第3章56話:退散
ザファトロスは怒りをにじませていたが、次第に笑い始める。
「くく、くくくく……くはははははははは!!」
大笑するザファトロス。
そしてザファトロスは告げてきた。
「あまり図に乗るなよ人間。我の本気がこの程度だと思っているのか? 確かに貴様は、人間の割に腕が立つようだが……しょせんは人間だ。上級魔族である我には勝てない」
ザファトロスが剣をもてあそぶように振るう。
さらに宣言した。
「我が貴様に、真の絶望を教えてやる」
次の瞬間。
ザファトロスから強大な魔力が溢れる。
上半身の赤い肌に、魔力の線が浮かびだす。
血の色をしたブレードにもオーラのようなものがまといはじめた。
(来たか。第二形態)
その強大な魔力の波動にラミアリスが身震いしている。
だが俺は内心、微笑みを浮かべていた。
ようやくシルバーソードの出番のようだ。
「我の真なる力だ。どうだ、人間? 恐れおののいたか?」
ザファトロスが得意げに告げてくる。
「許しを乞うても遅いぞ。さきほど無礼な物言いの数々《かずかず》……我を愚弄した罪、万死に値する。貴様を八つ裂きにして、その命を喰らい、我が血肉としてくれよう」
ザファトロスが血のブレードをぶん、ぶんともてあそぶように振るう。
そして臨戦態勢に入った。
第二ラウンドが開幕しそうになった、その瞬間。
俺はシルバーソードの特殊効果を発動する。
「――――――――――」
シルバーソードが白い輝きを帯びる。
次の瞬間。
シルバーソードから目にも留まらぬ速さで、真っ白な光線が放たれた。
その光芒が、ザファトロスを襲う。
「ぐ、あああああああああッ!!?」
光芒の速さは超高速であり、ザファトロスは全く反応することができない。
直撃し、ザファトロスの胸に巨大な穴が空いた。
シルバーソードの特殊攻撃は、上級魔族を一撃で葬る奥義だ。
ゆえに致命傷である。
「バカ、な……なんだ、いまの、は……!?」
ザファトロスが信じられない様子で言葉を漏らしながら、ゆっくりと倒れていく。
「我が、敗れるなど……」
ずしん、と地に倒れ伏せるザファトロス。
直後、ザファトロスの身体が、紙吹雪のごとくパラパラと消えていく。
やがてザファトロスの身体が崩れ去り、跡形もなく消失した。
ラミアリスがぽつりとつぶやく。
「倒した、の……?」
「ああ、そうだ」
と俺はうなずいた。
同時に俺はレベルアップする。
一気にレベルが2も上がった形だ。
上級魔族は経験値が美味しい。
「……」
ザファトロスのいた位置に、二つのアイテムが落ちている。
石と剣だ。
俺はそのドロップアイテムを回収する。
拾えたものは以下である。
◆◆◆
【回帰の石】
レベルが5下がる代わりに、一度だけダンジョンから脱出することができる。
消費すると、無くなる。
【ザファトロスの骨】
上級魔族ザファトロスの骨。
武器や防具の素材になる。
◆◆◆
どちらのアイテムも、極めて重要である。
今後の攻略に非常に役立つ。
アイテムバッグにストックしておこう。
さらに俺たちは女領主イザナのアイテムバッグも回収しておく。
あらかた回収したいものは回収できたので、俺は退散を宣言した。
「さあ、用が済んだ。外に出るぞ」
「ええ」
地下室をあとにする。
階段を昇って、屋敷の1階へと戻ってくる。
すると。
「!!」
執事と遭遇する。
「る、ルーカー!?」
「……」
俺は、執事にタックルを食らわす。
「ぐっ!?」
執事がひっくり返った。
そのまま俺たちは執事の横を走り抜ける。
「殺していかないの?」
「ああ。あいつは生かしておく」
ここで、あの執事にわざと見つかっておくことで、女領主イザナを殺したのがルーカーだとバレる。
そして俺たちのことが指名手配されることになる。
その指名手配を、俺は逆手に取るつもりだ。
「……」
俺たちはキッチンの勝手口から、屋敷を飛び出す。
かくして領主討伐の夜が、過ぎていくのだった。
第3章 完




