7 ハンナとプリン
うむ♪ 最近は順調だのぉ♪
じぃ達が協力して蒼の家に鶏小屋を作ってくれた。卵もそこそこ取れておるし、烏骨鶏と云う可愛い奴もくれた。
妾は、コッコちゃんと名付け可愛がっておる。
たまに蒼が心配そうな眼差しを向けてくるが、どうせ蒼の事じゃ、いらぬ心配をしておるのじゃろう。
「ハンナ〜卵あった?」
「うむ! 大量じゃ♪」
「鶏の世話好きねぇ〜」
「うむ、妾には葉っぱを見て、ニヤニヤ気持ち悪い事言う趣味は無いからのぉ〜」
「なっ! 見てたの?」
「見るも何も、じぃ達も知っておるぞ?」
「えー! 恥ずかしすぎてもう生きていけ無い」
「何を言っておる? まぁ良い、卵置いておくぞ」
蒼はよく、自分の畑の前でクネクネ踊っておる。まさか見られておるのに気づいておらぬかったのか?
今頃真っ赤になって、手をバタバタさせてもなにも変わらぬじゃろ。
そんな事よりも、何か作ろうとしているのかのぅ。食べ物だと嬉しいのぉ〜。
「何か作るのか?」
「あ、今晩村の集まりがあるんだけど……」
「ふむふむ、それで? 何をモジモジしておる? トイレか?」
「違うわよ! その、鶏とか小屋作ってもらったから、プリンでも作ってみようかなぁって」
「プリン? 食べ物か?」
「うん、甘いデザート」
「ふむ、興味深い♪」
「なによ、興味深いって、食べたいだけでしょ?」
「違うのじゃ! 妾が味見をして、喜ぶか判断するのじゃ♪ 」
「ほんとに?」
「当たり前じゃ! 妾は姫じゃ! 嘘付かん!」
「嘘つき」
「むぅ」
なにやら、蒼は忙しそうだから、畑の世話もしておく。魔法も使うがなるべく手でやる。
ふむ、農民というのは大変じゃ。元の世界では妾は、ご飯を沢山残しておった……
こっちの世界に来てから妾には分からない事が沢山できる。
何が正解で何がダメなのか分からぬ。
もし間違えておったのなら妾は許されるのだろうか……
どんだけ考え事があっても、生活するために仕事をしなくてはならぬ。
農民は大変じゃ。
それでも葉っぱの虫を捕ったり雑草を抜くのも悪くない。
こっちに来てから楽しいことばかりじゃ。プリンも気になるしのぉ♪
「あ、ハンナありがと」
水を上げて、虫を取っていると蒼が声を掛けてきた。
そろそろお昼の時間じゃ♪
「む? お昼かのぉ?」
「うん、あとプリンもできたから食べる?」
「しかたないのぉ~、そんなに食べてほしいなら食べるのじゃ♪」
「別に食べなくてもいいよ」
「むぅ! 食べるのじゃ!」
「1個だけよ」
「うむ♪ ちゃんと蒼の分もあるのか?」
「あ、うんあるよ」
「ならよい」
「なんで偉そうなのよ」
「姫じゃからな!」
「何言ってんのよ!」
蒼が妾の後頭部を叩く。
元いた世界なら許されぬことだが、こっちの世界ではツッコミというらしい。
変な文化じゃのぉ~。でも嫌な気分にならないのぉ。
畑から家までの帰り道、この道を歩くのが好きじゃ。
城にいた頃は外にもあまりでなかったのぉ~。
今蒼がおるから楽しいのか、それとも妾が変わったのか、不思議じゃのぉ~
む?家に入ると甘い匂いがする♪
「むむ? なんか甘い匂いがするのぉ?」
「なにそれ? モノマネ? 甘い匂いはプリン。お昼ご飯食べてから食べよ」
「うぬ、楽しみじゃのぉ♪」
プリンという食べ物はプディングと似てはおったが全然違う!
なんじゃあれは! 蒼は魔法使いなのか!
2個3個食べたいといったが足りなくなると言っておった。
悲しすぎる。
「蒼! プリンは毎日作るのじゃ!」
「え? 毎日食べる物じゃないでしょ」
「毎日食べたいのじゃ! 意地悪するな!」
「意地悪じゃないでしょ」
むぅ…… 沢山そこにあるではないか。けち!
でも、きっとじぃ達に渡しても余るじゃろ♪
「いつ集まりに行くのじゃ?」
「夜の6時くらい」
「まだまだじゃのぉ…… プリン腐るのではないか?」
「心配しなくても冷蔵庫入れておくから大丈夫よ」
「むぅ!」
「むぅ! じゃないでしょ! 食べたでしょ!」
「はぁ~」
粘ってもダメな用じゃ……
ここでは妾のわがままは通じないのじゃな。
それから時間まで、畑を耕したり、鶏の世話をする妾達。
「じゃあそろそろ時間だけど…… 」
「なんじゃ?」
「なんかよく考えたら年配の方にプリンて変じゃない?」
「別にいいじゃろ…… 余ったら妾が責任を持って処置をする!」
「ハンナが食べたいだけでしょ!」
また、くねくね蒼が始まると思ったけど復活したみたいじゃのぉ……
「向こうで変なこと言わないでよ! プカプカ浮いたりするのもダメ! 」
「はぁ~。蒼は口うるさいのぉ……」
「じゃあ行くよ」
落ち込んだりギャーギャー言ったり、蒼は大変じゃのぉ。
自分の好きなようにしたらいいものを。
ジメジメしておるが、夜は風が吹くと気持ち良い。
蒼がまた道の途中で猫を見つけ、「あ、猫だ」と言っておる。
蒼はもしかしたら猫が食べたいのかも……
「おぉ! あそこが集会所か。人が沢山おるのぉ」
「田舎だから少ないでしょ」
「それでも沢山おる、ご馳走の予感じゃ♪」
「ご馳走無いわよ、ほとんどお酒のおつまみ、ばっかりだったよ」
「なんということじゃ…… 」
「だから私のプリン変かも……」
くねくね蒼になっておるがそれどころではない。
ご馳走がないじゃと……
これはパーティーじゃなかったのか。
こんな事ならお昼ご飯ちゃんと食べるべきじゃった……