第2章42話:襲撃2
そして最後に兵士長。
「貴様!!」
兵士長が斬りかかってくる。
さすがに兵士長だけあって、威力やスピードが他の兵士とは違う。
だが、俺はこの兵士長の攻撃はゲームで何度も経験している。
この程度の攻撃は、目をつむっていても見切れる。
「ふっ!!」
「なっ!?」
兵士長の攻撃を避けつつ、カウンターの一撃を放つ。
その斬撃が兵士長を斜めに切り裂く。
「があぁッ!!??」
絶叫する兵士長。
俺はトドメの一撃を放ち、兵士長の首を刎ね飛ばした。
これで兵士たちは全滅である。
「ふう……」
と、ひとつ深呼吸をする。
そのとき。
横合いから鋭い殺気を感じた。
視線を向けると、一人の男がロングソードを振りかぶっていた。
片刃のロングソードだ。
そりがついており、どことなく太刀を思わせる造型である。
そのロングソードを斜めに振り下ろしてくる。
俺は素早くバックステップをして、ロングソードの凶刃から逃れる。
「いきなり危ないじゃないか」
と俺は距離を取りつつ言った。
その男――――ラッガルは、血に染まった周囲の惨状を見回しながら、告げる。
「よくもやってくれたな? まさか兵士たちを全滅させるとは……手痛く噛みつかれたものだ」
いまいましそうにラッガルが言ってから、俺をにらんでくる。
「貴様……ルーカーか。ひょっとしてロッシュという名前だったりしないか?」
「……そうだ」
と俺は肯定した。
「くくく。そうか! 探す手間が省けたな!」
「俺のことは知っているようだな」
「ああ。なにしろ俺はルーカー集落の監視長だからな。お前が逃亡したことは報告で聞いている。ただ……逃げ出したのは二人のはずだ。ラミアリスという女はどうした?」
「ラミアリスは……死んだ」
と俺は嘘をついた。
実際はラミアリスは、近くの雑木林に潜んでいる。
しかしラミアリスの存在を察知させないため、とっくに死んだことにする。
「ほう?」
「森を捜索しにきた衛兵に殺されたんだ。あの衛兵どもはお前の部下なんじゃないか?」
「そうだな。俺の配下にいる衛兵だろう。くくく……まあ、死んだものはどうしようもない」
笑ってから、ラッガルは告げた。
「お前ひとりでも戻ってきたことを喜ぶとしよう」
「喜ぶだと? 嬉しいのか?」
「ああ嬉しいとも! 消耗品であるルーカーはいくらあっても足りないからな!」
ラッガルはルーカー集落の監視長。
劣悪なルーカー集落を構築した張本人だ。
ルーカーのことなど、同じ人間だと思っていない。
ラッガルは言った。
「だが……なぜ俺を襲いに来たのか。それだけは聞いておきたい」
「さあな」
と俺はとぼけた。
さらに挑発的に告げる。
「知りたければ、俺を叩きのめしてみろ。できないと思うがな」
「……」
ラッガルは目を細める。
「多少はデキるルーカーなのは認めるが……うぬぼれるなよ。貴様ごとき、俺の敵ではないぞ」
さらにラッガルは告げた。
「俺に楯突いたことを、思い知らせてやろう!」
ラッガルが戦意をにじませて、ロングソードを構える。
俺も剣を構えた。
両者、にらみ合う。
一瞬の静寂。
そして。
「ハァアアッ!!」
とラッガルが斬りかかってきた。




