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傲慢なお姫様と孤独の少女  作者: 白ヤギ
1/15

1 姫、蒼と出会う

以前の『時代遅れの女神様からの贈り物』を読んでくださった方は、また読んでくださりありがとうございます。初めての方はよろしくお願いがします。最初の作品で自分の文章力のなさを痛感いたしまして、文章の書き方的な本を読み、参考にして書いている作品です。また以前の作品であった、声を出してもう一度読むなどで、誤字脱字が無いように気を付けておりますが、もしあれば報告もらえれば幸いです。


また文章をこうしたほうがいいなどのアドバイスもしてくだされば幸いです。

今回は前回の失敗を振り返り、あらすじだけじゃなく細かいことも紙にしっかり書いておりますので、矛盾が出来ないように頑張っていきたいです。


才能ある知人様にアドバイスを頂きましたが力及ばず生かし切れません><

 ふぅ、なかなかうまくいかない。やはり18歳で田舎暮らしなんて無謀だったんだ。

 去年、父が死んだ。いじめを受けていた高校生活を、父に心配させないようにと頑張って通っていたが、我慢する理由も無くなり辞めた。

 葬式でお世話になった親戚に頼み、父の僅かな保険金や貯金で田舎の家を購入してもらった。今の所、生活費は以前住んでいた家を人に貸している為、家賃収入でなんとかやっていけているが、いつまで続くかは分からない。

 今日もまた野菜を枯らしてしまい、今後の生活に不安を覚える『蒼』だった。それでも高校に通っていた地獄の様な2年間を思えば、平和で平凡な日々に満足をしていた。


夜、楽しみでラジオを聞いていると、夜中辺りに大雨が降ることが分かり、急いで排水溝を掃除しないといけない事を思い出す。以前掃除をサボっていたら、突然の大雨で水が溢れ出し大変な思いをした。急いで、服を着替え外へと飛び出す。4月の夜は、まだ肌寒く日中掃除をしていれば汗ばむくらいになる季節だが、今は汗をかく事もなくせっせと掃除にはげむ。


 背中に風を感じたのはそんな時の事だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆






 大陸最大の王国『ヴァンデェル王国』力こそ正義の時代の中、生まれた姫『ハンナ・ヴァンデェル』


 齢18歳にしてあらゆる魔法を使いこなす天才。そのあまりに天才すぎる故に世間知らずの傲慢な姫君と、その悪名は大陸全土に響き渡る。戦争に参加して人を殺した事はまだ無かったが、12歳の時王国騎士団を総動員して討伐できなかった、グランドドラゴンを1人で倒したことはあまりに有名な話だ。

 父親にあたる、ヴァンデェル王国の国王、バルク・ヴァンデェル王は娘ハンナの強大な戦闘力を盾に他国を脅し、さらに勢力を伸ばしていった。悪名のほとんどの責任はこの父親にあるのだが……



「姫様まだ料理が残っておりますぞ」

「要らぬ!捨ててしまえ」

「今年は不作で民達は食糧難で苦しんでおります。せめて全て食べてもらう事は頂けないでしょうか?」

「くどいぞ、爺!要らぬと言っておる」



不機嫌そうに大きな音を立てて席を立つ。あぁイライラする。一体このイライラはどこから来るのじゃ。苦しんでおるなら強くなれば良いじゃろうに。父上も父上じゃ、妾の名前を好きな様に利用し他国を脅すなんて。弱いのが嫌なら自分自身が強くなればいいだけじゃないか!こんな国はもう嫌じゃ、妾は自由になるのじゃ。


暗い廊下にカツカツと不機嫌な靴の音だけが響く。目的の扉の前で音はやみ、扉が開く。


「ふむ、なかなかの出来じゃ♪」


つい、独り言を呟いてしまう。ここのところ、この部屋に籠りきり書き上げた失われた魔法の『転移魔法陣』普通の転移魔法と違い、世界線すら飛び越えると云われる古代魔法だ。

