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第14話 RPGの選択肢って何故あるの?

ダンジョンの運営を行いますか?

→はい

 いいえ

 玲子の嘆きに、ははは、と北條が笑った。

「完全に仕事モード入ってたね」


「まだやるって決めたわけじゃないからね!」


「もう諦めたら?」


 北條の言葉に、うんうん、とアンドリューが強く頷く。


 はあ、と玲子は大きなため息をついた。


 こんなとき、天城さんならどうしただろう?


 なにか困難に直面したとき、玲子はまずそれを考える。生前なら、直接問うことができた。今は、もういない彼に、心の中で問いかける。


 天城さん、私どうしたらいいですか?


 今、目の前にはウインドウがあって、選択肢が表示されている。それに、はいと答えるべきか、いいえと答えるべきか。玲子のカーソルは、ふたつの選択肢を行ったり来たりする。


 玲子はふと、天城との会話を思い出す。



 天城は言った。

「RPGの選択肢、あれ、なんであると思う?」


 玲子は少し考えて答える。

「プレイヤーの選択を、その後のストーリーに反映させるため……」

 言いながら、違うなと気づく。

「じゃないですね? どっち選んでも基本、ストーリーは変わんないもん」


「そうだな。ゲーム側で、選択肢の数だけストーリーを用意することは難しい」


「言われてみれば、なんであるんだろう?」

 あまり考えたことがなかった。普通にあるから、きっと必要なものなんだろうな、という程度の認識であった。


「あれはな。プレイヤーに、選択をした、という体験を与えるためにあるんだ」


「選択したという体験、ですか?」


「そう。実際問題、選択の結果はどっちであってもさして変わらないだろう。だけど、自分が選択をした、という体験は残る。それが重要なんだ」


「それのどこが重要なんです?」


 いまいちピンときていない玲子に、天城は言う。

「自分が選択した結果だから、その結果起こったことが、自分ごとになる」


「でも、結果は同じですよ?」


「それは、プレイヤーからはわからない。まあ、今はメタっちまって、わかってる奴も多いけどもさ。それでも、攻略サイトを見たりしない限り、その選択肢が何に影響しているかはわからない。だから、結果を自分ごととして受け入れる」


「なるほど。要は、責任の所在の話ですね。プレイヤー自身が選んだ結果だと錯覚させることができれば、その後の展開にプレイヤー自身が責任をもってくれる」


 天城は頷いた。

「一旦、プレイヤーがその選択を自分ごととして受け入れてくれたら、そのあとのストーリーの説得力が増すんだ。そのために選択肢はある」


 そこで、天城はまじめくさった表情になる。

「人生の選択肢だって同じことだぞ。自分で選ぶんだ。そうしたら、その結果は自分ごとになる。誰のせいにもならない。自分の人生が自分ごとじゃなくて何だ。だから、自分で選べよ」


 はあ、と答える玲子に、天城は破顔する。

「……って、これはゲーム論じゃなくて人生論だな」



 そうね、と言って、玲子は笑った。


 選ぼう。誰にも頼らず、自分で。

 RPGの選択肢みたく、どっちを選んでも一緒っていうことは、絶対にない状況だけれども。


 選ぶなら面白いほうだろう。なにせ玲子はゲームディレクターなのである。面白さに貪欲でなくてどうするというのだ。


「仕方ない、やるわ。やってやるわよ!」


「ありがとうございます!」

 アンドリューが涙を流さんばかりに喜んだ。


 玲子は慌てて言った。

「でも、帰れるときがきたら、帰してもらうからね!」


「承知いたしております」

 アンドリューは頭を下げる。


 北條が言った。

「とりあえず、街に出てみない? 折角だから、冒険者ギルドってところに行くついでに、いろいろ見て回ろうよ」


 玲子は頷いた。


 アンドリューが言った。

「その前に、ダンジョン管理者の変更を行わせてください。我が領の魔法使いにお会いいただけますでしょうか」

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