第3章53話:召喚
イザナが膝をつく。
そこへラミアリスが再度、斬りかかる。
「ハァアアアッ!!」
イザナが慌てて立ち上がって、後退しようとする。
しかし遅い。
ラミアリスの斬撃は、イザナを斜めに切り裂いた。
「がああああああっ!!?」
イザナが大量の血飛沫をあげて、ふたたび膝をついた。
致命傷ではない。
が……かなりのダメージが入ったはずだ。
「おのれ……ルーカーの分際でよくも私を斬りつけてくれたな」
とイザナが俺たちを鋭い目で睨みつけてくる。
「生かして帰さぬ。必ず八つ裂きにしてくれる」
強烈な殺意を発するイザナ。
完全に激怒している様子だ。
俺たちは一層、集中力を高め、イザナの出方をうかがう。
そのときだった。
『良き血汐だ』
地の底から響くような声がした。
「この声は……」
何かを察したようにイザナがつぶやいた。
(上級魔族の声だ)
と俺も察する。
『その命、我に寄越せ』
次の瞬間。
床に描かれた巨大な召喚魔法陣が光を放った。
俺とラミアリスは慌てて召喚陣から退避する。
召喚陣から血の色をした糸が伸びて、イザナを拘束しはじめた。
「なっ!? ぐああああああああああああ!!?」
イザナが悲鳴を上げた。
ジタバタともがくが、血の糸は完全にイザナを束縛しており、身動きが取れないようだ。
「いったい何が……」
とラミアリスが疑問を口にした。
「召喚魔法陣に眠る上級魔族が、イザナの生命力を奪っているんだ」
と俺は説明する。
イザナから流れた血が、召喚魔法陣を通して上級魔族へと流れ込んだ。
その血に、上級魔族の意識が目覚めた。
イザナは領主だけあって魔法使いとしての実力があり、魔力も上質だ。
ゆえに上級魔族にとってイザナの血は、このうえなく美味な食事だったのだろう。
「やめろ!! 私は生け贄ではないぞッ!!」
とイザナは叫んだ。
だが。
その叫びを無視するかのように、新しく伸びてきた血の糸が、ひとつの形に変わっていく。
血のブレードである。
そのブレードによって、いったい何をするつもりなのか……すぐに察せられた。
イザナが、死の予感を覚えて目を見開く。
「やめろおおおおおおぉぉぉおおおおおッ!!!!」
そして。
血のブレードがイザナの心臓に突き刺さる。
肉をぶつりと貫く音が鳴った。
「ごふっ……」
イザナが血を吐いた。
心臓を串刺しにされた状態。
致命傷だ。
目が虚ろになり、力なくうなだれるイザナ。




