エピローグ
これにて一章は終了です。ここまでお読みいただいてとても感謝していますと共に、これからも精進していきより良い作品作りをしていきたいと思います。
夜斗は重い瞼を上げると、目が眩むほどの光が襲ってきた。
スキルの類ではない。ただ窓から差し込む自然光。それすらも痛いと感じるくらいに自分は意識を失っていたのかと思い、やれやれと溜息を吐いた。
空気を吸うと襲い来るのは安心感だった。
何もかもを終えて生きているのだと虚脱が教えてくれている。
「時間は――」
「昼の一三時よ」
どこからともなく答えが返ってきたことに驚いて、夜斗は声のした方向へと意識を寄せた。
そこには、日を受けて爛々と煌めく濡羽色の髪。子供の悪戯のような風を意に介することもなく、小説に目を落としている少女が、ベッドの横においてある椅子に悠然と座っていた。
「おはよう、お寝坊さんね」
「……あれからどれくらい経ったんだ?」
夜斗はここに黒須才華が居ることは思考の可燃ごみとして捨て置いて、気になることを訊くことにした。
「まあ、三日くらいかしらね。その間、私が看病をしてあげたのよ? 寝汗で気持ち悪いだろうから全身くまなく拭いてあげたのだけれど、なかなかおっきいのね」
「ちょっと待てどういうことだッ。そんなのは別の奴に任せろよ。そもそもどうしてあんたが――ッ」
脳内ゴミ箱から問題用紙を回収しようとまくしたて、詰め寄ろうとするが急に体を動かしたせいで全身に悶絶するほどの痛みが襲い掛かってきた。
「大丈夫!?」
「問題あるが、無い」
「ハァ――もう、オーラの枯渇状態で無理したら駄目じゃない。自分で言ったことを自分で放棄して」
安堵したようで才華は、少し上げた腰を落ち着かせた。
「それと――無事で良かったわ。これだけは誰よりも先に伝えたかったの」
柔らかな笑みが夜斗の心に強く残った。
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