第3章51話:地下
扉を開ける。
そこは小さな部屋だ。
中央奥に、地下へと続く階段がある。
「あの階段の下に領主がいる。準備をしておけ」
と俺は小声でラミアリスに伝えた。
「わかったわ」
俺たちは階段を降り始める。
らせん階段である。
降りる。
降りる。
やがて最下層に到達する。
古びた扉があった。
その扉を開ける。
広い部屋だ。
壁際に、照明として光魔石が配置されており、部屋の内部は明るい。
床に大きな魔法陣が描かれていた。
魔法陣の端に二人の女性がいた。
一人は高級そうな魔法のローブを着た女性。
彼女こそ領主――――イザナだ。
そしてもう一人はルーカー。
彼女はボロを着た状態で、魔法陣に倒れ、おびただしい血を垂れ流している。
おそらく死んでいる。
この部屋で何がおこなわれていたのか。
なんとなく察せられる光景である。
「む!?」
女領主イザナが、俺たちの存在に気づき、視線を向けてくる。
イザナは亜麻色のロングヘアをした中年の女性だ。
目つきは切れ長で、鋭い。
気品を感じさせるたたずまいだが、同時に、嫌な雰囲気をビンビンに感じさせる風格もある。
彼女のローブは、血に濡れていた。
「侵入者? 警備の者どもは何をやっていた……?」
とイザナが口にした。
俺は告げる。
「警備は突破してきた。あんたの命をもらうぞ、女領主イザナ」
「なるほど、刺客というわけか。……む? お前たち、もしや、ルーカーなのか?」
どうやら階級判定魔法を使ったらしい。
俺は答えた。
「ああ、そうだ」
「なんと……! ルーカーが、私を暗殺しにくるとはな。くくくく、げに面白きこともあるものよ」
くつくつとイザナが笑う。
そのときラミアリスが尋ねた。
「あなた……この部屋で何をしていたの? そのルーカーの女性は……」
「ああ、もう死んでいるさ」
「!!」
「このルーカーは生け贄だ。上級魔族を召喚するためのな!」
足元に広がる魔法陣は、上級魔族を召喚するための召喚陣だ。
必要なだけの生け贄を捧げたら、上級魔族が召喚されるという仕組みである。
例によってルーカーは人間扱いされておらず、召喚のための道具として利用されたのだろう。
「相変わらず、ルーカーの扱いは最悪で、嫌になるわね」
とラミアリスは嘆くように言いながら、肩をすくめた。
イザナは尋ねてくる。
「それで……暗殺の目的は、ルーカーの窮状を憂いてか? それともルーカーを虐げる貴族への復讐か?」
その問いに、俺は答えた。
「いいや、復讐でもなければ、世直しをするつもりもない」
「では、なぜだ?」
「答えるつもりはないな」
と俺は言った。
「くく、そうか」
とイザナはあいづちを打ってから、告げた。
「ちょうどいい。生け贄の数が足りないと思っていたところだ。お前たちを殺して、補充することにしよう」
イザナがアイテムバッグから魔法杖を取り出し、殺意をにじませた。
俺たちも臨戦態勢を取る。




