第4章79話:冒険者たち
<ロッシュ視点>
ザンドールの撃破後。
俺とラミアリスは、冒険者たちを殺しまわっていた。
俺が剣で冒険者を斬り殺す。
ラミアリスが毒弓で狙撃する。
冒険者たちは悲鳴を上げた。
「ぐああっ!?」
「毒が……だ、誰か、助け……」
「こ、こいつら、強い!?」
「マジでルーカーかよ!?」
一方的に虐殺する。
現在の俺たちのステータスならば、力だけでねじ伏せられる。
あらかた殺したあと、ラミアリスがひと息ついた。
「ふう……だいぶ殺ったわね」
汗をぬぐうラミアリス。
彼女は尋ねてきた。
「でも毒矢は貴重なんでしょ? 冒険者なんかに使っちゃって、よかったの?」
「冒険者といっても、こいつらはそこそこランクが高い。コーレの街の精鋭たちだ」
俺が一人で、ギルドのロビーにいた冒険者たちを叩きのめしたからな。
生半可な冒険者では、俺に対抗できないと思ったのだろう。
冒険者ギルドにいる上位ランクの冒険者たちを動員してきている。
つまりベテラン冒険者たちだ。
油断すれば、こちらも殺されかねないので、毒矢を使用することに否はない。
まあ毒矢が貴重なのは事実ではあるが。
「最悪、毒矢がなくなるようなことがあれば、またシェルスネークを狩りにいけばいいさ」
同じ場所に、同じアイテムを収集しにいくのは愚策だ。
RTA的に非効率だし、何より俺の美学に反する。
しかし一度きりで死んでしまう異世界だからな。
無理をするのが一番禁物だ。
必要に迫られたら方針を変える柔軟性も持つべきだろう。
「でも、もうほとんど冒険者はいないわ。あらかた殺せたはず――――」
とラミアリスがつぶやいた、その直後。
横の茂みから、大柄の剣士が躍り出てきた。
大剣を振りぬいてくる。
「ドラァッ!!」
ブォンッ!! と剛風を巻き起こしながら、上段の剣が俺に迫ってくる。
ソレを俺は、横にステップを踏んで回避した。
俺がさきほどまでいた位置に、大剣が突き刺さり、地面が砕かれ陥没する。
「ちっ……避けられたか」
陥没した地面から大剣を引き抜いたのは――――ギルマス。
身長192センチ、筋骨隆々というゴリラのような男だ。
赤髪。
黄色い瞳。
赤いヒゲがもじゃもじゃしている。
ラミアリスが静かに尋ねてきた。
「こいつは……?」
「ギルマスだ」
「!!」
俺の返答に、ラミアリスが目を見開いた。
「俺の顔を知っているようだな? 会った覚えはないはずだが」
とギルマスは言った。
「一応名乗っておこう。俺はコーレの冒険者ギルドで、ギルドマスターを務めているアランドールだ」
とギルマス――――アランドールが自己紹介をする。
さらにアランドールは告げた。
「報告を聞いたときは驚いたぞ。まさかルーカーごときが、うちの冒険者ギルドを襲撃し、ロビーをめちゃくちゃにしてくれるとは」
「別に襲撃したわけではない。ロビーにいた冒険者どもが突っかかってきたから、ぶちのめしただけだ」
「ははははは! 活きのいいルーカーだな! ……しかし受付嬢にまで手を挙げるのは、いささか行き過ぎというものではないかね?」
アランドールが責めるように言ってくる。
俺は肩をすくめた。
「行き過ぎというなら、貴族や庶民がルーカーに対してやっていることは、行き過ぎではないのか? ルーカーは、ほとんど家畜や奴隷のような扱いを受けている。ひどいと思わないか?」
「うん? ルーカーに対する仕打ちに、行き過ぎたことなどないだろう? 何を言っているんだお前は?」
とアランドールは怪訝そうな顔で言ってきた。
「ルーカーが殴られたり、家畜のような扱いを受けるのは当たり前のことだ。お前はブタを殺すなと言うつもりか? 牛からミルクを搾るのはひどいことか? 馬をムチで叩いて走らせるのは、当然のことだろう?」
「それと人間を同列に扱うなって話をしてるんでしょうが。馬鹿じゃないの」
とラミアリスが苛立ち混じりに言った。
するとアランドールは笑った。
「ははははは! なんだお前たち、自分を『人間』だと思っているのか?」
さらにアランドールは言ってきた。
「うぬぼれるなよ? ルーカーなど、人間未満の存在だ。人と同じ言語を話し、人と同じ姿をしているだけで、本質的に人間ではない。それをお前たちがわかっていないなら、話がかみ合わないわけだ」
別に珍しくもない、以前にも聞いたようなセリフである。
ただ……
アランドールは俺たちを馬鹿にしているニュアンスもあるが、それ以上に、本気でルーカ―を人間扱いしていない節がある。
普通の異世界人は、ルーカーを下等市民ぐらいに思っても、一応人間なので、本当の意味で獣と同列だと認識するのは難しい。
しかしアランドールは、ルーカーをナチュラルに人間未満の存在だと認識しているようだ。
『道端の石を蹴り飛ばして、何が悪いんですか?』と本気で思うようなレベルで、悪意なく、無邪気にルーカ―を迫害している目である。
「"本物"だな」
と俺はつぶやいた。
アランドールは正真正銘のルーカー迫害主義者。
まともな議論や対話は不可能である。