転移の条件は妾と魂の波長が合うものの近くで良いかのう。それなら転移し終わり、降りついた瞬間死ぬこともあるまい。一度試し(ため)してうまくいったら戻ってきて、本格的な準備をしてから、暫くはこんな国から逃げてしまおぅ、そう決めたハンナは失われた転移魔法陣を完成させていた。うむ、準備は整った、では行ってくるの~♪


部屋の中の魔法陣が緑色に光り出す。


「むぅ、この色は時空転移?どこか間違えてしまったかのう?」


のんきな呟きを最後に部屋から人の気配がなくなった。



目を開けると暗い夜だった。降り立った場所は山の中だった。ハンナは転移の術が上手くいったことに安心し当たりを見回す。


「むぅ、なんか空気が汚れておるのぉ。まずは人を探すかのぉ」


 目を瞑り探索魔法を使う。近くにいる人間は一人だけだ。多分これが妾と波長の合うものなんだろう。さっそくマーキングし転移魔法をする。

 目の前に現れたのは、自分と同じ黒髪の少女だった。見やすくするために『ライトボール』を頭上に浮かべる。ほぉ魔力は女の髪に宿るといわれておるが、こやつ妾と同じ黒髪とはなぁ。さすが魂に波長が合うものというわけだ。


「すまんな、そなたは何者だ?」

「&%&'&%(%'%#%$#%&#$&#%'」

「むぅ…… そうか、ちょっと待っておれ」


 翻訳魔法を自分にかける。


「すまん、そなたは何者だ?こんな夜遅く、女子おなご一人が何をしておる?」

「あ、あなたこそ私の土地でなにをしてるのですか?あなただって女の子でしょ。」


 ずいぶん声の小さな女子じゃのぅ。しかし顔がよく見ると妾に似ておるのぉ。さらに自分の土地を持っているとは…… 髪の手入れもしっかりしておるし、身なりも見たことない服じゃが…… むぅ見事な仕立じゃ。貴族じゃな。


「妾はハンナ・ヴァンデェル。ヴァンデェル王国の王バルク・ヴァンデェルの娘じゃ。そなたの領地じゃったか。この世界に転移魔法陣でやってきた、なにぶん無知じゃ非礼を詫びよう」

「…… 花水 蒼(はなみず あお)

「ほぅ、綺麗な名前じゃのう、それでそなたは何をしてるのじゃ?護衛や使用人が見えないが?」

「そんな人はいません。今掃除しているので邪魔しないでください」


 む、こやつ姫である私に向かってなんという口のきき方!


「おぃ!お主!」

「…… 」


 むぅ、こやつ妾を無視だと…… あの場所を掃除しておるのか?こやつが使用人なのか?その割には口のきき方がなっておらぬ。

 蒼はハンナのそんな思惑を無視して掃除をし続けている。なんとしても雨が降る前に綺麗にして水が流れるようにしないといけないのだ。

 

「おぃ!お主!失礼ではないか!妾を無視する気か!」

「はぁ~見たら分かると思いますが掃除をしないといけないですので、邪魔をしないでください」


 なぬぅ~わ、わ、妾を2度も邪魔だとぬかしおった。大体そんな変な道具を使わなくても、魔法でこんなものすぐじゃろ。

 

「ちょっとそこをどけ、そこを綺麗にしたら話をしてくれるのじゃな!」


 まったく、こんなもの空間魔法でちょちょいのチョイじゃ。

 ハンナが魔力を集中し始めると、胸の前で構えた掌が青白く発光する。木々が揺らめき風が止む。ハンナが今してる魔法は高位空間魔法。自分が望む任意のものを亜空間に飛ばす魔法。決して掃除に使うような魔法ではない。莫大な魔力量と高度な魔力操作が出来て初めて発動する魔法を、そんな魔法を軽々しく発動して、排水溝にたまっていた、木の枝、ゴミ、大きな石を次々と吸い込んでいく。にも拘らず(かかわらず)、ハンナや蒼、それに木々には全く変化は無い。

 

「ふむ、こんなもんでいいかのぉ?」

「い、いいですけど、一体何をしたんです…… ?」

「見たらわかると思いますが空間魔法じゃよ」

「それは見てもわからないと思いますが…… 」

「ええぃ!負け惜しみを言うな!約束は約束じゃ!話を聞いてくれるんじゃな!」

「何の約束ですか?それでは綺麗になったので帰ります。ありがとうございました」

「まてぃ!妾もついていくぞ!いいな!」


 むぅ!また妾を無碍にしよる。なんなんじゃこの女子おなごは。こっちを見てため息をつきよったぞ!むぅ、なんでこんな大事な時に爺はおらぬのだ!


