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ダンジョン閉鎖! そのとき運営は!?

ダンジョン運営にトラブル発生!

詰めかける冒険者クレーマーたちに対し、運営チームの対策は――?

 ダンジョンの入口となる大門の前に、多くの冒険者たちが詰めかけていた。中には、馬車で駆け付けた貴族もいて、それは彼ら冒険者たちの雇用主である。

 彼らの数には遠く及ばないが、衛兵たちもまた、普段とは比べようもないほどの人数が出張っている。この騒ぎが暴動へと発展しないように、睨みを利かせる役目である。


「だから、どうなってるんだ!?」

 冒険者たちの先頭に立つ男ががなる。


 その前に立つ、衛兵に守られた貴族と思しき男が、こちらも大音声で答える。

「ですから、今、ダンジョンには問題が起きているため、皆様をお入れすることはできません! 調査にはまだ時間がかかり、終了の見込みは未定です。どうかお引き取りを!」


「それは昨日も聞いたぞ! 問題って何だ!? いつ入れるようになるんだ!?」

「もう三日だぞ。俺たちはダンジョン探索で食ってるんだ。貴族との契約だってある!」

 そうだ、そうだ、という賛同の声が冒険者たちからあがる。


「皆様には本当に申し訳なく思っていますが、何と言われましても、調査が終わるまで、皆様をお入れすることはできません!」


「だから、その調査はいつ終わるんだ!?」


「今のところ難航しており、お時間の目途も立っておりません!」


「運営を連れてこい! 俺が活を入れてやる!」

「何でもいいからダンジョンに入れろ!」


 うおおお、と冒険者たちが声をあげて大門に殺到する。しかし大門には結界が張ってあり、衛兵が門扉を開かない限り入ることはできない。

 衛兵の一人が、冒険者の奔流から必死で貴族の男――ベルモント候の部下であるアルス男爵を助け出した。

 状況は非常に危うい。ほとんど暴動となりかけている。


 アルスは、懐に忍ばせた交信珠に思念を送った。

 ――ベルモント様、もう持ちません。いかがいたしますか?


 しばらくして、彼の雇用主であるアンドリュー・ベルモントから返答がある。

 ――いまタチバナ様にお伺いを立てた。方針を伝える。


 アルスは、念話を聞いて一つ頷くと、声を張り上げた。

「ベルモント候と運営より皆様の休業補償をさせていただきます! ひとまず落ち着いてください!」」


 ぴたり、と冒険者たちの動きが止まり、傾聴する姿勢になる。

「休業補償だって? 一体、なにがもらえるんだ?」

「金か? 聖金貨でいくらだ?」


「いえ、聖金貨ではございません。皆様には――」


 ベルモント候の居城の一室で、疲れた顔の一同が会している。

 問題の発生から二日が経過し、ほとんど不眠不休で対策に当たっているのである。特に、ダンジョンの術式の解析に当たっているプログラマーの水谷には、くっきりとクマが浮いている。


「水谷、状況の報告をお願い」


 玲子の問いに水谷が、はい、と答える。

「ようやく、問題の原因を特定できました。やっぱり、今回のイベントで手を入れた術式に不具合がありました。冒険者を入れた本番環境でしか再現しないものだったので、発見が遅くなりました」


「直せる?」


「すぐに直せます。直せはするんですけど、その影響範囲が問題です。ダンジョンの様々な個所に影響するモジュールなので、修正して全部再チェックするとなると……」


 玲子は頭の中で計算する。想定は四日。

 既に、不具合の調査で三日を使ってしまっている。合わせて一週間のダンジョン停止はまずい。

 玲子は言った。

「今日一日でできない?」


「無理ですよ! できるわけないじゃないですか!」


 なおも言い募ろうとする水谷を、玲子は手で制した。

「再チェックは使用頻度の高い機能だけに絞る。チェックできない個所については、一旦機能閉鎖。その後、順次チェックしながら再開していく」


「使用頻度の高い機能に絞っても一日では無理です!」


「じゃあ、もっと絞るしかないわ。影響範囲のリストは出せる?」


 既に用意していたのだろう。エルフの魔法使いであるフェリスが、一枚の紙を玲子に手渡す。

 玲子はそれに素早く目を通すと、ペンで印をつけていく。

「これとこれ。あと、これね。この三つ以外は全部後回し」


 玲子の突き出した紙を水谷が受け取る。


 横からそれを覗き込んで、デザイナーの北條が言った。

「なにこれ。これじゃあ、ほとんどの機能を閉鎖することになるんじゃない?」


「なるわね」


「いいの?」


 いい、と玲子は断言する。

「サービスの停止こそ悪! サービスを止めている間は、一銭も売上にならないのよ!」


「タチバナ様」

 とアンドリューが玲子に声をかけた。

「大門に集まった冒険者たちが暴発寸前でございます」


 ちっ、と玲子は舌打ちをする。

「仕方ないわ。伝家の宝刀を抜く時が来たようね……」


 玲子の言葉に北條の顔色が変わった。

「まさか、玲子ちゃん、アレをやるの……?」


 こくり、と玲子は頷いた。


 水谷は天を仰いだ。

「そんな……。異世界ダンジョンでまで、アレをやることになるなんて……」


 二人の言葉を聞いて、アンドリューはごくりと唾を飲み込む。


 玲子は大きく息を吸い、それから言った。


「詫び石を配ります!!」


 橘玲子はゲームディレクターである。

 それが何故、異世界ダンジョンの運営に携わっているのか。

 話は一年ほど前に遡る――。

はじめまして!

迷路平蔵と申します。本業はゲームプランナーをしています。

ゲーム開発・運営の小ネタ大ネタもりもり盛り込んでいく予定です。どうか末長くお付き合いくださいませ。

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