9 蒼、マークを考える
山田さん達が野菜を売る話を進めてくれている。
梅雨も明けどんどん夏が近づいてくる。
野菜の方は、ハンナの畑がメインだけど順調だ。
野菜を売るためには、まず自分達のマークみたいなものを作って、それを袋に印刷して売るみたい。
まずマーク作りをしなきゃ。
ハンナと一緒にやりたいけどまた鶏小屋かな?
コッコちゃん可愛がってるけど食べるとき大丈夫なのかな?
私は鶏小屋へ探しに行く。
「ハンナ~、いる~?」
「何じゃ蒼? それより見てみろ」
「何を?」
「コッコちゃん妾の後をついて歩いてくる。可愛いのぉ~♪」
やっぱり食べることを分かっているか心配だ。
「ハンナ…… コッコちゃん、食べる為に飼ってるのは分かってるよね?」
「うむ、じぃからも聞いた。何か問題が?」
「いや、分かってるならいいけど…… 野菜売る為のマーク一緒に考えようと思って呼びに来たの」
「うむ、片付けたらいく、プリンを用意しておいてもいいぞ♪」
「しょうがないなぁ~」
なんだ、ちゃんと分かってるのか。
それならいいけど…… まぁ強いハンナに限って問題無いよね!
むしろ〆る時心配なのは私だよね。
「いやぁ〜良い汗かいたのぉ」
「ぷっ、オヤジ臭い」
「何を言っておる! 妾は臭く無いぞ?」
「そういう意味じゃ無いよ、はいプリン」
「むむむ、ありがとなのだ♪」
ハンナは、どんどんこっちの生活に慣れ行くなぁ、凄い。
「野菜の袋に書くマークなんか良いのある?」
「うむ、よぉ分からぬが蒼と妾が作った野菜と分かるのが良いのぉ」
う〜ん、どんなのが良いんだろ?
「妾達の名前からとるか?」
「名前かぁ……」
「なんじゃ? 問題あるか?」
「問題っていうか、『花水 蒼』て、鼻水で青だから、なんかその……汚い感じしない?」
てか、高校の頃名前でも虐められたなぁ。
はぁ〜憂鬱になってきた。
「蒼は、バカなのか? ぷくくくくく、鼻水って。ぷー」
「なんで笑うのよ!」
「ぷくくくくく、ふむ、すまぬ……プププ」
「もぉ! 何がおかしいの」
ハンナまでバカにするの!
なんか、悲しくなる。
「すまぬすまぬ、今怒ったように、大切な名前をバカにするような奴らには、怒ればよいじゃろ」
「それは…… そうだね、ごめん。私が悪かった」
「うむ、妾は自分の名前に誇りを持っておるぞ」
「誇り?」
「うむ、妾の名前には恩恵や恵みを意味しておる。母上からもらった大切な名前じゃ」
「そうなんだ…… 素敵だね」
「うむ、蒼の名前も両親が大切な想いで付けられた名前じゃろ」
「うん、そうだね、ありがと」
そうだよね…… 今は高校生活なんて関係ないんだし!
ハンナも綺麗な名前て褒めれくれたし…… 私もこの名前綺麗だなって思う。
「じゃ、じゃあ蒼い花に…… 恩恵てどんなのだろ?」
「ふむ…… プリンかのぉ?」
「そんな訳ないでしょ!」
「むぅ……」
恩恵?なんだろ、滴?いや違うか……
「う~ん、ハンナのマークも付けたいけど何がいいかなぁ?」
「ふむ…… 妾もじゃあ小さい花がいいかのぉ……」
「花? なんで?」
「なんとなく音も似ておるし…… 蒼の友達だから横にちょこんといたいのじゃ。妾が元の世界に戻っても、忘れないで欲しいからのぉ」
「忘れないよ……」
そっか、いつかハンナは帰っちゃうもんね。いるのが当たり前になっちゃったな。
悲しい顔をださずに、とりあえず何個か適当に描いてみる。
「こんな感じ?」
「おぉなかなかうまいのぉ」
「そぅ? 普通じゃないかな? ハンナちょっと描いてみてよ」
「ふむ」
ハンナが真剣な顔で描いているが、お世辞にも上手いとは言えない出来だ。
「な、なんていうか個性的ね」
「そうかのぅ? そんなに褒められても何も出ぬぞ?」
「褒めては無いけど……」
「む? そうなのか、妾は蒼の描いたこれがいいかのぉ」
ハンナが選んだのは大きい花と小さい花のマークだ。
小さい花が私だね。なんかちょっと項垂れてるし。
小さいのは青色で、大きいのは向日葵にしようかな、ハンナは向日葵ぽいし。
「ハンナ、向日葵って分かる?」
「うむ、蒼の図鑑で見たからのぉ。元気になる花じゃった♪」
「ハンナ、向日葵みたいだからこの大きい方向日葵にするね」
「むぅ? 大きい方は蒼じゃろ?」
「え? 私はこの小さい方だよ」
「そうかのぅ?」
誰が見たって、ハンナが大きい方なのに。
とりあえず、色を塗って細かい所を仕上げていく。出来たら山田さんの所に持っていけば、マークが印刷された袋を業者さんが作ってくれるみたい。
あ! 色は塗っても意味無いじゃん。でもエプロンも作るみたいだから、塗らなきゃダメか。
「何をブツブツ言いながら色を塗っておる?」
「え? 声出てた?」
「うむ、顔を上げたり下げたり忙しそうだ」
「えぇ? そんな事してた?」
「はぁ〜いつもしておるぞ」
えぇー! それならもっと早くいってよ!
「はぁ~こんな感じでいい?」
「うむ…… しかしどこかで見たことある絵じゃのぉ……」
「え? 今私が描いた絵が?」
「うむ、まぁ細かいことは気にしてもしょうがないのぉ」
「えぇ、気になるよ! 今はパクリが問題になってるって、ラジオでいっていたし……」
「何をバカなことを言っておる…… 早くそれをじぃのところに持っていくぞ」
わ、私パクッてないよ。もしかして問題にならないよね……
でもマークはちゃんと出来た。あとは山田さんのところに持っていったら全部やってくれる。
ほんとに親切だなぁ。
「ハンナ、売れるといいね」
「うむ♪ 売れるじゃろ♪」
「そ、そうだよね…… 」
もうすぐ私達の野菜や卵が売られるんだ。
ドキドキするけど楽しみだなぁ。