 心の中で悪態をつきつつ、蒼の後を追うハンナ。蒼が止まったのは、古い普通の大きさの日本家屋なのだが、いやむしろ田舎の家だという事で、大きいのだがハンナにはこれが家だとは気付かない。


 なんじゃこの小屋は?造りが珍しいのは妾のいた、世界とは違うからしょうがないとしても問題は大きさじゃ。こんな小さい小屋は使用人部屋にもならないぞ?ふむ、まだ分からない事もあるから黙っておこう。蒼が家の中に入るのを見て、あわてて中へと続き、奥へと進もうとする。それを見た蒼は、


「ちょっと、えーと…… 」


 妾の呼び方で迷っておるのじゃな。本当は姫様もしくは、ハンナ様だがここは異世界だし、寛大な妾はハンナと呼ぶことを許可しよう。


「ふむ、気安くハンナと呼ぶのを許可するぞ、本来は許されぬことだが魂の繋がりを持つ者同士特別許可 じゃ、喜んでよいぞ」

「あ、そう、ハンナ靴を脱いでね。」

「むぅ?それだけじゃと…… それに靴を脱ぐ?なぜじゃ?」

「はぁ~汚れるからでしょ」

「汚れたなら使用人にでも掃除してもらえばいいじゃろ」

「そんなものはいないから、嫌なら脱がなくてもいいから出て行って」

「まてまて!今すぐ脱ぐのじゃ」


 あわてて靴を脱ぐハンナ、こっちの世界に来てどうも勝手が違う。いつもはみんなが妾の事を敬い、媚を売り少しでも妾に気にいってもらおうというのに…… いくら世界が違うといっても、魔力の総量くらいわかるであろうに…… そんなことを考えていると、暗かった部屋が一瞬で明るくなる。


「なんだお主は!魔力の構築、流れが全く分からなかったぞ!むぅお主…… 力を隠して妾を油断する作戦かぁー!」

「何言ってるのよ、電気を付けただけでしょ、そこのスイッチ…… これね、これ押してみて」


パチッ…… !むぅ今度は一瞬で暗くなった。パチっ…… むぅ!!明るい。 パチパチパチパチ…… 不思議じゃ。なんだこれは!誰が使ってもライトボール以上の明るさだと……


「やい!これはなんじゃ!どこかに高位魔法使いが隠れているのじゃろ!何が目的じゃ!」

「電気よ…… 原理は知らないけどそれを押せば明るくなるの。そもそもあなたさっきから日本語話してるんだから、もうその演技はいいって。さっきの一瞬で綺麗になったのだって何かのトリックでしょ」

「妾がその日本語とやらを話してるように聞こえるのは、翻訳魔法を使ってるからじゃ!トリックとは何事じゃ!もぉ帰るぞ!」

「あ、どーぞ、掃除を手伝っていただきありがとうございました」

「嫌じゃ!帰らん!」

「はぁ~」


 むぅ、なんだこの女は!ちょっと顔が似てて、魂の繋がりを感じるからってなんじゃこの態度は!


「あの、私はご飯食べるけどハンナはどうするの?掃除してくれた事だし、粗末な物だけどご飯くらいあるけど?」

「うむ、誘いはうれしいのじゃが、今はおなかがポンポンじゃ。妾はここで休んでおる。しかし蒼よ、なぜ粗末な物と自分を卑下するようなことを言うのじゃ?」

「普通言うでしょ、じゃあそこの座布団にでも座って待ってて」

「むぅ!なんだこの床は!草か?いい匂いがするぞ♪気持ちいいぞ♪」

「畳よ、まぁなんでもいいけど大人しくしてて」


 いろいろ変わったものがあるのぉ。なんだあれは?服かぁ。ひらひらしてて、可愛いのぉ。む、なんかいい匂いがしてきたぞ。さっきまでお腹が一杯でご飯も残したのに魅力的な匂いじゃのう。なぬ?もぉ出来たのか?なんだあれは、ほくほく湯気が出てる白い物に、茶色いスープ、それに野菜の…… 塩漬けか?むぅ質素なのにうまそうな匂いがしてるのぉ。しかし変な食器で食べてるぞ?なんだあれは、木の棒?


