいな。あの日からほとんど時間は経っていないけど
パラパラ……。
亜夜さんが言っていたように雨が降り始めていた。
徐々に雨は強くなってきていたがそんなことはどうでもよかった。
はあ、はあ。
やっとの思いで彼女の家に着いた。
ピーンポーン……ピーンポーン……。
早く、早く。
いますぐ茅野に思いを伝えたい。好きだって。
ガチャ。
彼女の家から出てきたのは年の近そうな男だった。




