みんなの質問コーナー
(スタジオの雰囲気が少し和らぎ、明るいBGMと共に画面にポップな「みんなの質問コーナー」というタイトルロゴが表示される)
あすか: 「いやー、ラウンド1、ラウンド2と、時空を超えた知性のぶつかり合い、本当に凄かったですね! 私もクロノスも、もう頭がクラクラです!」(少し大げさに頭を振ってみせる)
あすか: 「さて、白熱した議論が続いていますが、ここで少しだけブレイクタイム! とはいっても、ただの休憩ではありませんよ? なんと、この番組をリアルタイムでご覧の視聴者の皆さんから、たくさんの『物語の声』、つまり質問が寄せられているんです! この時間では、皆さんの疑問に、賢人たちに直接答えていただきましょう!」(クロノスタブレットを操作する)
あすか: 「はい、来ました! えっと… ハンドルネーム『ピラミッドパワー信者さん』から、イムホテプ様へのご質問です。『イムホテプ様のお話、神秘的で感動しました! でも、魂の「バー」と「カー」の違いがよく分かりませんでした。どっちも魂なんですか? どう違うのか教えてください!』とのことです!」
イムホテプ: (質問者に向けて、わずかに頷く)「フム… 良い問いだ。我々の魂の概念は、汝らの時代の言葉では捉えにくいかもしれぬな。」(少し考え、ゆっくりと説明する)「バーとは、人格や個性そのものだ。鳥の姿をとり、死後、自由に肉体を離れて天界と冥界を行き来する。いわば、その者自身の『心』に近いものだ。一方、カーは生命力、あるいは生きていくためのエネルギーそのものを指す。これは肉体と共に生まれ、死後も存在し続け、子孫からの供物を糧とする。カーがなければ、バーも来世で活動できない。」
あすか: 「なるほど… バーが個性で、カーが生命エネルギー… どっちも大切なんですね。」
イムホテプ: 「そうだ。例えるならば… バーが船を操る船長、カーが船を動かす風や食料、といったところか。両方が揃って初めて、死者は永遠の旅を続けることができるのだ。」
プラトン: (興味深そうに)「魂が複数の要素から成り立ち、それぞれ異なる役割を持つという考えは、非常に示唆に富んでいますね。我々の言う魂の三分説(理性・気概・欲望)とも、単純な比較はできませんが、魂の複雑性という点では通じるものがあるかもしれません。」
ニーチェ: (鼻で笑う)「フン、船長だの風だの… 言葉遊びに過ぎん。結局は、形のないものを無理やり説明しようとしているだけではないか。」
あすか: (ニーチェの発言は軽く受け流し)「ピラミッドパワー信者さん、ありがとうございました! 次の質問にいきましょう!」(クロノスを操作する)「お次は… ハンドルネーム『ソクラテスの弟子(自称)さん』から、プラトン様へ。『プラトン先生のイデア論、すごく高尚で難しいです! イデアって、結局プラトンさんの頭の中にしかない考え、つまり主観的な思い込みなんじゃないですか? みんなが納得できる客観的なものなんですか?』… おっと、これはかなり核心を突いた質問ですね!」
プラトン: (少し困ったように微笑むが、すぐに真剣な表情になる)「鋭い問いだね、ソクラテスの弟子(自称)君。確かに、イデアは感覚で捉えることはできない。しかし、主観的な思い込みかと言われれば、断じて否だ。」(テーブルの上に指で円を描く仕草をする)「例えば、ここに私が円を描いたとしよう。これは完全な円かね? いや、どんな達人が描いても、微かな歪みや線の太さのむらがあるだろう。現実世界に『完全な円』を描くことはできない。」
プラトン: 「しかし、我々は皆、『完全な円』というものを知っている。その概念を共有し、幾何学の定理を議論することができる。それはなぜか? 我々がそれぞれ勝手に『円』を思い描いているだけなら、そのような普遍的な議論は不可能だろう。それは、『完全な円のイデア』が、我々の主観を超えて、客観的に実在するからなのだ。我々が見ている不完全な円は、そのイデアの『影』に過ぎないのだよ。」
セーガン: (頷きながら)「なるほど。数学的な概念や物理法則が、個人の主観を超えて普遍性を持つ、という点に通じる考え方ですね。科学的に言えば、それらは脳が世界を認識・記述するためのモデルや言語ですが、それが現実に非常によく適合し、予測を可能にする。その『適合性』自体が、ある種の客観的な真実を示唆しているとも言えます。」
あすか: (感心して)「影… なるほど! ちょっと難しいけど、なんとなくイメージできました! ソクラテスの弟子(自称)さん、いかがでしたか?」(クロノスを操作)「さあ、どんどんいきましょう! 次は… 来ました! ハンドルネーム『打倒! ラクダさん』から、ニーチェ様への質問です! 『ニーチェさんの言葉、シビれます! でも「ルサンチマン」ってよく聞くけど、具体的にどういう意味なんですか? なんか、ただの悪口とか妬みみたいな感じですか?』とのことです!」
ニーチェ: (待ってましたとばかりに、目をギラリと光らせ、不敵な笑みを浮かべる)「悪口だと? 妬みだと? フン、そんな生易しいものではないわ!」(声を強める)「ルサンチマンとは、もっと根深い、奴隷道徳の根源にある毒なのだ! いいか、よく聞け!」
ニーチェ: 「現実の世界で、力において、才能において、あるいは生命力において劣る者たちがいる。彼らは強者に対して直接的には勝てない。その無力感から生まれる鬱屈した恨み、妬み、復讐心… それがルサンチマンだ! そして、この卑屈な感情が、なんと『価値の転換』という卑劣な手段を発明したのだ!」
あすか: 「か、価値の転換…?」
ニーチェ: 「そうだ! 強者の持つ力、富、健康、美しさ… それらを『悪』とし、逆に自分たちの持つ弱さ、貧しさ、病、醜さ… それらを『善』であると、価値観をひっくり返してしまったのだ!『金持ちが天国に入るのは難しい』『柔和な人々は幸いである』『謙虚さは美徳だ』… これらは全て、強者へのルサンチマンから生まれた、弱者の自己正当化であり、自己欺瞞なのだ! それが奴隷道徳の本質よ!」(拳を握りしめる)
あすか: (やや引き気味に)「ひえ… な、なんだか、ものすごいエネルギーですね… 打倒! ラクダさん、ご理解いただけましたでしょうか…?」(苦笑い)
イムホテプ: (眉をひそめ)「弱さを善とするだと…? 理解できんな。マアト(秩序)においては、強き者は弱き者を守る義務があるが、弱さそのものを賛美することはない。」
セーガン: 「社会心理学的に見ると、抑圧された集団が独自の価値観を形成し、連帯感を強めるという現象は観察されますね。それが必ずしも『欺瞞』と言えるかは議論があるところですが…」
あすか: 「は、はい! 皆様、たくさんの質問、そして熱い回答、本当にありがとうございました! 難しいお話も、こうして質問を通して考えると、少し身近に感じられますね。まだまだ聞きたいことは山ほどありますが、お時間のようです。」(名残惜しそうに)
あすか: 「さあ、この知的興奮を胸に、次のラウンドへと進みましょう! 次は、あのニーチェ様の『神は死んだ』という言葉の真意に迫ります! どうぞお見逃しなく!」
(質問コーナーが終了し、再びスタジオの照明が変わり、次のラウンドへの期待感を高める音楽が流れる)