第2章44話:結末
ラッガルがつぶやいた。
「お前相手には油断できないようだな……なら、これを使おう」
そしてラッガルがバッグからアイテムを取り出した。
黄色の液体が入ったポーション瓶である。
「バフポーションか」
と俺は推定した。
ラッガルはピンチになるとバフポーションを使うのは、ゲームでも同じだった。
ラッガルが指でバフポーションの蓋を開けた。
そして中身を飲み始める。
「んく、んく!」
ラッガルがバフポーションを飲み干した。
次の瞬間。
ラッガルの全身に一瞬だけ黄色いオーラが溢れる。
バフがかかったエフェクトである。
ちなみにラッガルが使ったバフポーションは、速度上昇のポーションだ。
ゆえに現在のラッガルは、さきほどよりスピードが上がったわけである。
「アイテムに頼るのか? ルーカー相手にドーピングなんて、情けないな」
と俺が煽るように言った。
するとラッガルが笑う。
「ははははは! 挑発のつもりか? それとも、卑怯とでも言いたいのか?」
そして不敵な笑みを浮かべながら告げるラッガル。
「殺す前に教えといてやるよルーカー。俺は勝つためにはどんな手でも使う男だ。今回のバフポーションが卑怯だとは思わないが、別に卑怯な手だったとしても、ためらいなく利用する」
さらにラッガルが告げた。
「勝負ってのは、最後に立ってたやつが正義だからよ。どんな手を使っても勝たなきゃ意味ないんだわ」
「そうか。別に異論を述べるつもりはない。お前が正しい」
と俺はラッガルの理屈を肯定した。
そのうえで、告げる。
「……でもそういうことなら、俺が同じ理屈で戦っても、文句はないよな?」
「あ?」
とラッガルが怪訝そうな顔をする。
そのとき。
――――風を切る何かがあった。
矢である。
ミノタウロスアーチャーの矢。
ラミアリスが、雑木林から矢を放ってきたのだ。
その矢は、強力な威力と速度でラッガルの背中へと飛来していく。
そして。
「むっ!!? ぐあああっ!!?」
ラミアリスの矢が、ラッガルの背に突き刺さった。
ラッガルが苦悶の声を上げながら、よろめく。
そんな彼に対して、俺はすかさず斬撃を放った。
しかしラッガルは、脅威的な立ち直りの速さで、俺の攻撃を回避した。
ラッガルが俺から離れようとする。
だが、そんなラッガルに向かって飛来する影があった。
一匹のスライム――――フラウである。
フラウがラッガルに飛びかかって、そのあごに頭突きを食らわした。
「ぐぶぁッ!!?」
フラウのタックルをあごに直撃したラッガルが、地面に転がる。
倒れたラッガルに追撃を浴びせるのは簡単だった。
俺はラッガルの太腿に剣を突き刺した。
「が、あああああああああああッ!!?」
ラッガルが絶叫を上げる。
俺は突き刺した剣を引き抜いた。
血が吹き上がった。
痛みにもだえ苦しむラッガル。
俺はそんなラッガルを見下ろしながら告げる。
「勝敗は決したな」
ラッガルは俺を見上げて、歯ぎしりをした。
「仲間が、いた、だと!!? スライムも、か!?」
「ああ、そうだ」
俺が肯定すると、ラッガルが歯ぎしりした。
「くそがッ!! 卑怯だろうがァッ!!」
「どんな手を使っても、勝てば正義……自分でそう言ったのを忘れたのか?」
俺はラッガルの顔面に、蹴りを浴びせる。
「ぐふぁっ!?」
ラッガルの歯が吹っ飛んだ。
俺はそんなラッガルに、剣の切っ先を向ける。
「終わりだ。死んどけ」
「待て――――ぐあああぁっ!!?」
剣を突き刺す。
何度も突き刺し、ラッガルの命を奪った。
血だらけになり、ラッガルは動かなくなる。
これでラッガルの討伐は完了するのだった。