「なに…… 食べたいの?」

「ちょっとだけなら食べれるぞ」

「いや、いらないならいけど」

「食べる!是非食べさせてくれ!ただその、なんかその棒みたいなのは使った事が無い、ナイフとフォークはないのか?」

「なんでご飯とみそ汁と漬物にナイフがいるのよ、フォークでいいのね」

「ふむ、いただきます」

「なんだやっぱり日本人じゃない、いただきますて知ってるじゃない」

「何を言っておる?『いただきます』は我が王族にのみ伝わる食事前の祈りの言葉だぞ」

「はいはい、何を言ってんだか…… 」


 む!なんだ蒼は、『いただきます』は、ほんとに我が国にのみ伝わる祈りの言葉なのに。蒼が言った時のほうのが驚いたのじゃが、奴が食べてる物に夢中で言えなかったなんて言えないじゃないか。まぁよいか。


ほほぉ、これは「ごはん・みそしる・つけもの」というものなのか。

ご飯を、一口フォークの上に載せて食べてみる!なんだこのモチモチは!なんなのじゃ!それにこの漬物といわれる野菜!ポリポリポリポリうますぎるぞ!


「あ、蒼よ、このみそしるという物を飲む為のスプーンはないのか?」

「これはこうやって飲むのよ」

「な、なんとはしたない!食器に直接口を付けるなど、妾は犬じゃないぞ!」

「じゃあ片づけるわよ、いらないのね」

「……………… 飲む、ずずずーっ」

「別に音はならさなくてもいいのに…… 」


 うまい!なんだこのスープは。初めて飲む味だぞ、またこのごはんとよく合う、モグモグずずずーっ、ふぅ~完璧じゃ。ふぅ~満腹じゃ♪こやつは高名な料理人か。若いのにすごいものだな。


「ふぅ~満腹じゃ、余は満足だ♪」

「それはよかったね、御馳走様」

「む、お主も御馳走様を知っておるのか?妾も知っておるぞ」

「当たり前でしょ、それよりも自分が食べた食器くらい、自分で片付けてね」

「なぬ?妾が自分で片付けるのか?」

「当たり前でしょ、嫌なら…… 」

「するのじゃするのじゃ、なぜお主はすぐに帰そうとする、これを持っていけばいいのじゃな」

「そう、そこでいいわ、私が洗うから」

「あんなにうまいものを、食べさしてもらって感謝する。ありがとう」

「あ、うん、別に気にしなくていい、大したものじゃないし」


なんだ、顔を真っ赤にして、照れておるのか?


「蒼よ、聞いておらぬかったが歳はいくつじゃ?妾は18歳じゃ」

「私も18よ」

「ふむ、同じ歳なのじゃな」


 同じ歳か。ふむなかなか大人びてるのぉ。それにしても、造りは粗末なのに部屋は快適じゃし、電気というものもある。さらに、蒼自身体も汚れておらず、一体ここはどうなっておるのじゃ?


