ラウンド5:私たちは何処へ行くのか?~時空を超えたメッセージ~
あすか:(少し感極まったような表情で、ゆっくりと語り始める)「古代エジプトの来世への信仰、ギリシャ哲学の魂への探求、近代の『神の死』という衝撃、そして現代科学が示す宇宙の姿と意識の謎…私たちは、時空を超えた賢人たちの知の激流に揉まれ、多くの根源的な問いと向き合ってきました。」
あすか:「死後の世界はあるのか、ないのか。魂は不滅なのか、脳と共に消え去るのか。絶対的な価値は存在するのか、私たちが創り出すのか…。今宵、明確な一つの『答え』に辿り着くことはありませんでした。しかし、もしかしたら、簡単に答えが出ないからこそ、人類はこの問いを何千年もの間、問い続けてきたのかもしれません。」(対談者たちを順に見渡す)
あすか:「だからこそ、最後に皆様に伺います。これまでの長い、そして白熱した議論の全てを踏まえ、時空を超えて今を生きる私たちへ…私たちが、限りあるこの『生』と、必ず訪れる『死』にどう向き合い、そしてこの一度きりの人生をどう生きるべきか。その指針となるような、魂からのメッセージを、お一人ずつ、お聞かせいただけますでしょうか。」
(あすかは一歩下がり、最初の話し手であるイムホテプに視線が集まる。背景にはナイル川が流れ、ピラミッドがそびえ立つ古代エジプトの風景が荘厳に映し出される)
イムホテプ:(ゆっくりと立ち上がり、背筋を伸ばし、威厳に満ちた声で語り始める)「聞くがよい、遥かなる未来の子らよ。汝らの時代がどれほど移り変わり、技術が進歩しようとも、太陽が東から昇り西に沈むように、生あるものが死を迎える理は変わらぬ。死は終わりではない。永遠の生命へと続く、聖なる扉なのだ。」
イムホテプ:「だが、忘れるな。その扉を開き、楽園アアルの野へと至るための鍵は、汝らが今を生きる、この現世にこそあるのだ。マアト…すなわち真理、正義、そして宇宙の秩序に従い、心に偽りなく、他者を思いやり、調和を重んじて生きること。それこそが、来世の幸福を約束し、そして何より、汝らの現世を真に豊かにする道なのだ。神々は常に汝らを見ている。汝らの心臓の重さを、その日々の行いを、決して忘れることなく意識せよ。マアトと共に歩め。」(深く一礼し、静かに着席する)
あすか:(頷きながら)「現世での生き方が、来世、そして今を豊かにする…イムホテプ様、ありがとうございます。」(次にプラトンへ視線を移す。背景には、陽光降り注ぐ古代ギリシャのアカデメイアの庭園が映し出される)
プラトン:(穏やかな表情で、語りかけるように話し始める)「死を過度に恐れる必要はないのだよ。真に恐れるべきは、無知であること、魂を気遣わず、不正を働き、善から遠ざかってしまうことだ。哲学する、すなわち知を愛し求めるということは、ある意味で『より善く死ぬための練習』でもある。肉体的な欲望や束縛から魂をできる限り解放し、永遠にして完全なる真・善・美のイデアへと近づこうとする営みだからだ。」
プラトン:「しかし、それは決して、この現実世界から目を背けることではない。むしろ逆だ。イデアの光に照らされることによって、我々はこの不完全な現実世界の中で、何をなすべきか、どう生きるべきかの指針を得るのだ。洞窟の影に惑わされず、真の実在を見つめよ。そして、絶えず自問自答せよ。『徳とは何か?』『正義とは何か?』『善とは何か?』と。汝自身を知り、汝の魂をより善きものへと導くこと、それこそが、人間に与えられた最も重要で、最も幸福な営みなのだから。」(静かに微笑み、着席する)
あすか:「魂を善くすること…それが哲学することの意味…プラトン様、深いお言葉、ありがとうございます。」(次にニーチェへ視線を移す。背景には、険しい岩山が連なり、頂には暁の光が差し込んでいるような映像が映し出される)
