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11話

 前線に立つ名家コンビの才華と空御は圧倒的な戦況を作りあげている――かと思えばそうでもなかった。

 徽章には夜斗の持つ呪符と同じく術式がセットされていた。防御膜を張る術式の他に、対象のオーラ総量と濃度から術式使用時のオーラの抑制術式が発動する設定が施されている。

 対戦において平衡を喫する為とはいっても、元々オーラが霧散しやすい環境下、異能を十全には揮えない状態をさらに悪化させている。名家はその落差を激しく感じるだろう。

 空御の風力、才華の操血もたかだか一般の異能者の攻撃に相殺され、防がれる始末。

「なんか威力が出ねぇッ」

〝airblast〟を放つも木々の壁に風の槍は阻まれ思うように届かない。

「い、行けるぞッ」

 委縮していた相手は時間が経つごとに可能性を見出し、積極的になっていく。

 しかし経験値、練度が確かな差を生む。

 才華は〝操血〟の枷が細かな操作と範囲、形状変化だと把握すると形状変化を簡素なモノに変え維持に徹底すると自ずと深紅の大鎌を創造する結果へと至った。飛弾する多種多様なスキルをたちまちに切り伏せていき、影響の少ない身体能力強化術式の一種である〝フェアエンデルィング〟の中途開放による滑空で肉薄する姿はさながら死神の様だ。

 空御も才華の戦い方を吸収し、昇華する。操作は不得意だが術式の維持は別段苦手ではない。ただ放出系の術式の方が性に合っているという単調な理由と適性の【強化】が放つという行為が得手だという認識で使い続けていた。

 四肢に〝airblast〟を発動し纏うように固定させる。

 地を蹴って瞬間的に爆発力を高めると、瞬きすら許されない程に生い茂る木々の隙間を翔け中空に軌跡を描いていく。

 動きを阻害する相手の術式は空御の尾すらも捉えられない。

 滑空した状態で対象の後方へと位置を取ると身体を車輪のように回転させる。モーションコマンドと認識された動きはオーラのアシストを受けて加速と軌道修正を施す。風の刃の一撃は肩と首へと重く突き刺さった。

「〝windmill〟ッ」

「ガァッ!?」

 怯んだ隙を逃がさず腰へと手の平を当てると――。

「〝blast〟」

 簡易詠唱とは到底思えない威力の風圧がのしかかり、学生は倒れ伏せた。

「鳳君ッ、フェイカーが居るの忘れてないわよね!?」

「……あ」

「はぁ……過ぎたことはしょうがないわ。倒した相手に使った術式から防御術式の設定強度を算出して戦いなさい」

「うぃっす」

 目下の敵は二人。相手チームは防衛戦を選択したのだろう。残り二人は前線――中間地点で戦闘を繰り広げていると才華は予測を立てている。

 倒した学生の使用していた遠距離術式から察するに無難なところはウーボードとして生存している相手の役職を絞らなければならない。。

 才華は基本着かず離れるの距離を保っている点からパンツァーとファルシュかフューラーと読んではいた。

 問題はファルシュかフューラーという点。現状、攻めあぐねている状態だった。

「地味に手強いのよね……」

 見覚えのある顔から同学年だったと思い返しつつ、対策を練られているのか空御が相手取った者よりも数段捌き方が上手い。

「〝tempest〟!」

 才華達、彼我の中間地点程で地から暴風が螺旋を描く。強制的に距離を取らざるを得なくなった三者の中心に空御が身を躍らせた。

「こっからは二対二だぜ?」

「貴方今の術式……」

 いや、それだけではなかった。先の相手を倒すに至った〝windmill〟〝blast〟のスキルも威力や発動速度は常日頃と遜色ない。

 適応してきているのだ環境に、徽章の制約に。

「ん? どうかしました」

「い、いえ。とりあえず【パンツァー】と思われる方をお願いしてもいいかしら?」

「オッケーですッ」



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