「う~ん、ハンナもうこんな時間だし帰るあてはあるの?外は大雨よ?」

「む!雨?雨かぁ…… 」


 戻る時は、転移魔法陣のマーキングに飛ぶだけだから、楽だからいいけどさすがに体外の魔力がいるからこんな雨の中外に出たくないのぅ……


「はぁ~泊まっていく?」

「よいのか!初めてじゃ!こういう関係なんていうじゃっけ…… う~ん、家族じゃなくて、姉妹でもなく、なんだっけかのぉ…… そうだ!友達じゃ!友達じゃな、妾と蒼は!」

「…… 私に友達はいないわ。お風呂はどうするの?」


…… なんでじゃ、なんでこやつはそんな悲しいこと言うのじゃ、妾に初めての友達が出来たと思ったのに、てっきり友達になれると思ったのに…… 


「ごめん、ハイハイ友達ね、でお風呂はどうする?」

「む!そーか!妾と蒼は友達だな!お風呂…… 湯浴みの事か、そんなものこれで十分じゃろ、クリーンサークル」

「な!なにこれ、綺麗になってる…… 服も?トリック?いや違うか…… 」

「何をぶつぶつ言っておる!妾は魔法使いだといっておるじゃろ!蒼も黒髪なら魔力すごいのじゃろ?」

「なにいってるの、日本人はみんな黒髪でしょ、今日は疲れたわ、もう寝よ」

「ふむ、みんな黒髪なのか」


みんな黒髪だと?そんなわけないじゃろ、妾は王国でも何百年ぶりの黒髪のはずなのに…… 謎は深まるばかりじゃ。む?_ なんか蒼が書き物をしておるぞ。なんだあの真っ白の紙は、それにあの文字書いてる道具もカッコイイ!


「して、蒼よ何を書いてるのじゃ?」

「な、なんでもいいでしょ!布団用意するよ」

「ふむ、何顔赤くなっておる、まぁそんなに言うなら良いわ、この布団!なんだこれは!ほわほわじゃないか!」

「もぉいいわよ、敷いた?電気消すわよ」


 電気を消すと2人は、お互い疲れていたのか、瞬く間に眠りの世界に入った。

 翌朝起きたハンナと蒼は、簡単な朝食にハンナがまた大げさに驚くのを、蒼が呆れ少し話をした後、別れの言葉を述べる。


「ふむ、蒼世話になった。妾は元いた世界に戻る。なかなか良かったぞ、しばらくしたらまた来るからの、なんせ蒼は、初めての友達じゃ♪」

「はいはい、気を付けてね、じゃあね外まで見送るわ」

「ふむ悪いな」


 靴を履き外へ出る2人。外は昨日の大雨が嘘のように晴天が広がっている。

 ハンナは魔力を集中して体内の魔力と、体外の魔力を混ぜる…… む?混ざらない?ま、まずいぞ…… まだこの世界に馴染んで無いから魔力がうまく合成できない。さすがにいくらハンナとはいえ、失われた魔法を使うには、自分の体内にある魔力だけでは賄えない…… ふむ。


「すまんな蒼!どうやら戻れないみたいだ。まだしばらく世話になるぞ!」

「はぁ~」


 蒼は、ここ最近1番の溜息をついたが、顔は笑っているように見えなくもなかった……





蒼の日記 4月○日


今日排水溝の掃除をしていたら、変な女の子に出会った。突然目の前に現れた気がする。頭に明るい光る球を浮かばせ、一瞬であんだけの量のゴミや木の枝を無くしたのには驚いた。ほんとに魔法使いのかな?名前は外国の名前みたいなのに、顔は日本人だ。私もこんなに綺麗な顔で生まれたらいじめに遭う事は無かったのだろうか。私の名前を褒めてくれて、ほんとにうれしかった。

昨日の夜は、久しぶりに楽しかった。いちいち電気に驚いたり、私の作ったご飯も褒めてくれた。


私は、高校でいじめに遭ってから、同年代の子を見ると震えが止まらない。きっとみんな私の…… 楽しいことがあった日なのに、わざわざ書く必要はないか。でもなぜかハンナとは自然と話せたし、一緒にいて楽しかった。ハンナ曰く魂が繋がっているから?言ってる意味は分からなかった。ハンナは私なんかを初めての友達と言ってくれた。私は怖くて、友達なんかいないと言ったら泣きそうな顔をしてた。私は照れ隠しであんなにうれしかったのに軽くあしらってしまった。それでもハンナがあんなにうれしそうに笑ってくれて、私は泣きそうになった。明日帰るらしい……


私はどうせ、寂しいとか、また来てねとか言えないのだろう。


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