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ことつぎ  作者: りんたろ
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 世には、ことつぎという職業がある。

 事を継ぎ、異を継ぎ、言を継ぐ。過去を紡ぎ、現在を繋ぎ、未来を導く。眼を見開き、視野を広くして、歴史を解く。ことつぎは全てのものに中立だ。けして感情にのまれることなく、事象を受け止め、書き留める。時にはその足で世界を歩き、時には書に埋もれて文を吟味する。万物は流転していく。だから、ことつぎがいるのだ。





「王都アーネルクス! アーネルクス! 下車する人は切符を落とさないように! 大変込み合いますので、小さいお子様連れの方は……」


 息の詰まる車内から解放されて、少女、フィリスは思い切り息をついた。乗降場では人がごった返しており、アナウンスが慌ただしく鳴り響く。人の波に押されながら、躍り出るようにして駅を出た。燦々と日光が降り注ぐ中、駅前の広場では旅の一座が芸を開いている最中だった。ジュース売りの売り子が、それを暇そうに眺めているのが横目に入る。フィリスは目当ての人を捜そうと、つま先立ちで四方を見回した。


「フィリス!」


 人ごみの中に、一つだけ見知った顔があった。赤毛を丁寧に撫でつけた、長身の男だ。その人は片手をひらひらと振った。


「お久しぶりです、ザクセンさん」

「長旅、ご苦労だったな」


 ザクセンと呼ばれた男は顎に蓄えた髭を撫でながら表情を緩めた。そのきれいな薄い青の瞳が細まる。


「アーネルクスには初めてきただろう。どうだ、感想は」

「噂通り、人がとても多くて新鮮です! 村とは何もかもが違う」


 ザクセンが満足げに頷く。少しだけ、しわが深くなった。フィリスは目を輝かせながら広場を眺めた。あちこちから耳に届く、活気づいた街の音。フィリスは胸いっぱいに息を吸い込んだ。


「さっそくアーネルクスを案内しよう。それとも、部屋に荷物を置いてからにしようか」


 フィリスは首を横に振った。


「いえ、今すぐ案内してもらいたいです!」

「わかった、じゃあまずは……」


 ザクセンが王都アーネルクスのことを語りかけながら、歩き始めた。フィリスは興味深げに何度も頷き、時には相槌を返す。フィリスはこれから先の王都の生活を夢想して、心が弾んでいた。祖父から受け継いだ、ことつぎの称号。小さな少女フィリスは、期待を胸に秘め、アーネルクスの空を見上げた。


 

プロローグ的話なので、短めです。

フィリスの成長や、人々との交流を書けたらいいと思います。

更新頻度は遅いですが、精一杯頑張ります。

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