第4章76話:毒
「さすがね。本当に瞬殺じゃない?」
とラミアリスが言ってきた。
「ザファトロスの剣が役に立ったな」
ルナとはまともに戦ったら苦戦を強いられたはずだ。
火力特化の戦士だが、打たれ強さもあるからだ。
しかしザファトロスの剣に秘められた必殺技『グラムバースト』は極めて強力だ。
ルナのような強者も一撃で殺すことができる。
「残りの2人も片付ける。まずはルナの遺体を木に吊るすぞ」
「ええ」
とラミアリスが応じた。
ルナは死んだ。
ルナが戻らなければ、姉であるローレッタが様子を見にくるはずだ。
ローレッタがすぐに発見できるように、ルナの死体をわかりやすい位置に展示しておく。
そうすればローレッタは取り乱し、冷静な思考を失うだろう。
だから俺たちは、ルナの遺体を近くの樹木に吊るすことにした。
ついでにこのとき、ルナのアイテムバッグを戦利品として回収しておく。
吊るす作業が終わったあとは、近くの岩の後ろに隠れる。
しばらく待機する。
ややあって。
足音がした。
「ルナ? どこにいったの?」
ローレッタである。
俺たちは息を潜める。
ローレッタが近づいてくる。
そして、ふいにローレッタの足音が立ち止まった。
「え……?」
ローレッタが取り乱し始めた。
「あ……あああぁ、ルナぁああっ!!?」
どうやら死体を発見したようだ。
ローレッタがどさりと両膝をつく音がした。
ルナの死を目のあたりにして、現実を信じられず、放心したのだろう。
―――俺はラミアリスに視線で指示を送った。
ラミアリスは一つうなずいた後、弓矢を持って岩から顔を出す。
以前に製作したシェルスネークの毒弓と毒矢だ。
その弓矢を、ローレッタ目掛けて構える。
そして。
――――発射。
ラミアリスの弓が、ローレッタへと吸い込まれていく。
「がっ!?」
ローレッタに命中した。
命中したのはローレッタの肩口である。
左腕の上腕部、三角筋がある部位に毒矢が突き刺さっている。
「よし、狙撃成功よ!」
「ナイスだ」
俺はザファトロスの剣を持って、岩の陰から躍り出た。
そのままローレッタに斬りかかる。
「!!」
しかしローレッタは素早く立ち上がり、バックステップで距離を取った。
肩に矢が突き刺さった状態でも、ローレッタの動きは軽快だ。
(まだ毒は回っていないか)
と俺は分析する。
即効性の毒だが、本当の意味で即効ではない。
毒が回ってくるのに30秒ぐらいはかかるだろう。
「あなたたちが……」
とローレッタがつぶやいた。
地の底からわきあがるような、憎しみに満ちあふれた声である。
「あなたたちが……ルナを殺したの!!?」
激怒と憎悪を叩きつけるような問い。
俺は答える。
「ああ。殺したぜ」
「!!」
「あんたら、俺たちを殺しに来たんだろ? だったら逆に、俺たちに殺されることもあるだろうさ」
ローレッタの目がみるみる憎悪に染まっていく。