ニーチェ:(立ち上がり、強い眼差しでカメラの向こうの視聴者を射抜くように、情熱的に語り出す)「未来を生きる者たちよ!いつまで過去の亡霊に、天上の幻影に、来世という甘美な毒に魂を売り渡しているのだ!神々は死んだ!もはや我々を導く絶対的な権威も、約束された楽園もない!それを嘆くか?否!これこそが我々の自由だ!我々が真に人間となるための出発点なのだ!」
ニーチェ:「この大地にしっかりと根を下ろせ!虚無の深淵を恐れるな!そこにこそ、新たな価値創造の可能性がある!他人の作った道徳や価値観に盲従する『ラクダ』であることをやめよ!古い価値を破壊する勇気ある『獅子』となれ!そして、過去に囚われず、未来を恐れず、今この瞬間を無心に肯定し、遊び戯れる『幼子』のように、自らの意志で新たな価値を創造するのだ!」
ニーチェ:「そして聞け!この人生が、その全ての苦痛、退屈、絶望、そして歓喜を含めて、全く同じように永遠に繰り返すとしても、『結構だ!もう一度!』と心から望み、祝福できるほどの強靭な肯定の精神を持て!それが永劫回帰を受け入れるということだ!道は自分で切り開け!他の誰でもない、お前自身の人生を生きろ!超人たれ!」(言い切り、力強く着席する)
あすか:(息をのみながら)「自ら価値を創造し、この生を肯定する…ニーチェ様、魂を揺さぶるメッセージ、ありがとうございます。」(最後にセーガンへ視線を移す。背景には、美しい星雲が広がり、ゆっくりと回転する地球の映像が映し出される)
セーガン:(温和な笑みを浮かべ、語りかけるように話し始める)「私たちは、この広大な宇宙、138億年の時間の中で、ほんの一瞬、この小さな惑星の上に現れた存在かもしれません。科学は、私たちの意識が死後も存続するという確かな証拠を、今のところ示してはいません。その事実に、寂しさや不安を感じる人もいるでしょう。」
セーガン:「しかし、見方を変えれば、これほど素晴らしいことがあるでしょうか?物質が、偶然と必然の長い連鎖の果てに、自らを意識し、宇宙の美しさや法則性に感動し、愛や思いやりを感じる存在にまでなったのです。この生命、この意識こそが、私たちが知る限り、宇宙における最も貴重で、最も驚くべき奇跡なのです。」
セーガン:「ですから、この一度きりの、かけがえのない生を大切にしましょう。知的好奇心を持ち続け、学び、宇宙の謎を探求しましょう。科学的な思考、批判的な精神を忘れずに、しかし同時に、他者への共感と、この壊れやすい故郷の惑星への責任感を持ちましょう。未来に何が待ち受けているかは誰にも分かりません。しかし、私たちが知識と知恵、そして勇気を持って協力するならば、より良い未来を築くことができるはずです。希望を失わないでください。私たちは、星屑から生まれ、星々を見上げる存在なのですから。」(穏やかに頷き、着席する)
あすか:(感動を隠せない様子で、深く息をつく)「イムホテプ様、プラトン様、ニーチェ様、セーガン様…古代の信仰、哲学の叡智、近代の情熱、そして現代科学の理性と希望…それぞれの時代、それぞれの場所から紡ぎ出された、力強く、そして深く心に響くメッセージ…本当に、本当にありがとうございました。」
あすか:「死後の世界への答えは、やはり一つではありませんでした。しかし、だからこそ、私たちは考え続けるのかもしれません。自分にとっての真実は何か、限りある生をどう生きるべきか、そして、私たちは一体、何処へ向かおうとしているのか…。」(少しの間、静寂が流れる)
あすか:「この『歴史バトルロワイヤル』が、皆さんの心の中に、新たな問いや、明日への希望の光を灯す、そんなきっかけとなれたなら、案内人として、これ以上の喜びはありません。」
(感動的な音楽が最高潮に達し、4人の賢者たちの様々な表情を映し出しながら、最終ラウンドが終了する)