12 蒼茶碗蒸し作る
野菜を初めて売りに行ってから一ヶ月。
表面上では普通だけど、やっぱり少しギクシャクしちゃう。
お互いに遠慮してるしというか、気を遣ってる気がする。
野菜は、あれからも売りに行った。
なぜか私達の野菜を食べると体が元気になる、病気が治ると評判を呼び、最近は値下げしなくともすぐ完売しちゃう。
これもハンナのおかげかも。
お金も結構余裕が出来た。今度ハンナと街に行こうかな。
少し怖いけど……
「蒼~あ~お~」
ハンナが呼んでる。なんだろ、鶏小屋の掃除してたはずだけど……
「どうしたの? て…… 顔白いよ? 熱?」
「分からぬ…… なんか頭が痛くてだるいのじゃ」
「風邪かな? ちょっと家戻って熱計ってみようか」
ハンナ大丈夫かなぁ。異世界から来たけど病院とかどうなるんだろ。
体温計あったけかな…… 通帳の横にあったはずだ。
「ハンナ、これ脇の下に挟んで」
「なんでじゃ?」
「熱測るからだけど…… なんで脇なんだろね?」
「むぅ…… 分かったのじゃ」
熱を計ってる間に、布団を敷いて部屋温めたほうがいいかなぁ?
もう九月だしなんか台風来るって言ってたし……
「熱あった?」
「分からぬぅ~」
あ、使ったことないからわかんないか。
受け取った体温計を見る。『37.8℃』か。
風邪かなぁ? 夜までおかしかったら医者の佐藤さんに診てもらおう。
「ハンナ寒い? 何か食べれそう?」
「寒くはないのぉ、う~ん、あのおかずプリンが食べたいのぉ」
おかずプリン…… ? あ~前作った茶碗蒸しね。
「じゃあ作ってくるね」
「むぅ、何か寂しいのぉ~台所で寝たいのぉ……」
「じゃあドア開けて見えるようにしておくよ、台所は冷えるでしょ」
「むぅ」
ほんとハンナは可愛いなぁ。もし私が風邪だったらこんなに素直に甘えれないな……
私も素直に思いを伝えれたらあんな風にハンナを傷つけることはなかったのに……
だけど台風来るのに野菜や鶏小屋大丈夫かなぁ……
前回はなんとか無事だったけど今回はもっと大きいみたいだし。
茶碗蒸しはあと15分程度弱火で蒸すだけだね。
ちょっとハンナの様子見てから、急いで畑も見てこなきゃ。
「ハン…… 寝ちゃったか」
ハンナも寝てるし茶碗蒸しできたら畑見てこよ。
待ってる間に、蜂蜜ジンジャーを作ってハンナの枕元に置いておく。
茶碗蒸しが出来たのを確認して火を止め、私は畑へ行く。
畑へ行くと心配してきてくれた山田さん達がいた。
私も教えてもらいながら、ビニールを貼ったり支柱を立てた。
ハンナの事を聞かれ、風邪かもしれないと教えたら、山田さんの奥さん達が梅干を持ってきてくれた。
本当に私は周りの人に助けられている。
ハンナと出会うまでは、人を信じれず私は避けていたのに、優しく接してくれる。
私は一人じゃ何も出来ない。いつかハンナがいなくなって一人ぼっちになるのが怖い。
ずっといてくれたらいいのに…… でもあの時ので、私は嫌われちゃったかもしれない。
確かめるわけにはいかないし……
「蒼ちゃん! もぅこっちはやっておくからハンナちゃん見に行ってあげて」
「でも…… まだ終わってないですし」
「そんな辛気臭い顔だとこっちも困っちゃうよ、いいから行きな!」
まだ作業残ってるのに。
私の畑なのにみんなが協力してくれる。でも確かにハンナが心配だ。
何も言わず出てきちゃって、かなり時間も経ったし。
「あの、本当にありがとうございます。
大して何もできませんがなんでも困ったときは言ってください」
山田さん達に感謝を述べハンナの元へ急ぐ。
だけどそんなに顔に出てたかなぁ……
「ハンナ~! て、寝てるかもしれないね」
大声で叫んだあとに気がつき、静かにドアを開ける。
ハンナ起きちゃったかな?
「蒼! どこに行っておった! 急に居なくなりおって!」
「ごめん、畑の様子を見に行ってて、ごめんね」
「ふん、もぅ今日はどこにも行かないのじゃな!」
「え、うん多分大丈夫だと思う、茶碗蒸し持ってくるね」
「ちゃんとここで蒼も食べるのじゃぞ!」
「はいはい、分かりました」
甘えん坊だなぁ。
でもやっぱり嬉しいね。風邪で弱気になっているとはいえ、こんな私を頼ってくれるなんて。
「はい茶碗蒸し、美味しい?」
「うむ、何かさっきの変な味の飲み物もうまかったのぉ♪」
「変な味なのに美味しいて、なんなのよ」
「喉がす~っとしたぞ」
わたしとハンナの2杯分の、蜂蜜ジンジャーを作り持っていく。
外を見ると、日も落ち雨足も強くなってるみたい。
畑大丈夫だよね…… どっちみちもう何も出来ないしね。
「どうした? 何か不安なのか?」
「ん? 台風ひどいのかなぁと思って」
「ふむ、元気な時なら魔法でなんとか出来そうじゃが、今はうまく魔力が練れん」
「そんな事、気にしないでゆっくり寝てなよ」
「そんな事ではないじゃろ!」
野菜ももちろん大事だけど、ハンナに無理して欲しくないに決まってるのに、
「わ、私にはハンナの事が一番大切なの!」
は、恥ずかしい。
顔が熱い、絶対真っ赤っかだ。
でも、ちゃんと言わないとまた喧嘩になっちゃうと思って、想いを伝えたけどこれは恥ずかしいね。
でもなんか、胸が熱くなる。
ハンナを見たら、布団に潜っちゃてる。
え? なんで?
私は慌ててハンナを揺する。
「ハンナ! 大丈夫? 何かあった? お腹痛い、頭痛い?」
私が確認しようと布団を引き剥がそうとするが必死に抵抗してる。
なんでだろ。
「蒼! 何をする、辞めるのじゃ~!」
「ハンナ、大丈夫なの?」
「むぅ! 茶碗蒸しのおかわりを持ってきておくれ!」
「だ、大丈夫なのね…… ?」
どうしたんだろ、とりあえず茶碗蒸しのおかわりね。
ん~もしかしてハンナも照れてたのかな? もしそうだったら嬉しいな。




